味いちもんめ
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『味いちもんめ』(あじいちもんめ)は、原作:あべ善太、作画:倉田よしみによる日本漫画作品。板前料亭を題材にした料理・グルメ漫画1995年にはテレビ朝日系でテレビドラマ化もされた。
概要

初期は『ビッグコミックオリジナル増刊号』(小学館)にて連載していたが、1987年ビッグコミックスペリオール』(同)の創刊と共に移籍した。1999年には第44回小学館漫画賞青年一般向け部門を受賞している。なお、初回の掲載題名は『アヒル物語』となっており、第2回から『味いちもんめ』に改題されている。

1999年3月14日に原作者のあべ善太が急逝したため、『味いちもんめ』は単行本33巻途中にて終了した。

その後、シナリオ協力として福田幸江が参加して連載が再開され、『新 味いちもんめ』として2008年4号まで連載、同年6号から2013年5号までは『味いちもんめ 独立編』として連載された(タイトルは『独立編』でも実際は雇われ店長である)。2013年8号から2016年8号までは『味いちもんめ にっぽん食紀行』が連載された。

2016年9号から2016年11号まで『味いちもんめ番外編 伊橋とボンさんの食漫画紀行』が集中連載され、ビッグ錠うえやまとち谷口ジローがゲストに登場している。

2016年12号から2017年10号まで『味いちもんめ 世界の中の和食編』の連載が開始され、福田幸江に代わり、花形怜がシナリオを担当している。

2017年11号から2018年17号まで『味いちもんめ 食べて・描く! 漫画家食紀行』が連載される。伊橋の物語は一旦休止という形を取り、毎回伊橋とボンさんの2人で数々の漫画家宅や地元を取材訪問していくという、以前短期連載していた番外編と同じ構成を取った。毎回ゲストの漫画家へインタビュー形式で食に関するエピソードも交えて思い出話を聞くという展開となっている。

2018年18号から2019年1号まで『味いちもんめ 藤村便り』が集中連載。

2019年2号から、舞台を「料亭 藤村」に戻して、倉田よしみがストーリーも含めて担当した『味いちもんめ -継ぎ味-』が連載開始された[※ 1]

なお、原作のあべ善太の本業は、高校の国語の教師であり、教育や学校にまつわるストーリーも多いのが特徴である。
登場人物
藤村の板前「藤村」は東京新宿に店を構える料亭。京都「吉川」で修行した熊野信吉が花板として腕を振るい、主人公・伊橋悟が働く店で、本作の主な舞台となる。世間的にも名の通った一流料亭で、模倣店も出る程の格を持つが、超一流の料亭の板前には見下す者もいる。第1話では横川が立板を務め、栗原、川島、そして肩書きは不明だが「増田」という板前と、老人(熊野曰く「じっつぁん」)が一人、追い回し三年目の谷沢、そして入ったばかりの伊橋というメンバー構成だったが、「増田」は2話冒頭で伊橋達に別れを告げて「藤村」を去り、入れ替わりでボンさんが入る。「じっつぁん」は直後のコマを最後に姿を消し、さらに第3話で横川が「藤村」を去り、第4話で坂巻が立板として加入。ここでようやく、栗原が抜けて長友が加入するまでの期間はメンバーが固定される事になった。
伊橋 悟(いはし さとる)
最初は連載当時の藤井フミヤばりに前髪を垂らし、料理学校首席卒業の自分に「何もさせてもらえない」と不満ばかり口にし、仕事を真面目にやらない男だったが、同い年で追い回し3年目の谷沢と得意の剥き物で勝負して完敗するなどして気持ちを入れ替えたことで、自分が『アヒル(追い回し)』である事を自認して修行に励む事になる。性格はお調子者。花板(本作での呼称は基本的に「親父さん」)の熊野をはじめ、横川、坂巻といった立板、その他先輩に時には殴られ、叱咤され時には誉められ、更には鬼怒川、京都等の遠方へ「助」に行かされたりしながら追い回しからどんどん成長していく。熊野の薦めで(というより全く聞かされないまま)京都の料亭『登美幸』で一年間修行したことがあり、この経験により自分の目指す味は京料理が基本だと気づく。連載が進むにつれ板前としての技量は確実に身についているが、料理学校の同期や藤村で板前修業を始めてから知り合った同世代と比較すると昇進するのが遅く、あろうことか焼方に一度は昇進しながら、後輩の長友が辞めたために一時的とはいえ追い回し[※ 2] に逆戻り、登美幸で修行する事になった際に追い回しから1年以上やり直す羽目にもなっている。これは伊橋自身も気にして落ち込んだ事があるが、熊野の、彼を(料理に例えれば煮浸しのように)じっくり育てたいという意向からではないかと『花家』の煮方、清が推測している。料理に対する情熱は本物であり、自分の部屋には数々の郷土料理の資料、数々の料理のVTRがある。前述のように「藤村」の熊野や兄弟子、「助」や修行に行った先での板前からも多くの事を学んでいるが、現役の板前のみならず、余命幾ばくもない老人ホームの老婆(雷干し)、焼き鳥屋台の店主(火の扱いやタレの重要性)、既に亡くなった名人板前の亡霊(焼き魚といくつかの料理)等からも大事な事を教わっている。連載初期はひったくりを捕まえた縁で香里という女子大生と付き合っていたが、香里がパリへ留学することになったことで半ば別れたようになってしまった。しかし伊橋が煮方になる頃には三遊亭円鶴の弟子である三遊亭小つるとも付き合いがあった(恋愛関係ではなく、あくまで友人として。伊橋の方はそれなりに想いを寄せているが、小つるの方は「まんざらでもない」という程度)。『新・味いちもんめ』からは、熊野が昔世話になった西新橋の老舗料亭「桜花楼」より、腕の良い板前を貸してほしいと頼まれ、藤村を出て桜花楼へ出向する。藤村では煮方だった伊橋もここでは1番下っ端の追い回しから再スタートとなり(これは熊野の意向によるもの)、会社組織のようなシステム化された板場や、社長を始め変わったキャラクターが多い中で、藤村とのあまりの違いに最初は戸惑い上の者との衝突を繰り返す。だが、持ち前のガッツと人柄で徐々に回りを変えて行き、伊橋を慕う者も徐々に増え1年ほど経ったところで煮方に戻った。その後新設された「SAKURA」(桜花楼1階フロアで営業)という店舗に回される。その後「SAKURA」の支店を出す話では伊橋の店長への抜擢が内定するも、紆余曲折を経て自分の顔つきをした料理を出したいと決意し、以前修行した店や知人を頼らないことを条件に、研修の名目で単身京都出向くことになる。京都では新たに出会った「湯葉辰」や、割烹「さんたか」で新たな修行を始める。『?独立編』では、雇われではあるが、料亭「楽庵」の店長・花板となった。『?にっぽん食紀行』では、「楽庵」の店長である事は変わりないが、オーナーの拝島の指示で前半は北陸を回ってその土地の料亭を体験取材していたが、後半に入ると「楽庵」に戻った。『?世界の中の和食』では冒頭で拝島に「楽庵」の閉店を告げられ、また一板前に戻り、銀座の一流料亭に入るが、さすがに今度は初めから煮方としての入店であり、新たに花板となった板前には「自分の方が経験不足なのに申し訳ない」と初対面の際に謝罪を受けるなど、一目置かれ、かつ頼りにされている。若手の頃はお調子者の一方で頭に血が上りやすく、喧嘩の場面で一方に加勢して暴れたり、黒田、渡辺、東といった後輩達を怒鳴りつけたり手を上げる事もあった。連載の長期化に伴い、作中でもそれなりに時間も経過しており、若手だった彼も「新」以降になると後輩から影で「オヤジ」扱いされたりするようになる。『新』の終盤で舞い込んだ独立話で料亭「楽庵」の店長となった後は、従業員達からは「大将」と呼ばれるようになり、若い頃とは打って変わり上に立つ人間としての風格や成長も見られるようになった。父親(大学教授)とは折り合いが悪く、「藤村」への入店以降は実家にも全く帰っておらず、両親の近況は基本的に兄からの連絡を通じて知る。しかし、父親との「雪解け」を匂わせるエピソードを最後に、あべ善太作の『味いちもんめ』は幕を閉じる(偶然とはいえ、最終回でもおかしくないようなエピソードであった)。後の独立編では、伊橋の店の楽庵に夫婦で訪れ伊橋の料理を食べるエピソードがあり、帰り際には伊橋が「また来てくれよ」と言い、ここでようやく父親との和解が実現した。一方で女性関係の方は、ボンさんと共にソープに行く描写はあるものの、時とともに回りの先輩や後輩が次々と結婚していく中で、前述の女子大生香里と一時付き合う、第一作後半で円鶴の弟子の小つるとの交流などがあったが、「世界の中の和食」編終了に至るまで何度か出会いがあったり、それを匂わす展開や合コン等に参加したりするものの、特定の彼女はおらず独身であった。『?継ぎ味』で、シングルマザーとなった香里と10年ぶりに再会。交流が始まり、彼女の息子も懐いているが、復縁を望む元夫の存在(香里の気持ちは元夫から既に離れている)があり、よりを戻すまでには至っていない。連載当初は趣味として、太平洋戦争以前の軍服を収集し、休みの日等はそれを着て街を歩く等サバイバルゲームに興じていたが、戦争を経験した老人達から戦中の悲惨さを聞いてからはその趣味を止めている。また、若手の頃は喫煙者であるシーンも見られたが、原作者が変った「新」以降ではそういった描写はあまり見られなくなった。『?継ぎ味』の第1話で店の常連客よりまた独立話が舞い込むが、直後「藤村」を訪れた時に「藤村」の現状(熊野が体調を崩している事、渡辺と東が辞めて追い回しが一人という状況である事など)を目の当たりにし、下の者が育って花板もそれにふさわしくなり、自分がいる意味がなくなった料亭に事情を話して辞めて、固辞する熊野や谷沢を押し切って「藤村」に戻ってきた。
ボンさん
第1巻・第2話「ボンさん」から登場しているキャラクター。元僧侶。伊橋の同僚であり、ソープ仲間でもある。当初は伊橋の先輩格であったが、途中から伊橋の成長につれて立場が変わったようで、伊橋はボンさんに対してはタメ口をきくようになっている(まじめな話をする時には敬語になる時も)。登場初期は標準語だったが、程なく関西弁で話すようになった。伊橋とお互い冗談や軽口を言い合ってヒジを『ガシガシ』とぶつけ合い、それを周囲が困惑した表情で見つめているシーンは本作の定番(勝敗が描かれる場合は大抵ボンさんが負ける)。瞳が互い違いになっている事が多い。もともとは京都の寺にいた僧侶であったが、戦争中はビルマ戦線に出征していた。終戦後は戦前と価値観が全く変わってしまった事で自暴自棄になり、芸者遊び等をしてばかりで、京都の寺を追放され、丹波・二本松(JR園部駅からJRバスに乗って篠山方面に向かった所のようである)のある寺に追いやられるも、そこでは仏像を売り払ってしまい逃げ出してしまう(これは「藤村」に来た時の熊野との面接でも正直に話している)。その後の経歴については謎であるが、ひょんなことから料亭「藤村」にやってくる。そして揚げ物担当の「油場」となる。彼の経歴については非常に謎が多く、京大出と自称していたこともある。真偽のほどは不明ではある(自ら「ウソや」「〈勉強は〉出来んかった…戦争やったから…」と伊橋に言っていたこともある)が、作品中でみせる博識ぶりからは、まんざら嘘でもないように描写されている。大のギャンブル好きであり、「藤村」に来た当初は伊橋達相手に「花札」や「チンチロリン」等のサイコロ遊びで金を巻き上げており、特に競馬は戦前の日本ダービーからやっており、主人公伊橋には「50年損し続けている」と言われている。ギャンブルの対象としてだけではなく、好きだった馬カブトオーが殺処分される運命にあるのを聞き、伊橋たちと共に競馬で稼いだ100万(カブトオーの子供であるカブトハナに一発勝負を賭けた)を出して助けたこともある。また落語にも造詣が深く、円鶴がストーリー上初めて登場した時は「最近の円鶴は感心せん」と批判している。なおボンさんの本名は吉川広海(よしかわ こうかい、芸者衆には「ひろみ」と名乗っていた)となっている。最初から油場を任されたのではなく、元々前述の「増田」が藤村を辞めたあとに出された求人広告を見て「藤村」を訪ね、熊野に今までの経験を聞かれて「ボウズしてました」と話す(ボウズとは、板前の世界では追いまわし[※ 3] の事)が、ボンさんの言っていたボウズとは、本当のお坊さんのことで、熊野が油場を任せた理由は、藤村の元立板横川をサラ金の取立てから救ってその横川からの勧めという理由と「元坊主なら衣をつけるのは上手そうだ」という熊野のシャレから。しかし、揚げ物に関しては実際にかなりの腕前で、熊野は「長い人生経験が、作るものに深みを与えている」と評価し、後に萩原との会話で「ボンさんにそれだけの腕がなければ使いません。歳は関係ないのです」と言い切っている。初期に出てきた若い頃の容姿は幾分写実的に描かれているが、後期になると現在の姿をそのまま若くしたような容姿で描かれている[※ 4]


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