君の手がささやいている
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君の手がささやいている
漫画
作者
軽部潤子
出版社講談社
掲載誌mimi
発表号1992年11月号 - 1997年1月号
巻数全10巻
話数全40話
その他第18回講談社漫画賞少女部門(1994年
ドラマ
原作軽部潤子
演出新城毅彦
制作全国朝日放送
放送局テレビ朝日系列
放送期間1997年12月15日 - 2001年12月26日
話数全5話
その他ATP賞'98グランプリ(1998年)
第7回橋田賞(1999年)
テンプレート - ノート
プロジェクト漫画テレビドラマ
ポータル漫画ドラマ

『君の手がささやいている』(きみのてがささやいている)は、軽部潤子による日本漫画作品、およびこれを原作としたテレビドラマのシリーズ。

漫画作品は、1992年から1996年に『mimi』(講談社)に連載された。1994年、第18回講談社漫画賞少女部門を受賞。テレビドラマは、1997年から2001年に年1回のスペシャルドラマとしてテレビ朝日系列で放送され、1998年ATP賞'98テレビグランプリ、1999年に第7回橋田賞を受賞した。
概要

漫画作品は、『mimi』1992年11月号から1997年1月号に連載。全40話。単行本は講談社コミックスミミから全10巻が発行された。1994年度(平成6年)、第18回講談社漫画賞少女部門を受賞。

聴覚障害者ヒロインと彼女と共に生きる夫や娘、家族が、さまざまな障害や葛藤をお互い支え合い分かち合い、愛の力で乗り越えていく姿を描く。通読すれば登場人物の成長過程がうかがえるが、おのおの一話完結であり、読者に「真の愛情とは何か」を問い掛ける。単行本の扉絵では毎回、登場人物による手話が描かれ、簡単な手話辞典になっている。
続編・小説版

本作は、続編の『新・君の手がささやいている』、『君の手がささやいている最終章』(共に講談社『Kiss』連載)と共に連作シリーズとなっており、登場人物の成長が丁寧に描かれている。また主人公の子供時代を描いた番外編『みえちゃんの手がささやいている』も存在する。

本作と『新・君の手がささやいている』では主人公・美栄子のエピソードが中心だが、『君の手がささやいている最終章』では娘の千鶴が主人公となり、突発性難聴を患い中途失聴者となって音を失う事の失意から立ち直り新たな人生を踏み出していく姿が主要テーマとなっている。

このほか、美栄子と、夫・博文の出会いから出産までを描いた小説版(講談社ベルノベルズ、立花遠:著)も存在する。
登場人物
野辺家の人々
野辺 美栄子(のべ みえこ)
本編のヒロイン。旧姓は武田。生まれながらにして音が殆ど聞こえない重度の
聴覚障害者。自らの希望で一般社会で健常者に混じって仕事をすることに憧れ、商事会社に入社。そこで運命の人となる野辺博文と出会い、周囲の反対に戸惑いながらもお互いの愛を貫き結婚。やがて愛娘の千鶴をもうける。なお結婚生活は駆け落ち同然でスタートさせたため、婚姻届けを出したけで結婚式は行なっていない。博文と出会うまでは聴覚障害者ゆえの葛藤を常に抱え、引っ込み思案なところがあった。意気込んで健常者に混ざっていこうとするも上手くいかないことが多く落ち込んでばかりいたが、博文や千鶴とのふれあいの中で本来持っていた明るい性格が表に出てくるようになり、その優しい人柄に多くの人達が惹き付けられていく。また自身が普段から人の手を借りることが多いからか、困っている人を見つけると放っておけない、かなりのお節介焼きでもある。千鶴が生まれた時は聴覚障害のこともあり母親としての自信が持てないでいたが、博文や周囲の助けもあり、強い母親になろうと懸命に努力する。また千鶴が中途失聴者となった原因が自分にあるのではないかと自分を責めるが、千鶴のために耳の聞こえない経験を生かして困難への対処の仕方を必死になって教え込もうとする。千鶴にとっての一番の理解者であり、頼りになるママ。その分、いけない事をした時は父親の博文以上に厳しい。聾学校で習ったワープロ打ちの正確さと速さは、その事が会社で受け入れられる1つのきっかけになった。家庭に入ってからも時々博文の持ち込んだ書類の清書等を手伝ったりすることもある。また耳が聞こえないことで一般の健常者とは違う視点を持っているために独特の発想力や工夫をする器用さも併せ持っている。幼い頃から両親に反対されていたこともあり、自転車に乗ることが出来ないままだったが、博文と千鶴の協力で乗りこなせるようになった。算数などの物理的な回答は当たり前にできるものの、情報伝達を必要とする国語の文法表現問題などは大の苦手である(これは美栄子だけではなく、聾学校教育を受けた者の特徴。その分口話などの一般社会とのコミュニケーションに関する勉強時間が大幅に設けられているからである)。
野辺 博文(のべ ひろふみ)
美栄子の夫。元々は美栄子が勤めることになった商事会社の先輩社員だった。美栄子と初めて会った時は聴覚障害者である事を知らずに「変なヤツ」と思っていたが、後に美栄子が自らの部署に配属されることになり聴覚障害者である事を知る。仕事をしつつ徐々に美栄子の一生懸命に頑張る姿と繊細で優しい心に気付いて、自ら手話を覚えようとする。その過程で美栄子との愛を確かめ合い、周囲の反対を押し切る形で美栄子と結婚。美栄子とは何も語り合わなくともお互いの気持ちを理解できるほどに深い愛情で繋がっている。家族を何より大事にする優しい夫であり、普段は外に出たがらないぐうたら亭主だが、それはいつでも家族のそばを離れたがらない気持ちの裏返しでもある。千鶴にとっては良きパパであるが、絶対に手を上げることをせず、いつも甘やかしてしまう(その分、美栄子が厳しくしている)。またあまりに怒らないため、千鶴当人からも愛情が足りないのではないか、と思われたりしたことも。また当初は煙草を吸っていたが、千鶴が生まれてくるのを機会に禁煙した。美栄子の耳が聞こえないことを承知のはずだが、必ず声に出して「美栄ちゃん」と呼ぶ癖がある。また手話で会話しているのがほぼ家族相手なため、美栄子が作った手話をそのまま覚えてしまい、時に他の聴覚障害者とは正確な手話として通じないことがある。8年目の結婚記念日前後に会社の後輩社員である君原という快活な女性社員に言い寄られて一度だけ浮気を経験する。しかし会話の中で意識せずに手話を使ってしまう癖が出てしまい、君原から「心の中まで奥さんが染み付いてしまっている」と指摘され、美栄子との結婚当初のことを思い出し、美栄子の元へ帰っていく。
野辺 千鶴(のべ ちづる)
おしゃまで快活な博文と美栄子の一人娘。当初は耳の聞こえない母親に疑問を抱いたりもしたが、やがて母の抱えた聴覚障害を理解し、積極的に手話を覚えて普段から健常者と美栄子の通訳となるなど積極的に助けるようになる。両親が新婚旅行を行なっていないことを知るや福引で当たったペアのグアム旅行券をプレゼントして親孝行をする等、心の優しさを人一倍持っている。母が積極的に健常者とも付き合う姿を生まれた頃から見ているため誰に対しても物怖じしない性格に育ち、それ故に友達も多い人気者。その一方で一人っ子ゆえに甘えん坊であり、同年代の女の子と比べても多少子供っぽいところがある。勉強は苦手でクラスでも下の方。特に算数は得意ではないらしく、テストでも最下位争いの常連。その代わり、耳の聞こえない母親とのふれあいからごく自然に身につけた感受性の強さを発揮できる芸術面での成績は良く、絵画コンクールに絵を出すことを勧められたりしたことも。また少し気が多いところがあり、その時々で好きな男の子が変わったり、ライバルの女の子に対抗心を燃やすなどヤキモチ焼きな一面も覗かせる。シリーズ最終章では突発性難聴を患って中途失聴者となり、ショックから心神喪失状態になるなど子供ながら苦難の人生を歩むことになる。人工内耳手術の話を持ちかけられた時に、健常者と聴覚障害者の両方の気持ちを理解し得ることから「聞こえることが本当に良いことなのか」と悩むが、美栄子の励ましにより手術を受け、リハビリ訓練を重ねたことにより音を少しずつ聞き分けられるようになった。中途失聴者ゆえ耳は聞こえないがしゃべることは普通にできる[1]ため、聴覚障害者である事を周囲に理解され難く、美栄子とはまた違った「伝わらない悩み」を抱えることになる。
パン
野辺家のペットのオスの仔犬。千鶴がせがんだことから博文が捨て犬の飼い主を探しているボランティアからもらってきた。名前は耳の聞こえない美栄子も呼べるように、と手を打つ「パン」という音に引っ掛けて博文が命名した。実はもらわれてくる3ヶ月前に飼い主の老人が急に亡くなっており、その頃は「コロ」と呼ばれていた。元の飼い主を恋しがっていたために美栄子たちにはなかなか懐かなかったが、後に事情を知った美栄子たちの努力によって野辺家にかかせない家族となっていく。普段美栄子と暮らしている時間が長いせいかどこにでも付いてまわる。また千鶴の課した訓練の末に美栄子の耳が聞こえないことを理解して聴導犬のような働きができるようになり、雨が降ってきたら後ろから触って知らせたり、悪戯っ子が美栄子に向かって石をぶつけようとしていたところをその子供に噛み付いて美栄子を助ける(この事件では、事情を知らない噛み付かれた子供の親の抗議から、強制的に保健所に連れて行かれそうになったが、噛み付かれた子供が自分の非を自己申告して認めたために難を逃れた)など、非常に利口な一面が見て取れる。
野辺家の親族
武田 晴子(たけだ はるこ)
美栄子の母。生まれながらにして聴覚障害者になってしまった美栄子の為に、自分の時間を全て美栄子に捧げて一人前の女性に厳しく育て上げた、美栄子にとっては一番の味方であり理解者。美栄子に対してはそれだけ手を掛けたことで少々過保護の気があり、博文の転勤で美栄子たちが仙台に引っ越した後、1日1回の定例のファックスが来ないことに腹を立ててわざわざ仙台まで来たりしていたが、美栄子が一人の人間として正しく成長していることを感じ取り、それからはあまり干渉しなくなった。美栄子が子供の頃、耳が聞こえないことから物覚えの悪かった美栄子の将来を悲観して、2人で電車に飛び込み自殺しようとしたことがある。しかし美栄子が少しずつ成長していることに気付き思いとどまった。しかしその一部始終を美栄子の妹・真知子に見られていたことを後に知らされる。美栄子の父の話によると、若い時はなかなかおしゃれだったらしい。しかし美栄子が産まれてからはそういったことに全く興味を失い美栄子の世話に没頭していた。美栄子は自分のせいで母の女性としての時間を奪ってしまったと思っていたが、父は「それは美栄子の耳が治ることに対して希望を捨てなかったからだ。そんな母さんを父さんは一番綺麗だと思う」と言い、美栄子は母が女として一番の幸せを手に入れていたことを知る。その一方で妹の真知子に殆ど構ってやれなかったことを心の中で後悔している。真知子が自分の結婚式準備のために結婚式を挙げていない美栄子に積極的に相談に行くのを、子供の頃に構ってもらえなかったことに対する当て付けではないかと思い悩むが、姉妹が親の知らぬ間に相手のことを理解して本当に仲の良い姉妹になっていたことを知り、安堵する。
美栄子の父
厳格で頑固な性格。美栄子に合った学校に通わせるために会社を辞めて引っ越したり、美栄子を喜ばせるために事あるごとに海へ行き貝殻を拾い集めることを趣味としていた。それだけに美栄子が成人した後も門限の時間になると外に出て帰りを待っていたりするほどの過保護ぶりを発揮し、博文と美栄子の結婚を強く反対する。しかし博文の母親が美栄子に結婚を諦めるように頼みにきたことを知ると「何様のつもりだ!」と激怒。だが妻に「これであなたの思い通りになったじゃないの!!」と言われ複雑な心境になる。結婚前に挨拶に訪れた博文と会うことはせず、美栄子は博文に心配かけまいと母に「両親とも賛成している」と口裏を合わせるように頼み込んでいた。博文がどんな男か直接確かめるために博文の会社を訪ねるが、その帰りに偶然ブライダルショップに入ったところで博文と出会い、その言葉から結婚への強い意志を感じたことから駆け落ち同然で実家を出て結婚に踏み切ろうとする美栄子に「辛かったらいつでも家に帰って来い」と最後は結婚を許した。子供の頃、美栄子が正しい発音で言葉を喋れるようになるまでは、心を鬼にしてわざと背を向けて美栄子の方を向かなかった。急な病に倒れて生死の境を彷徨った時、美栄子はその時の事を思い出し、博文に協力を頼んできちんと「お父さん」と声に出して喋れるように特訓をし、意識不明の父に必死に呼びかけた。


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