四酸化三鉄
IUPAC名
酸化鉄(III)鉄(II)
四酸化三鉄
別称磁鉄鉱
マグネタイト
黒錆
黒色酸化鉄
識別情報
CAS登録番号1317-61-9
1,597 °C (1,594 °Cに達すると分解される。)
沸点
2,623 °C
水への溶解度不明
屈折率 (nD)2.42[1]
危険性
NFPA 704001OX
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
四酸化三鉄(しさんかさんてつ、英: triiron tetraoxide)は組成式 Fe3O4 をもつ酸化鉄である。
四三酸化鉄(しさんさんかてつ)、酸化鉄(III)鉄(II)(さんかてつさんてつに、英: iron(II) iron(III) oxide)とも呼ばれる。Fe2+ イオンと Fe3+ イオンを含む為、時として FeO.Fe2O3 と表される。錯体や混合物ではなく、一定の結晶構造を持つ純物質(混合原子価化合物)である。
自然界では鉱物の磁鉄鉱(マグネタイト)として見出される。鉄材の酸化で表面に形成された四酸化三鉄は黒錆と呼ばれ、この層・被膜は黒皮とも呼ばれる。実験室では黒色粉末の形状で提供されている。
四酸化三鉄は常磁性やフェリ磁性を示す[2]。時として誤ってフェロ磁性と表される場合がある。また、製法により粒子のサイズや形状が異なるため、鉱石由来より合成によって製造された黒色顔料が非常に広く利用される[3]。 良質の Fe3O4 色素は、産業廃棄物やスクラップ鉄あるいは鉄塩を含む溶液(例えば、鋼鉄を酸洗い Pickling
製法
Laux法による金属鉄の酸化では、FeCl2を触媒としてニトロベンゼンを金属鉄と反応させてアニリンとする際に生成する[3]。
C 6 H 5 NO 2 + 9 Fe + 2 H 2 O ⟶ C 6 H 5 NH 2 + Fe 3 O 4 {\displaystyle {\ce {C6H5NO2\ + 9 Fe\ + 2 H2O -> C6H5NH2\ + Fe3O4}}}
Fe2+化合物の酸化では、水酸化鉄(II)のような鉄(II)塩は注意深く pH を制御しながら曝気処理をすることで目的の酸化物を得られる[3]。
Fe2O3 の水素による還元[4][5]
3 Fe 2 O 3 + H 2 ⟶ 2 Fe 3 O 4 + H 2 O {\displaystyle {\ce {3 Fe2O3\ + H2 -> 2 Fe3O4\ + H2O}}}
Fe2O3 の CO による還元[6]
3 Fe 2 O 3 + CO ⟶ 2 Fe 3 O 4 + CO 2 {\displaystyle {\ce {3 Fe2O3\ + CO -> 2 Fe3O4\ + CO2}}}
四酸化三鉄のナノ粒子は化学的に生成される。例えば鉄(II)塩と鉄(III)塩との混合物を塩基性にするとコロイド状 Fe3O4 が沈殿する。実験条件は微妙であり、条件の差異で粒子サイズが決定づけられる[7]。 酸素存在下で鉄を熱すること(高温乾食)により、鉄表面に四酸化三鉄の被膜が得られる[8]。温度および過程によって酸化鉄(II)や酸化鉄(III)と共存する場合もある[9]。 磁鉄鉱は溶鉱炉内で一酸化炭素により還元され、鉄となり鋼の生産の一部に利用される[2]。 Fe 3 O 4 + 4 CO ⟶ 3 Fe + 4 CO 2 {\displaystyle {\ce {Fe3O4\ + 4CO -> 3Fe\ + 4CO2}}} Fe3O4 の酸化を調節することで、褐色顔料の γ-Fe2O3(磁赤鉄鉱 他の焼成法(空気中での加熱)では、良質の赤色顔料であるα-Fe2O3(赤鉄鉱)を与える[10]。 2 Fe 3 O 4 + 1 2 O 2 ⟶ 3 α − Fe 2 O 3 {\displaystyle {\ce {2Fe3O4\ + 1/2 O2 -> 3 \alpha-Fe2O3}}} Fe3O4 は逆スピネル型構造 FeO も γ-Fe2O3 も酸素の配置は同じく立方格子をとる。酸化反応あるいは還元反応により容易にこれらの3種の化合物は相互に変化するが、その際の最終的な構造の違いは小さい[2]。
高温乾食
反応
構造