この項目では、生理現象および症候について説明しています。平野啓一郎の小説『くしゃみ』については「滴り落ちる時計たちの波紋」を、ともさかりえの楽曲については「くしゃみ (曲)」をご覧ください。
くしゃみシャドーグラフ(英語版
くしゃみ(嚔、英: sneeze)とは、一回ないし数回痙攣状の吸気を行った後に強い呼気をされること[1]。くしゃみ反応は不随意運動であり「自力で抑制」することはできない。 くしゃみの基本的な機能は二つある。一つは、体温を上げるための生理現象である。人は、吸気があっても、吐気で鼻腔(鼻の穴)内の体温を保とうとするが、鼻腔内の体温が著しく下がったとき、鼻腔内の知覚神経は脳に体を振動させて体温を上げる命令を出す。これがくしゃみである。二つめは、鼻腔内の埃、異物を体外に排出するための噴出機能である。 鼻腔内には、埃などを知覚しヒスタミンを出して脳が排出するよう判断する機能はあるが、ウイルスに対する知覚機能ではないため、鼻腔など上気道に付着したウイルスなどの異物を激しい呼気とともに体外に排出しようとして起こる呼吸器における反射的な反応ではない。くしゃみが続く現象は、鼻腔に接続する血管や、毛細血管の狭窄やつまりによって、鼻腔内の体温の継続的な格差が生じるためである。くしゃみをする原因としては物理的な刺激(鼻粘膜を毛髪などで刺激する、冷気を吸うなど)や刺激物質の吸引、アレルギー反応などがある。風邪や花粉症などのアレルギー性鼻炎の人でも一般的な症状である。また激しい光刺激(突然の強い太陽光 等々)でも発生することがある(光くしゃみ反射)。 アレルギーによらずに埃や冷気を急に吸い込むなどした物理的な刺激によるものも、ほぼ同様にして反射が起こる。通常は連続することは少ないが、自律神経の異常や精神的ストレスなどが原因で、アレルギーではないにもかかわらず過剰に反応することがある(血管運動性鼻炎)。風邪の場合は、炎症により鼻の粘膜が過敏になっているために発生する。 化学的刺激でも起きる場合がある[注釈 1]。 胡椒の粉末を吸い込んだ場合などは、異物が付着したという物理的刺激のほか、胡椒自体の刺激性物質による化学的刺激もあるためくしゃみが発生しやすい。 人為的には、花粉症などアレルギー性鼻炎の患者の鼻腔内にヒスタミンを噴霧することにより、ほぼ30秒以内にくしゃみを発生させることができる。また、こよりなどで鼻腔を刺激することでもくしゃみを発生させることができる(出かかったくしゃみが途中で止まってしまいすっきりさせたい場合にわざと行われることがある)。 くしゃみ反射の詳細なメカニズムは完全には明らかになっていないが、例えばアレルギー性鼻炎の場合は、アレルゲンの吸入により肥満細胞からヒスタミンなどが分泌され、それが鼻粘膜における知覚神経である三叉神経終末にあるヒスタミン受容体(H1受容体)と結合する。そこから求心性インパルス
原因
メカニズム
なお、くしゃみは不随意運動ではあるが、演技でくしゃみ反応と同様の動作を意図的に行うことは可能であり、コントやコメディ(喜劇)などでも使われる。例えば日本では加藤茶の持ちネタの一つである。 くしゃみはほぼ上半身全体の筋肉を激しく運動させるほか、息が乱れ呼吸が阻害されるため、くしゃみは連続して発生すると、体力を著しく消耗する。口腔内の唾液を吸い込んでしまい、続けて咳をする事もある。肋骨を損傷するおそれもあるため、多発する場合は抗ヒスタミン薬等が使用される。 通年性アレルギー性鼻炎における調査では、1回のくしゃみ発作回数が多いほど、1日の発作回数が多いという相関がみられている[要出典]。 アレルギー性鼻炎や風邪などの際には、抗ヒスタミン剤を服用または点鼻することにより抑える事ができる。ただしこれはくしゃみの発生原因の除去ではなく対症療法である。 くしゃみはごく一般的な症状のため、単体では疾病の種類が特定しづらい。 くしゃみにより排出される呼気の風速は時速約320kmである[4]。また、呼気に含まれる唾液の飛沫は、時速約36km、秒速約10mの速度で[5]約4m先まで飛ぶ[4]。埃によるものなど一般的で単発のくしゃみであれば、飛沫が近くの物品や人にかからないように横や下を向いたり手などで口を覆えばよいが、風邪など病気の場合にはこの呼気と共にウイルスが飛散し(飛散量は約100万個[4])、飛沫感染のもととなる。
医療・医学
クシャミによって起こる弊害
一般にくしゃみ発作の際には目をつぶる。また、体の他の部位のコントロールがきかないだけでなく、腕などの筋肉の収縮あるいは硬直を伴うため、自動車の運転や機械操作の際には危険な状態となる。熱い飲み物が入ったコップを持っている時なども同様に火傷の可能性があるので危険である。瞬間的かつ急激におこる激しい運動であるため、肋骨の損傷・骨折や、いわゆるぎっくり腰の原因ともなる。とくに腰に心配があることがあらかじめわかっている人は、くしゃみの前兆を感じたら座り込んでしまうか、近くにある壁などに手をついて体を固定するように心がけるとよい。
我慢した場合の弊害
瞬間的に大きな圧力を発生させる現象なので、無理に我慢すると弊害が起きる。喉や鼻腔・中耳・内耳の損傷、耳の感染症、鼓膜の破裂、脳脊髄圧や血圧が上がり脳の血管にも作用するなどが起きる[2][3]。
エチケットくしゃみによる唾液の飛散