国内総生産
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「GDP」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「GDP (曖昧さ回避)」をご覧ください。
国別GDP(2016年)[1] 上段がMERベース、下段がPPPベース。単位は10億ドル。名目ベースでは先進国の値が高く、PPPベースではインドや中華人民共和国などの新興国やアフリカなどの発展途上国の値が高く表示されやすいことが読み取れる。

国内総生産(こくないそうせいさん、:Gross Domestic Product、略称:GDP、:Bruttoinlandsprodukt、略称:BIP)は、一定期間内に国内で産み出された物やサービスの付加価値の合計のこと[2][3]である。その国内領土に居住する経済主体を基準にした数値で「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、生み出された付加価値の総額」をいう[4]

以前は、景気を測る指標として国民総生産 (こくみんそうせいさん、:Gross National Product、略称:GNP)が用いられていたが、1993SNAの導入に伴い、“Gross National Income (GNI、国民総所得)”が新たに導入され、GNPの概念はなくなり、現在はGDPが重視されている[2]

なお、GDPは “国内”のため、日本企業が海外で生産した付加価値は含まないのに対して、GNPは“国民”のため、国内に限らず、海外での所得も含んでいる[2]

また、世界の総生産の合計は、世界総生産 (:Gross World Product、略称:GWP)と呼ぶ[5]
概要フローとストックダイアグラム

国内総生産は「ストック」に対する「フロー」を表す指標であり[注釈 1]経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の一指標で、GDPの伸び率が実質経済成長率に値する。経済学用語のフロー、ストックはフローとストックを参照

原則として国内総生産には市場で取引された財やサービスの生産のみが計上される。市場で取引されない活動は、GDPには含まれない[6]。このため、家事労働やボランティア活動などは国内総生産には計上されない。この点は、国民総生産でも同じである。こうした取り扱いの例外として、持ち家の家賃など帰属計算が行われるものがある。国民経済計算の帰属家賃の説明を参照

また、今期新たに生産されたのでない財(例:古美術品)の取引、最終財の原材料となる中間財の取引は算入されない。地下経済なども計上されないことが一般的であったが、2014年以降、EU圏内では麻薬取引や売春サービスも計上し始めている[7]。オーストラリアに本部を置き、米国、メキシコ、オランダ、ベルギーなどに支部を持つ経済平和研究所によると、GDPは「幸福度と国富の関連性」を誤って表現する問題指標であり、より良い測定方法が必要であるとしている。具体的な問題点としては、GDPには犯罪経済などが含まれていることが挙げられる[8]

国連統計委員会が勧告を出し、統計設計、財の概念の設定などは勧告に沿って行われる。直近の勧告としては、68SNA93SNA2008SNAがある。

日本の国内総生産は、内閣府(2001年の中央省庁再編以前は経済企画庁)が推計し、速報値や改定値として発表しているが、その詳細な計算方法については他国同様、公開されていない。
経済モデル
国内総生産の定義

国内総生産を定義するために、実際の経済を単純化したモデルを与える[9] 。なお、ここで説明するGDPは名目GDPと呼ばれるもので、実質GDPとは異なる。
支出面

国内には家計、企業、政府の三種類の経済部門があり、それとは別に外国という経済部門がある。

また生産物市場、生産要素市場、金融市場の三種類の市場がある。

企業が財・サービスを生産するために別の企業から購入する財・サービスを中間財・サービスといい、それ以外の財・サービスを最終財・サービスという。

生産物市場は企業および外国が自身の最終財・サービスを売るための市場で、各経済部門はこの市場から財・サービスを買い取る。

中間生産物は、別の(中間ないし最終)財・サービスを作るための要素として使われるので、「二重カウント」を避けるため、国内総生産には企業が中間生産物を売ることで得た金は含まれない。

企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来、販売する為の商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。企業による支出は投資支出と呼ばれ、Iで表される。家計による支出は消費支出と呼ばれ、Cで表される。また政府による支出はGで表される。

輸出入がない場合、GDPを国内で一定期間の間に最終財・サービスに対して行われた支出の総額ともみなせ、次が成立する事がわかる: GDP = C + I + G

輸出入がある場合、国内総生産額であるGDPのうち、輸出額X分だけ海外へと漏れ出る。 また国内の総支出C+I+Gの一部は輸入に使われたものである。 従って輸入額をIMとすると、以上の議論より、次が成立する事がわかる: GDP = C + I + G + X - IM

要素市場および金融市場は国内総生産(GDP)を定義する際、直接的には使用しないが、モデルの全体像を捉えやすくするため、説明する。生産要素市場は企業が労働、資本といった生産要素を家計から購入するための市場で、生産要素に対する対価として賃金、利潤、利子、賃料などの形で企業から家計に金が流れ込む。

金融市場は、銀行間取引市場証券市場および外国為替市場などの総称で、金融市場には家計から民間貯蓄が流れ込み、外国からは外国貸付や株式購入により金が流れ込む。

企業は銀行借入や株式発行により、金融市場から資金を調達し、政府は政府借入により金融市場から資金を調達する。そして外国は外国借入や株式売却により金融市場から資金を調達する。
三面等価の原理詳細は「三面等価の原則」を参照

上では、企業が財・サービスの市場で自身の最終財・サービスを売り、その対価として得た金額として国内総生産を定義した。これを支出による定義と呼ぶ。

GDPにはこの他に生産による定義、分配による定義があり、これら3つの定義は全て同値となる(三面等価の原理)。
生産による定義

国内で一定期間(たとえば一年間)に生産された全ての最終財・サービスの総額として国内総生産を定義する。

企業によって生産された最終財・サービスは、誰かが自身のお金を支出して買い取るか、あるいは生産した企業が在庫として抱え込む。在庫は「将来売るための商品」であるから、企業の将来への投資支出の一種とみなせる。従って生産された最終財・サービスは最終的に誰かの支出となる。よって生産額による定義は支出による定義と一致する。

財・サービスXに対し、Xの売上額からXを作るのに使った中間財・サービスの値段を引いたものをXの付加価値という。国内総生産の定義より明らかに、国内総生産は(中間または最終)財・サービスの付加価値の合計に等しい。
分配による定義

企業は財・サービスを売ることで、その付加価値分だけの儲けを得る。企業の得た儲けの一部は、賃金、利子、賃料、および租税として家計や政府の利潤となり、残りは企業の利潤となる(そして利潤の一部は株主への配当や内部留保となる)。従って国内総生産は家計、政府、および企業へと分配された利潤の総和としても定義出来る。

先進諸国の傾向としては、国内総生産の3分の2が労働者の取り分となり、3分の1が地主・株主などの資本家の取り分となる[10]経済学者飯田泰之は「付加価値に占める賃金の割合は、3分の2くらいが妥当である」と指摘している[11]
分配面から見た国内総生産


国内総生産=雇用者報酬+(営業余剰+混合所得)+固定資本減耗+(生産・輸入品に課される税ー補助金)

計数の特徴
国民総生産と国内総生産の違い

国内総生産(GDP)にしても国民総生産(GNP)にしても、「国籍」は関係がない。[4]。「国民総生産」でいう「国民」とは当該国の居住者主体を対象とする経済的な概念であり国籍とは関係がない[4]。個人の場合、主として当該領土内に6か月以上の期間居住しているすべての人を含む一方、一般に国外に2年以上居住する人は非居住者として扱われる[4]

GDPとGNPの違いは端的に次の式であらわされる。GNP=GDP+第一次所得収支すなわちGDPに、海外から得た利子配当の類を加えたものである。例示すれば、トヨタが海外で付加価値を計上したとして、海外の雇用者に支払われた給与は日本のGDPにもGNPにも加算されることはないが、付加価値の内日本に利子配当などの形で日本に送金されたものは、日本のGDPには加算されないが、GNPには加算される。むろん逆のケースでは日本のGDPから差し引かれる場合もある。

「国の実体経済」を表す指標としては、国民総生産(GNP)よりも国内総生産(GDP)が重視されるようになった[12][13]。1980年代頃までは国の経済の規模・成長を測るものさしとして国民総生産(GNP)がよく用いられたが、時代が下るにつれて進展していった経済のグローバル化に伴い、国家を単位とする経済指標としては実態に即さなくなったと考えられるためである。

国連の1993SNA等ではGNPの概念そのものがなくなっており、それに代わる概念として国民総所得(Gross National Income = GNI)が導入されている[12]


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