吾妻線
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吾妻線
第一吾妻川橋梁を渡る211系電車
(2020年11月)
基本情報
日本
所在地群馬県
種類普通鉄道在来線地方交通線
起点渋川駅
終点大前駅
駅数18駅
電報略号ナノセ(長野原線時代)[1]
開業1945年1月2日
所有者東日本旅客鉄道(JR東日本)
運営者東日本旅客鉄道(JR東日本)
使用車両使用車両を参照
路線諸元
路線距離55.3 km
軌間1,067 mm
線路数単線
電化方式直流1,500 V架空電車線方式
閉塞方式自動閉塞式(特殊)
保安装置ATS-P
最高速度85 km/h

路線図

赤色が吾妻線、青色が上越線直通区間(普通列車)

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吾妻線(あがつません)は、群馬県渋川市渋川駅から同県吾妻郡嬬恋村大前駅を結ぶ、東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線地方交通線)である[2][3]
概要

群馬県北西部にあり、利根川支流の吾妻川により形成された吾妻谷を渋川から西進する路線である。

沿線には草津温泉四万温泉沢渡温泉万座温泉鹿沢温泉川原湯温泉尻焼温泉小野上温泉など、温泉が多く存在し、東京上野駅)から直通の特急が運行されている。また普通列車も全て上越線経由で新前橋駅または高崎駅から直通している。

以前は、「Suica」などのIC乗車カードは利用できず、JR東日本の関東地方の在来線で唯一東京近郊区間に含まれていなかったが、2014年10月1日より全線が東京近郊区間に含まれ、導入済みの渋川駅に加え中之条駅、長野原草津口駅、万座・鹿沢口駅でSuicaおよびSuicaと相互利用可能なICカードが使用可能になった[4]。ただし、この3駅ではいずれも一部サービスのみの提供となるため、線内区間を含むSuica定期券の発売は行っていない。
路線データ

区間(
営業キロ):55.3 km

管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者

軌間:1,067 mm

駅数:18(起終点駅含む)

吾妻線所属駅に限定する場合、上越線所属の渋川駅が除外され[5]、17駅となる。


複線区間:なし(全線単線

電化区間:全線(直流1,500 V)

閉塞方式:自動閉塞式(特殊)

保安装置:ATS-P

最高速度:85 km/h

運転指令所:高崎総合指令室 (CTC)

準運転取扱駅(入換時は駅が信号を制御):渋川駅・小野上駅・中之条駅・長野原草津口駅


大都市近郊区間:全線(東京近郊区間)

IC乗車カード対応駅:渋川駅・中之条駅・長野原草津口駅・万座・鹿沢口駅が利用可能(Suica首都圏エリア)

全線を高崎支社が管轄している。
歴史

渋川から中之条までの区間には、本路線が開通する前の1912年(明治45年)に吾妻温泉馬車軌道という馬車鉄道が開業していた。この馬車鉄道はその後吾妻軌道と社名を改め1920年には路面電車となり、そして群馬電力、東京電力(現在の東京電力HDとは別)、東京電燈と経営者が変わりながらも1933年(昭和8年)まで営業を行っていた。

鉄道省は、群馬県吾妻郡六合村(現・中之条町)の日本鋼管(現:JFEホールディングスJFEスチール群馬鉄山1963年閉山)で採掘された鉄鉱石を、同社京浜製鉄所(現・JFEスチール東日本製鉄所京浜地区)のある神奈川県まで輸送し、十五年戦争支那事変大東亜戦争第二次世界大戦)遂行に貢献しようという軍需目的で本路線の建設を計画した。本路線のルートは、規格は普通鉄道なので曲線は少ないながらも、前述の吾妻軌道のルートにほぼ並行する形となっている。一方で、長野原と長野県の真田町(現・上田市)を結ぶ省営自動車鹿沢菅平線が、1935年(昭和10年)に開通した。

運輸省時代の1945年(昭和20年)、渋川 - 長野原(現・長野原草津口)間が長野原線として開業した[6](ただし、当時の新聞では開通当初から吾妻線として報道されている[7])。長野原から群馬鉄山のある太子(おおし)までは、日本鋼管の専用線が敷設された。当初は貨物専用線として開業したが、1946年までに渋川 - 長野原間の旅客営業を順次開始した。

群馬鉄山専用線(長野原 - 太子間)は、1952年(昭和27年)に国鉄に移管され、1954年(昭和29年)に旅客営業を開始した。1963年の群馬鉄山の閉山後、1966年に貨物便運行が廃止、1967年の長野原線電化からも取り残され、1970年(昭和45年)に長野原以西延伸に伴う「長野原駅構内の改築工事」を理由として休止、そのまま列車の運行が再開されることのないまま翌1971年(昭和46年)に路線が廃止された。今でも長野原草津口駅付近の車窓から、廃止された太子支線の鉄橋が見られる。また、太子駅跡は2010年代半ばより中之条町によって復元整備が行われた。太子へは長野原草津口駅から中之条町営バス(旧JRバス関東 花敷線)で行くことができる。

長野原以西は、嬬恋までの予定線が「嬬恋線」として1953年(昭和28年)に鉄道敷設法別表第54号ノ2に加えられ、1961年(昭和36年)には別表第54号ノ3として嬬恋から長野県境を越えて信越本線(現・しなの鉄道北しなの線)の豊野まで延伸する予定が決定。1963年、長野原と嬬恋の間が工事着手された(翌1964年には新規発足した日本鉄道建設公団へ事業承継)。1971年3月7日、大前まで延伸開業、同時に線区名が吾妻線に改称された。しかし、大前 - 豊野間は未着工に終わった。大前 - 豊野間の建設を断念した理由として、当時の国鉄の財政力が弱まっていたこともあるが、それ以前に、土地の事前調査により大前以西の嬬恋村内の地熱が高く(浅間山の影響といわれる)、長大トンネルを掘削して列車を通過させることが危険だという技術的な判断もあったとされる[注釈 1]
八ッ場ダム建設に伴う線路付け替え

岩島駅 - 長野原草津口駅間は、八ッ場ダム(やんばダム)の建設によりダム湖(八ッ場あがつま湖)に水没するため、線路の付け替え工事が行われた[8][9]

日本一短いトンネルとして知られていた樽沢トンネル(全長7.2 m)は[10]、水没区域外に位置しているものの、新線付け替えに伴い用途廃止となった[11]川原湯温泉駅は温泉街と同様に西側の高台へ移転し、新たな川原湯温泉駅が設けられた[8]。また、付け替えに伴って掘削される3トンネルのうち、岩島 - 川原湯温泉間における八ッ場トンネルの施工にあたっては日本の鉄道トンネル本坑では初の全断面TBM工法が採用された[12]

2009年(平成21年)に日本政府の自民党から民主党への政権交代による八ッ場ダム建設中止問題が浮上し、ダム本体建設についての予算は一旦凍結されたが、吾妻線付け替え工事およびダム周辺の道路整備に係る費用は予算計上されており、吾妻線の新線付け替えのための工事は継続して行われた(詳細は「八ッ場ダム」を参照)。

2013年(平成25年)12月18日の「八ツ場ダム水没関係5地区連合対策委員会」において、2014年(平成26年)秋に吾妻線岩島駅 - 長野原草津口駅間を新線に切り替える予定であることが報告され[13]、2014年(平成26年)5月20日にJR東日本高崎支社が吾妻線一部付け替え工事の完了と新設線の運用開始を同年10月1日と発表した[14][15]

2014年(平成26年)9月24日をもって岩島駅 - 長野原草津口駅間の旧線での営業を終了した[8][16]。この日の最終列車通過後に岩島駅 - 長野原草津口駅間の新線への切り替え工事が開始され[8]、翌25日は中之条駅 - 大前駅間を運休して夕方まで切り替え作業が続けられた。9月26日から30日までは渋川駅 - 岩島駅間で列車を営業運転し[16]、岩島駅 - 大前駅間を運休して新線区間で試運転と乗務員訓練を行なった[8]。この期間(9月25日 - 30日)は中之条駅 - 大前駅間で代行バスが運行された[16][17]。10月1日から新線経由で岩島駅 - 大前駅間の営業運転を再開[9]。岩島駅 - 長野原草津口駅間の営業キロが新線への切り替えに伴い0.3 km短縮され[14]、吾妻線全線の営業キロは55.3 kmとなった。

八ッ場ダム建設による線路付け替えに伴う新線(左奥)と旧線との分岐部分(岩島 - 川原湯温泉間)

建設中の川原湯温泉駅新駅舎

建設中の川原湯温泉駅新ホーム

年表

1943年(
昭和18年)10月:長野原線の工事着工。

1945年(昭和20年)

1月2日:渋川駅 - 長野原駅間 (42.4 km) が長野原線として開業[6][2](貨物営業のみ。日本鋼管群馬鉄山専用線 長野原駅 - 太子駅間も同時開業)。金島信号場・中之条信号場・岩島信号場を開設。長野原駅が貨物駅として開業[18]

8月5日:渋川駅 - 中之条駅間 (19.8 km) の旅客営業を開始[19]。群馬原町駅が貨物駅として開業。 金島信号場・中之条信号場・岩島信号場を駅に変更(岩島は貨物駅)[18]

11月20日:中之条駅 - 岩島駅間 (10.7 km) の旅客営業を開始。小野上駅・市城駅が開業。群馬原町駅・岩島駅を貨物駅から一般駅に変更[20][18]


1946年(昭和21年)4月20日:岩島駅 - 長野原駅間 (11.9 km) の旅客営業を開始。郷原駅・川原湯駅が開業。長野原駅を貨物駅から一般駅に変更[21][18]

1952年(昭和27年)10月1日:日本鋼管専用線が国鉄に移管され、長野原線に編入して長野原駅 - 太子駅間 (5.7 km) が開業(貨物営業のみ)。太子駅が貨物駅として開業[22]

1954年(昭和29年)6月21日:長野原駅 - 太子駅間で改キロ (+0.1 km)、川原湯駅 - 長野原駅間で改キロ (-0.1 km)[23]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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