国事行為
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国事行為(こくじこうい)とは、日本国憲法上、天皇又は摂政が行うものとして規定されている行為である。いずれも「内閣助言と承認」が必要で内閣がその責任を負うと規定されている(日本国憲法第3条)(日本国憲法第4条
概説

国事行為は日本国憲法第6条及び第7条に列挙されている行為をいう[1]

いずれも内閣の助言と承認を要する(日本国憲法第6条には明記がないものの日本国憲法第3条の適用を受けるため内閣の助言と承認を要する[2])。帝国憲法での輔弼が「国務各大臣」と各大臣個別の行為とされていたのに対し、日本国憲法での助言と承認は合議体である内閣が担う[3]。なお、国事行為の委任行為(日本国憲法第4条第2項)そのものについては国事行為に含むとする説と含まないとする説がある。

天皇には国事行為のほか生活上における純然たる私的な行為(私的行為)も当然に認められる[4][5]。これら私的行為については公金である宮廷費ではなく内廷費(御手元金)があてられる[4]。なお、国事行為として憲法に明記されたものではなく純然たる私的行為とも言えない国会開会式への出席などについては公的行為として憲法上の位置づけに議論がある[6]

閣議決定の書類は毎回、閣議の後に天皇に届けられ、全てに目を通し署名押印を行う。その数は年間で約1,000件になる[7](これは1回の執務で処理される数百人分の功績調書を含んだ叙勲関係の書類を1件と数えている[8])。決裁は翌日以降に遅らせると「政治への介入」(例えば「法律の公布」を一日遅らせると、法律の発効に関する手続きを天皇の都合で一日ずらしたことになり、立法権への介入=憲法41条国会単独立法の原則などに抵触)となるので、体調が悪くても執務を簡単に休むわけにはいかない。御用邸で静養中や地方訪問中であっても、閣議が行われる火・金曜に当たると、内閣官房の職員が午後、新幹線や飛行機で書類を東京から持参し、御用邸やホテルの部屋で決裁する[9]
内容内閣総理大臣を任命する第125代天皇明仁(左)(2012年12月皇居にて)法律等の公布を行う明仁(2003年2月、皇居にて)
法律等の公布は、内閣より上程された原本に御名御璽を加え、官報に載せることによってなされる。栄典を授与する明仁(左)(2000年11月3日、皇居にて)即位の礼を行う徳仁2019年10月22日、皇居にて)

国事行為は具体的には以下の行為を指す。


内閣総理大臣任命すること(日本国憲法第6条第1項)

内閣総理大臣の任命は国会の指名に基づいて行われる(日本国憲法第6条第1項、日本国憲法第67条)。内閣総理大臣の任命について定める日本国憲法第6条には内閣の助言と承認についての記述はないが、内閣総理大臣の任命は日本国憲法第3条の「国事に関するすべての行為」に含まれるため内閣の助言と承認を要する[2]。内閣総理大臣の任命については日本国憲法第71条により従前の内閣が助言と承認を行うことになる(通説・実務)[3][10]


最高裁判所長官を任命すること(第6条第2項)

最高裁判所長官の任命は内閣の指名に基づいて行われる。日本国憲法第6条には内閣の助言と承認についての記述はないが、最高裁判所長官の任命についても日本国憲法第3条の「国事に関するすべての行為」に含まれるため内閣の助言と承認を要する。最高裁判所長官の任命については、内閣は指名とともに助言・承認も行うことになる。


憲法改正法律政令及び条約公布すること(日本国憲法第7条第1号)

公布の時期については、憲法改正については直ちに(日本国憲法96条)、法律については議決の奏上の日から30日以内に公布される(国会法第66条。ただし、日本国憲法第95条に定める特別法については地方自治法第26条による)。帝国憲法下では法令等の公布の方法について公式令(明治40年勅令第6号)が「官報ヲ以テ布告シ」と定めていたが、日本国憲法施行に伴い公式令が廃止されて以来、公布の方法については法定されていない[11]。最高裁判例は「公式令廃止後の実際の取扱としては、法令の公布は従前通り官報によってなされて来ていることは上述したとおりであり、特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもって法令の公布を行うものであることが明らかでない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもってせられるものと解するのが相当」(最高裁昭和32年12月28日大法廷判決)と判断しており官報によることが先例となっている[11]


国会を召集すること(第7条第2号)

国会召集の国事行為(国会開会式への臨席)は国会の会期を開始させるものであるから、そもそも国会の会期に含まれない参議院の緊急集会はこれから除外される(参議院の緊急集会は国会法の規定に基づき参議院議長が招集する)。憲法上、国会の召集について実質的決定権の所在を直接定めた明文規定は存在しないが、日本国憲法第7条や議院内閣制の建前から内閣に属するとされる(通説・実務)[12]


衆議院を解散すること(第7条第3号)

天皇の国事行為には衆議院の解散が明記されている。憲法上、衆議院解散の実質的決定権の所在を直接定めた明文規定は存在しないが、日本国憲法第7条や議院内閣制などを根拠として内閣に属するとされる(通説・実務)。衆議院解散は憲法第69条によって、内閣不信任決議の可決、または内閣信任決議の否決によってのみ可能とする見解が存在する。1948年12月23日の最初の解散では第7条と第69条に基づいて行われた(いわゆる馴れ合い解散)が、2回目以降は内閣不信任決議可決の有無に関わらず、第7条に基づいて解散をしている。


国会議員の総選挙の施行を公示すること(第7条第4号)

「総選挙」とは、公職選挙法では衆議院議員総選挙を指し、参議院議員通常選挙のことは指さない。しかし、本条では「国会議員の総選挙」として参議院議員通常選挙の公示も含まれており、憲法7条においては「総選挙」は衆議院議員総選挙のほか参議院議員通常選挙を含んでいる[13]。なお、国政選挙における補欠選挙では公示ではなく、告示が行われ、告示は各々都道府県選挙管理委員会が行う。


国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使信任状を認証すること(第7条第5号)

認証官の任免及び全権委任状及び大使及び公使の信任状について認証する。認証官のうち国務大臣の任命については憲法上に規定があり(日本国憲法第68条)、内閣総理大臣が任命した後に天皇がこれを認証する。全権委任状及び大使及び公使の信任状の発給権限は内閣に属する(日本国憲法第73条第2号)。


大赦特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権(恩赦)を認証すること(第7条第6号)

恩赦の決定権は内閣に属する(日本国憲法第73条第7号)。


栄典を授与すること(第7条第7号)

栄典の授与を行う。天皇によって授与される栄典には叙勲文化勲章などがある。憲法上、栄典の授与の実質的決定権の所在を直接定めた明文規定はないが、日本国憲法第7条や行政権の主体であることなどを根拠として内閣に属するものとされる(通説・実務)[14]


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