国土交通省直轄ダム
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総貯水容量で日本最大の国土交通省直轄ダム、夕張シューパロダム北海道夕張川

国土交通省直轄ダム(こくどこうつうしょうちょっかつダム)は、日本のダムのうち国土交通省により施工、管理が行われているダムまたはである。主として河川法特定多目的ダム法に基づき、国土交通省の各地方整備局および北海道開発局内閣府沖縄総合事務局(委託管理。後述)が実際の施工・管理業務を担当する。
総論「国土交通省直轄ダム事業年表」も参照

国土交通省が管理や施工を行うダム事業は「河川整備基本計画」または「河川工事実施基本計画」に基づく「河川総合開発事業」として建設される。一部のダムを除き、通常は国土交通大臣によって計画から建設、そして管理まで一元的に行われる特定多目的ダムがほとんどであるが、直轄ダムの中には河川法第17条による「兼用工作物」として管理が複数の利水事業者と行われているダムもある(詳細は「多目的ダム」を参照)。近年では洪水調節のみを目的とした治水ダムも事業計画がなされている。多目的ダムについても、最大の目的は洪水調節、すなわち治水である。

通常一級河川の上流部は都道府県によって委託管理されている(これを指定区間と呼ぶ)。ただし直轄管理されているダムおよびダムに伴って形成された貯水池(人造湖)、さらに上流・下流の一定区間に関しては国土交通大臣による直轄管理がなされる(これを特定水利と呼ぶ)。これは沖縄県の二級河川でも同様に扱われる。

国策として建設されるため水没住民に対する補償対策は特に重視され、1973年昭和48年)の水源地域対策特別措置法の施行に伴い、特に大規模なダム事業に関してはほぼ例外なく法を適用し、水源地域住民への対応を行っている。さらに国土交通省は従来の閉鎖的管理からの転換を図り、直轄ダム・水資源機構管理ダムを地元の観光資源として積極的に一般に開放する方向へ転換を行った。この施策は1994年平成6年)に「地域に開かれたダム」施策として実施され、ダムの周辺整備やPR施設の建設、町興しへの積極的参加や社会科見学の誘致等の基本計画を各ダムごとに提出させた。これにより宮ヶ瀬ダム中津川神奈川県)や御所ダム雫石川岩手県)のように年間100万人を超える観光客が訪問するダムも出てきている。一方で八ッ場ダム吾妻川群馬県)や川辺川ダム川辺川熊本県)のように地元との間に長年の軋轢(あつれき)を抱えたダムもあり、現在計画が進められているダムの大半は事業が長期化している。また第2次橋本内閣以降強まった公共事業見直しの風潮により、計画中であったダムの相当数が事業中止・凍結された。

なお、茨城県東京都山梨県香川県宮崎県には、国土交通省が管理・施工しているダムや堰は現在存在しない[注 1]。また、かつては国土交通省(建設省)が施工したダムの中には各地方自治体に管理を移管したダム、または地方自治体が管理していたダムが国土交通省直轄ダムとなったダムも存在する。2008年(平成20年)5月に福田内閣は都道府県内で完結する一級水系について原則地方自治体へ移管する方針を示したが、今後国土交通省直轄ダムの中にはこうした河川の管理移譲に伴い、都道府県営ダムに管理主体が変更される可能性がある。

2009年(平成21年)10月9日、前原誠司国土交通大臣は、建設中の国土交通省直轄ダム(水資源機構が事業主体となっているダムを含む)56事業のうち、改修事業を除く48事業について「2009年度は(ダム事業を“調査・設計”→“用地買収”→“生活再建工事”→“転流工工事”→“本体工事”という段階に区切った場合における)新たな段階に入らない」ことを表明[1]、ダム建設事業を全面的に見直す立場を示した。今後、事業を継続すべきか否かの妥当性について再検証が行われることとなり、12月に具体的な「凍結」ダム事業が発表された。対象となった直轄ダムはサンル・新桂沢・三笠ぽんべつ・平取・田川・成瀬・鳥海・八ッ場・万座・利賀設楽新丸山足羽川大戸川・横瀬川・山鳥坂ななせ城原川・本明川・立野・七滝・川辺川・奥間の23ダム事業である(導水事業などを除く)。
各論
一覧表解説

各論におけるダム一覧表の見方については、以下の通りである。ダムデータは財団法人日本ダム協会『ダム便覧』を基礎出典とし、適宜追記する。横線は検証可能な出典での数値提示が不能なものである。

所在水系河川ダム型式高さ総貯水容量着工完成分類水特法備考
A県A川A川Aダム重力50.050,00019601970
B県B川B川Bダムロックフィル100.0100,00019902020兼用指定工事中
C県C川C川Cダムアーチ150.0200,0002000未定特定9条等指定事業見直し


所在 - ダムが所在する道府県。複数の所在地にまたがる場合はダム便覧に準じ、ダム左岸の所在地に属する。

水系 - ダムが所在する水系沖縄県を除き通常は一級水系である。

河川 - ダムが所在する河川

型式 - ダムの型式。詳細は各型式の項目を参照。

高さ - ダムの高さ。単位はメートル

総貯水容量 - ダムが貯水できる全ての貯水容量。単位は1,000立方メートル。詳細はダム#諸元を参照

着工 - ダム事業が開始される実施計画調査の着手年。

完成 - ダムが完成し、運用を開始した年。「未定」は完成予定年度が定まっていない場合に記載する。

分類 - 河川関連法規に基づくダムの分類。以下に分ける。

「特定」 - 1957年施行の特定多目的ダム法に基づき国土交通大臣が一貫して施工・管理するダム。詳細は多目的ダム#特定多目的ダムを参照。

「兼用」 - 1964年改定の河川法第17条における特例により、複数の事業者により施工・管理されるダム。詳細は多目的ダム#兼用工作物を参照。

「治水」 - 目的が洪水調節専用の治水ダム。詳細は当該項目を参照。

空欄は特定多目的ダム法施行以前に完成、または同法に拠らない直轄河川総合開発事業に基づき施工されたダム。


水特法 - 1973年施行の水源地域対策特別措置法(水特法)に指定されたダム。「9条等指定」は水没物件が多大で、通常より補償を厚くしたダム。詳細は当該項目を参照。

備考 - 特記することを記す。

「工事中」 - 工事中・ダム再開発事業中のダム。薄緑色欄で示す。

「事業見直し」 - 国土交通省によるダム事業再検証の対象となっているダム。桃色欄で示す。

「ダム湖百選」 - 財団法人ダム水源地環境整備センターが2005年に選定したダム湖百選人造湖が選定されたダム。詳細は当該項目を参照。

北海道開発局開発局管理ダムでは最も堤高が高い定山渓ダム小樽内川北海道では初の直轄ダムとなった桂沢ダム(幾春別川)。新桂沢ダム完成に伴い非現存。

北海道開発局管内では直轄ダムが運用中21基、施工中1基、再生・再開発事業中3基の計25ダムを管理・施工している。北海道開発局は国土交通省の地方支分部局として国土交通省の発足時に統合されたが、農林水産省の地方農政局機能も担当している[2]


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