和英語林集成
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『和英語林集成』(わえいごりんしゅうせい)は、ジェームス・カーティス・ヘボンによって編纂された、日本最初の英語で書かれた日本語辞典(和英辞典)である。岸田吟香が助手として参加している[1]

1867年慶応3年)発行の初版は幕末期の和語の多い日本語を中心に英和の部を加えた辞典であったが、再版は1872年(明治5年)の新政府成立に伴う語彙を加えて和英・英和辞典とし、1886年(明治19年)の第三版は漢語が著しく増加した近代国家成立時期の日本語を西洋言語学の成果により写し取っている。このため現代の国語辞典では、小学館日本国語大辞典』、新潮社『新潮現代国語辞典』がその見出し語と語彙を参照し表示している。
特徴

『和英語林集成』は、西洋語による近代日本語の最初の辞典である。これ以前の辞書は1603年イエズス会が編纂した『日葡辞書』しかなく、日本語を必要とした欧米各国にとっては貴重な辞書であった。そのため初版は横浜とロンドンで同年に発売された。

英和辞典は英蘭辞書から翻訳して編纂され、以後ウェブスター辞典オックスフォード英語辞典の強い影響下に編纂されていくが、日本語辞典は語彙の選定や用例ともオリジナルな編纂が必要とされる。その意味で、『和英語林集成』は、日本語に西洋言語学の光をあてた成果である。

近代国語辞典の始まりは1889年(明治22年)から1891年(明治24年)にかけて発行された大槻文彦の『言海』であるが、『和英語林集成』は、それに先行する近代日本語辞書であった。金田一春彦は「『和英語林集成』はローマ字の見出しに片仮名表記と漢字表記を添え、品詞を明示し、英語による語釈を加えた上で、用例と同義語を記している。見出し語は二万あまり、当時の日本語を的確に語義記述している点で、国語辞典としても高く評価されている。これは広く受入れられて九版まで版を重ね、和独辞典や和仏辞典だけでなく、近代的国語辞典にも大きな影響を与えた」[2]としている

『和英語林集成』は明治のベストセラー辞書であった。和英辞典として英語学習にも利用され、第三版の予約部数は18,000部であり、ポケット版も発行されて明治末まで使われた。なお、英語学習者用和英辞典の登場は1909年(明治42年)井上十吉『新訳和英辞典』(三省堂)である。

著名な「ヘボン式ローマ字」はこの辞書から生まれ、第3版で確定した。チをchi、ツをtsuと表記し、b・m・pの前の「ん」音は m と表記している。

序説にいろは五十音図を載せているが、第3版では「イ・ヰ」はともに i、「オ・ヲ」はともに o であるが、「エ」がア行・ワ行に置かれて e とするのに対し、「ヱ」はヤ行に置かれて ye になっている。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}これは現在のわれわれの常識とは異なる[誰?]。もっともその前に置かれた仮名の字形表では逆に「エ」を ye、「ヱ」を e としており、整合性を欠く。
各版について
初版(1867年)
邦題「和英語林集成」、英語の題は「Japanese-English Dictionary; with an English and Japanese Index」。横浜で発行されたものは
上海美華書館で印刷された。見出し語数20,772語[3]
二版(1872年)
邦題「和英語林集成」、英語の題は「Japanese-English and English-Japanese Dictionary」。初版と同様上海美華書館で印刷された。初版以降増えた日本語の新語を追加。見出し語数22,949語。
三版(1886年)
邦題「改訂増補 和英・英和語林集成」、英語の題は「Japanese-English and English-Japanese Dictionary」。この版で羅馬字会方式のつづり方(いわゆるヘボン式ローマ字)を採用した。再び増えた日本語の新語を大量に追加。見出し語数35,618語。

第四版以降は三版目からの細かい改良版で『和英語林集成』の原稿と各9種類の版に収録された語は、「『和英語林集成』デジタルアーカイブス」[4]で比較検索できる。

2016年11月に第五版(1894年、国立国会図書館所蔵版)が、Kindle版(君見ずや出版)で電子書籍化された。

関連文献

復刻版『和英語林集成 第三版』
[5] 松村明解説、講談社、1974年、新版1984年

『和英語林集成』、縮小複製版、講談社学術文庫、1980年、新版1989年


『美國平文先生編譯 和英語林集成』[6]丸善雄松堂、2013年。第一版の復刻版

木村一・鈴木進編 『J.C.ヘボン和英語林集成手稿 翻字・索引・解題』 三省堂、2013年5月

木村一 『和英語林集成の研究』 明治書院、2015年2月

岩堀行宏『英和・和英辞典の誕生 日欧言語文化交流史』「第7章 ドクトル・ヘボンの和英大辞典」図書出版社、1995年4月。ISBN 9784-809905179

参考文献

沖森卓也『図説 日本の辞書』
おうふう、2008年

明治学院大学図書館「『和英語林集成』デジタルアーカイブス」

脚注[脚注の使い方]^ 『仁丹は、ナゼ苦い?』ボランティア情報ネットワーク、1997年、6頁。 
^ 金田一春彦「国語辞典の歩み」『日本の辞書の歩み』辞典協会1996 P19?P21
^ 各版の語数は、復刻版『和英語林集成 第三版』(講談社、のち講談社学術文庫)、松村明解説に基づく
^明治学院大学図書館デジタルアーカイブス
^ 『和英語林集成 第三版 訳語総索引』(山口豊編、武蔵野書院、1997年)がある。
^ 『和英語林集成 初版 訳語総索引』(飛田良文・菊地悟編、笠間書院「笠間索引叢刊」、1996年)がある。

外部リンク

和英語林集成デジタルアーカイブス明治学院大学図書館)

『和英語林集成』 - コトバンク


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