君たちに明日はない
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『君たちに明日はない』(きみたちにあすはない)は垣根涼介小説、およびそれを題材にした漫画作品、テレビドラマである。
概要

作者である垣根涼介が自分のサラリーマン時代の体験を重ねて、リストラに悩む人間たちの苦悩や、それをどうやって乗り越えていくかを描く。

元々は『CHOKER(チョーカー)』のタイトルで小説新潮に連載されていたものをまとめ、2005年3月に上梓、その年の第18回山本周五郎賞を受賞した。当時は「『ワイルド・ソウル』など冒険小説の作者がなぜサラリーマン小説を?」と、戸惑いの声が多かったが、その後2007年9月に刊行されたシリーズ第2作『借金取りの王子』で人気を博し、第3作『張り込み姫』、第4作『勝ち逃げの女王(文庫化の際に『永遠のディーバ』に改題)』と続いて刊行され、著者を代表するシリーズとなる。

2014年5月発売の『迷子の王様』でシリーズ完結となった。
各エピソードのあらすじと登場人物
第1巻「君たちに明日はない」
怒り狂う女
森松ハウス
[1]
東証二部上場の建材メーカー。
芹沢陽子
#主要登場人物を参照のこと。
オモチャの男
バカラ株式会社
[2]
1954年創業。東証二部上場の玩具メーカーで、従業員数は250人。かつては『人生シミュレーションゲーム』などのヒット作を飛ばしていたが、1980年代のファミコンブームに乗り遅れてからは業界では取り残されている。そしてついに五ヵ年計画としてリストラが始まり、作中では最終年度に当たる年度のリストラを真介の会社が手掛けることとなった。
緒方紀夫
37歳。富山県出身[3]。開発二課の研究主任[3]。会社での開発実績としては25歳で『ウンコくん』というミニマスコットを開発し[4]、29歳で『与作とウメ』という極貧百姓のペアフィギュアを作っている[5]。両作品とも大ヒットを飛ばし、30歳にして研究主任に昇格するが、それ以降はヒット作に恵まれず、部下の管理能力も最低レベルと評される[5]。真介の目からすれば、風采は上がらずファッションセンスも非常に独特[6]。コミュニケーション能力にも乏しく、非常に子供っぽい[7]。退職勧奨の面接を受けている時も当初は全く事態が理解できず他人事のように構えていた[8]。結果的には開発部長に直訴し、降格と減給処分を受け入れ、バカラに残ることとなった[9]
旧友
ひかり銀行
[10]
旧財閥系の『安井銀行』と『三友銀行』が合併して誕生した。出資比率は安井銀行が51%、三友銀行が49%のため旧三友銀行の行員は冷遇されている。資本金は5200億円、総資産は93兆5700億円。行員数も24000人というメガバンクである。このうち為替電信部が人員削減の対象となった。
池田昌男
真介の高校時代の同級生。ひかり銀行の為替電信部に勤務しているが、上司である部長と衝突してしまう[11]。学業優秀で一橋大学経済学部卒業[12]。卒業後三友銀行に就職し、支店の渉外課と融資課を渡り歩き、本店の企業精査部に配属される[13]。この企業精査部こそ池田の志望であったが、合併後は『部』から『課』に格下げされ、権限が縮小された[13]。さらには旧安井銀行の行員と衝突してしまい、現在の部署に異動となる[14]。真介とは同級生ではあるが、親しくはなくむしろ嫌悪感を抱いていた[15]。退職するかどうか思い悩んだ結果、山下(後述)の勤める会社に転職することを決意する。
山下隆志
真介の高校時代の同級生。高校二年生の時に転校し、真介と知り合った[16]。趣味がバイクという点で馬が合った[17]。しかし学業成績は振るわず東京の太平洋あけぼの大学(山下曰く「壮大なるバカ大学」)に進学し、同大学を卒業[18]。だがその個性的な性格が採用面接で受けが良かったのか名門・五菱銀行に就職する[19]。学歴がものを言う銀行業界では全く出世が望めず、就職後まもなくやる気を失い[20]、外回りの営業も怠るようになりクビになりかけた[21]。だが融資課の窓口に配属されたところ意外な才能を発揮し[22]、融資先の回収率が100%近くにもなり、仕事ぶりを認められ副支店長にまで昇進する[22]。しかし、これ以上の昇進は望めないとして、ヘッジファンド『ジャパンキャピタル』に転職した。後に「みんなの力」や「勝ち逃げの女王」などにも登場する。
八方ふさがりの女
T・スタッフ株式会社
[23][24]
トヨハツ自動車株式会社の100%出資子会社。かつてはトヨハツ自動車の広報部門であったが、分離独立する形で成立した。従業員数は80名。親会社の方針転換により、従業員削減を余儀なくされる。
飯塚日出子
28歳。愛知県瀬戸市出身[25]。高校卒業後トヨハツ自動車の広報部門に就職した[25]。高校時代は女子自由形の100メートルで全国9位という実績を持ち、トヨハツ自動車には水泳の実業団の選手として採用される[25]。しかし選手としては芽が出ず、社業に専任するが、リストラの対象となった[25]。小倉弘彦という恋人がいるが[26]、勤め先こそ良いものの甲斐性がない上に頭も弱く、イライラしている[27]。愛知県民としてのプライドも非常に高く、標準語を「関東弁」と呼んで蔑む[27]。他人に対しても小馬鹿にする態度を取り、とんちんかんなことを聞いてきた客に対しては心の中で名古屋弁で毒づく。実家の両親は瀬戸市で味噌カツ屋を経営しており[28]、その店の従業員に惚れられている[29]。退職して実家に戻るか、会社にとどまるかを迫られ、熟慮の末会社にしがみつくことを選択する。
去り行くもの
音楽プロダクション(社名は登場していない)
[30][31]
従業員15名、資本金約3000万。専属の音楽プロデューサーが6名在籍している。しかし、在籍しているプロデューサーの内2人が以前より犬猿の仲で、いよいよ会社が空中分解寸前にまでなろうとしていた。プロダクションの社長がどちらかをリストラしようにも、創業期からのメンバーであること、社長直々にリストラを行うと組織に亀裂が入る危険性が発生するため、真介の意見を参考にどちらを切るか決定することになった。面接対象となる石井と黒川は両者とも売り上げや粗利などの数字上はほぼ互角。また、両者は結果如何に関わらず、退職を受け入れることに同意している。
石井
知的な顔つきをしており、新人発掘は不得手であるが、コンスタントにそこそこの数字を出している[32]。実績のあるミュージシャンであれば、それに合わせたプロデュースを行なう[32]。一方、それ相応の実力を持っていたとしても新人のプロデュースにはかなり消極的で[33]、「新人を売れさせるのは費用対効果や確率的に見ても見合わないし、売れる人は売れる」という消極的な思考の持ち主。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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