Varney the Vampire;
or, the Feast of Blood 初版の表紙
著者ジェームズ・マルコム・ライマー
吸血鬼ヴァーニー(きゅうけつきヴァーニー、原題:Varney the Vampire)は、ビクトリア朝時代のイギリスで発行されていた、吸血鬼を主人公とするゴシックホラー小説シリーズ。書籍刊行時のタイトルは『吸血鬼ヴァーニーまたは血の饗宴(Varney the Vampire; or the Feast of Blood)』。作者はジェームズ・マルコム・ライマー(James Malcolm Rymer)とトーマス・ペケット・パースト(Thomas Peckett Prest)。日本語ではバーニ、バーニーなど表記の揺れがある。
1845年から1847年にかけてペニー・ドレッドフルとして知られる週刊の安価な媒体で連載され、1847年に書籍として刊行された。そのためにその量は膨大であり[2]、1ページ2列印刷で876ページ[注釈 1]、全232章に及んでおり[1][注釈 2]、約667,000語であった[3] 。
吸血鬼のフランシス・ヴァーニー卿を主人公とし、現代において一般に知られる吸血鬼作品に大きな影響を与えた[4]。例えば鋭い歯(牙)を持ち、女性の首に噛みついて血を吸うなどが挙げられる[5]。 物語としては主人公で吸血鬼のフランシス・ヴァーニー卿が、先頃亡くなった先代当主のせいで没落したバナーワース家に問題をもたらすというものである[6]。 舞台設定などはあまり厳密ではない。表向きは18世紀初めとなっているが[6]、ナポレオン戦争(1799年-1815年)や執筆当時の19世紀半ばの出来事などにも言及されている。また、物語の舞台はイングランドのロンドン、バース、ウィンチェスターといった都市のほかに、イタリアのナポリやヴェネチアなど、様々な土地で展開される。 作中でヴァーニーが語るところによると、かつてオリバー・クロムウェルが王家を裏切った際に吸血鬼化の呪いをかけられ、また、その際に怒りのあまり、誤って息子を殺してしまったという[6]。ヴァーニーのキャラクター像は一貫しておらず、初期においては一般的な吸血鬼物語のように、その行動原理として食料として血液を求めるヴァーニーが描かれていたが、後期においては金銭的な利益を求めているようにも描写されている[1]。作者がヴァーニーを文字通り吸血鬼とするか、人間的なキャラクターとするか、定まっていなかったと思われ、物語は時々矛盾し、混乱が生じている。ヴァーニーはバナーワース家の玄関に掲げられた肖像画の人物によく似ており、物語全編を通して、彼がマルマデューク・バナーワース(またはランナゲート・バナーワース卿。名前もまた物語全体で錯綜している)であることを強く示唆しているものの、実際にバナーワース家の祖先であるかは明白にはされない。また、ヴァーニーは自らが吸血鬼であることに嫌悪しているように描かれており、あるエピソードでは復讐のために(仲間を増やすためではなく)クララ・クロフトンを吸血鬼に変えてしまう。 物語の進展につれてヴァーニーは状況に翻弄された悲劇的な人物として同情を集めるように描写されていく。彼は自分自身を救おうと行動するものの、それが叶わない。最期は、自分に同情してくれた司祭に、自分の出自などを説明した文書を残し、ヴェスヴィオ火山に身を投げて自殺する[6]。 彼は死んでも、途中で何度か復活を遂げ、このために著者は様々な生い立ちの物語を書くことができた。そのうちの一つにはチリングワース博士という医学生がヴァーニーの首吊り死体にガルヴァニズムを適用し、蘇生させたというものがある。このサブプロットはメアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』において、フランケンシュタイン博士が怪物(フランケンシュタインの怪物)を作るために電気を用いたことに類似している。 本作は、ヴァーニーが没落した名家バナーワース家にトラブルを持ち込むという展開である[6]。
物語としての概要
登場人物
フランシス・ヴァーニー卿
その他
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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