吸血鬼ドラキュラ_(小説)
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「ドラキュラ」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「ドラキュラ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

ドラキュラ オリジナル版の初版の表紙
著者ブラム・ストーカー
国イギリス
言語英語
ジャンルホラー小説, ゴシック小説
出版社Archibald Constable and Company (UK)
出版日1897年5月26日
OCLC1447002

『吸血鬼ドラキュラ』(きゅうけつきドラキュラ、原題:Dracula)は、1897年に出版されたアイルランドイギリス)の小説家ブラム・ストーカーによる怪奇小説ゴシックホラー)。複数の語り手による手紙や日記、新聞記事という形で展開される書簡体小説であり、トランシルヴァニアの貴族で吸血鬼であるドラキュラ伯爵がイギリスへと渡り災いを招くこと、また、それをエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授含むグループが討伐する物語が展開される。

本作の執筆は1890年代に行われた。ストーカーはトランシルヴァニアの民間伝承や歴史を広く参照し、執筆にあたっては100ページを超えるメモを残した。現代において研究者は、ドラキュラ伯爵のモデルとして、15世紀のワラキア公国の君主であるヴラド・ツェペシュ(ヴラド3世)や、17世紀のトランシルヴァニアの貴族の未亡人バートリ・エルジェーベトといった史実の人物を挙げているが、これには異論もある。特にストーカーの執筆メモには彼らについて言及した形跡がない。ストーカーは休暇中にウィットビーの公共図書館で、「ドラキュラ」という名前を見つけ、これをルーマニア語悪魔を意味すると勘違いしたと思われる。

出版当時、本作は好意的に評価された。特に小説家ウィルキー・コリンズとその著作『白衣の女』と比較されることが多かった。一方で、当時の水準において、あまりにも恐怖を煽りすぎているとして批判するものもあった。後世には多くの映画で翻案化されたことでもよく知られ、ドラキュラ伯爵は吸血鬼の代名詞的存在となり、吸血鬼の設定を確立したと評される。
あらすじ

イギリスの若い弁護士ジョナサン・ハーカーは上司の命令で、ロンドンの不動産を購入し、移住したいと考えているというトランシルヴァニアの貴族ドラキュラ伯爵の元へ派遣される。ジョナサンはカルパティア山脈の麓にある伯爵の居城で彼から歓待を受け、また、その貴族としての立ち振舞いや、博識な人柄に魅せられる。その一方で彼や城に言いしれぬ不安感も覚える。滞在は数日に及び、その間、好奇心旺盛な伯爵はイギリスのことやジョナサン自身のことをしきりに尋ね、彼は婚約者のミナのことなどを話す。やがて、ジョナサンは城内で3人の女吸血鬼と出会い、さらに伯爵の正体が不死の怪物であり、イギリスに向かおうとしていることに気づくも城に閉じ込められ、その間に伯爵はイギリスに向けて旅立つ。

数ヶ月後、イギリスに船長の遺体のみが残る不可思議な無人のロシア船が入港する。これはドラキュラ伯爵が乗り込み、船員全員を殺害したものであった。ドラキュラはジョナサンと取引した不動産を拠点にロンドンで活動を始め、ミナやその友人である若い女性ルーシー・ウェステンラに目をつける。毎夜、ドラキュラはルーシーの部屋に忍び込むと少しずつ彼女の生き血を吸い、彼女は日毎に衰弱していく。ルーシーの婚約者アーサーや主治医のセワード、またルーシーに恋慕していたモリスの3人は彼女を助けるため手を尽くすが原因はわからない。そんな折、セワードから相談を受けた彼の恩師で、博識なオランダ人老学者エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授は、これが吸血鬼の仕業であると見抜く。アーサーらは、ヘルシングの助言に従い、吸血鬼が嫌うというニンニクをルーシーの家に飾るが、混乱を避けるための配慮が仇となり、ドラキュラは、これをかいくぐると家人を殺害し、ルーシーに最後の吸血を行って死に至らしめる。一方、ジョナサンは城から脱出するも、その時の怪我でブダペストの病院に入院する。ミナはジョナサンを探して現地を訪れ、彼から伯爵や城での体験について聞く。また、2人は正式に結婚し、イギリスへと帰国する。

ヘルシングやアーサーらはルーシーの仇を討つため、彼女を襲った吸血鬼の正体を捜索し始める。そんな折、ヘルシングは帰国したミナよりジョナサンの話を教えられ、ドラキュラ伯爵について知る。また、そこからルーシーが吸血鬼化したと判断し、アーサーらは葛藤しながらも、不死の怪物となった想い人を討伐する。一方、ドラキュラは、精神障害者のレンフィールドを操ったり、デ・ヴィル伯爵という偽名を使ってロンドン各所に不動産を購入し、そこに故郷の土を持ち込むことで安全なねぐらを増やしていく。

ヘルシングらはドラキュラの隠れ家を見つけ出しては、そこに隠された土を浄化し、彼の逃げられる場所を潰していく。他方で狡猾なドラキュラはミナに狙いを定め、レンフィールドを操作して最終的に彼女を襲うことに成功する。しかし、吸血の最中にヘルシングらに踏み込まれ、黒い霧に姿を変えての逃亡を余儀なくされる。ミナはドラキュラを討伐しなければ死後に吸血鬼化する呪いをかけられるが、逆にそれによってテレパシーでドラキュラと繋がるようになる。ヘルシングはミナに催眠術を掛けてドラキュラの居場所を探ろうとする。追い詰められたドラキュラは先んじてトランシルヴァニアへと逃亡する。

ジョナサンの案内でヘルシング一行はトランシルヴァニアの伯爵の城へと向かう。先回りに成功し、ヘルシングは城内の女吸血鬼らを討伐する一方、残ったメンバーは下僕のジプシー達によって城内に運び込まれる間際のドラキュラを急襲する。ジプシー達が抵抗する中で、一行はドラキュラが眠る箱を開け、ジョナサンがククリ刀でその首を切り落とし、同時にモリスがその心臓にボウイナイフを突き刺す。その瞬間、ドラキュラの身体は粉々に砕け、塵となって消える。ミナの吸血鬼化の呪いが解ける一方で、モリスは最後の戦いで致命傷を負っており、神に感謝し、息絶える。

最後に7年後のことに言及されており、生き残った者たちは幸福な生活を送り、またジョナサンとミナは息子に恵まれ、その子にはモリスのファーストネームであるクインシーと名付けている。
登場人物.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}ドラキュラ伯爵を演じたことで有名なベラ・ルゴシ(上段)とクリストファー・リー(下段)。
ドラキュラ伯爵
トランシルヴァニアの古城に住む貴族。吸血鬼
ジョナサン・ハーカー
イギリス人の事務弁護士。
ミナ・ハーカー
ジョナサンの婚約者。本名:ウィルヘルミナ・マリー。作中の中盤で結婚し、ハーカーの姓となる。
ルーシー・ウェステンラ
ミナの友人。19歳の美人。ホイットビーに母と住む。
エイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授
アムステルダム大学名誉教授。セワードの恩師。ルーシーが吸血鬼に襲われていると気づく。
アーサー・ホルムウッド(ゴダルミング卿)
ルーシーの婚約者。男爵。セワード、モリスと親友。
ジャック・セワード
精神病院の院長。ルーシーの主治医で彼女に求婚していた。
クインシー・モリス
北米テキサス州の大地主。ルーシーに恋慕している。
レンフィールド
セワードの病院の患者。精神病者。蜘蛛などを食べ、その命を奪うという独自の観念を持つ。
ドラキュラの花嫁たち
ドラキュラ城に住む3人の女吸血鬼。いずれも美しく官能的な容貌をしている。
執筆背景作者ブラム・ストーカー

作者のブラム・ストーカーは、ロンドンのライシアム劇場(英語版)の支配人代理として当時知られた人物であった。夜公演の司会や舞台俳優ヘンリー・アーヴィングの秘書などをしていた。ストーカーはウォルト・ホイットマンに宛てた手紙の中で、自身のことを「世間に対して秘密主義者」と表現していたが、実際にはその生活ぶりは比較的知られたものであった[1]。ストーカーは本業からの収入を補うためにロマンス小説やセンセーション小説[注釈 1]を執筆しており[3][4]、1912年に亡くなるまでに18冊の本を出版した[5]。その内、本作は『シャスタの肩』(1895年)、『ミス・ベティ』(1898年)に続く、生涯7冊目の刊行作品であった[6][注釈 2]


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