名誉毀損
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ウィキペディアにおける名誉毀損については、「Wikipedia:名誉毀損」をご覧ください。

この項目では、名誉毀損の概要・全般について説明しています。日本の刑法に定められた犯罪については「名誉毀損罪」をご覧ください。

名誉毀損(めいよきそん、(: defamation)とは、公然で事実を摘示し、他人の名誉を傷つける行為。損害賠償責任等を根拠づける不法行為や、犯罪として刑事罰の対象になり得る。「名誉棄損」とも表記される[注 1]公共の利害に関する内容かつ公益を図る目的の場合は、内容が真実である場合又は真実だと信じてもやむをえない状況や理由、つまり「真実相当性(真実性)[1]」があれば悪意はないとし、違法性は阻却されるという例外規定が設けられている[2][3][4]

事実の摘示が無かった場合は侮辱罪になる。名誉毀損には刑事名誉毀損民事名誉毀損がある[5]
名誉の概念

人の「名誉」は多義的な概念である。
内部的名誉
自己や他人が下す評価からは離れて独立かつ客観的に存在しているその人の真価をいう
[6][7]
外部的名誉(社会的名誉・事実的名誉)
ある人に対して社会が与えている評判や世評などの評価をいう
[6][7]
名誉感情(主観的名誉)
本人の自己に対して有している価値意識や感情をいう
[6][7]

これらのうち内部的名誉は客観的にその人に備わっている真価そのものであり、他から侵害される性質のものではなく法的保護の問題とはならない[6]。法的保護のあり方が問題となるのは外部的名誉と名誉感情である。

刑法上の名誉毀損罪は外部的名誉を保護法益とする[6]。また、民事上、名誉毀損として保護される「名誉」も外部的名誉である[8]。名誉感情については名誉感情の侵害が問題となる(#名誉感情の侵害を参照)。
刑事名誉毀損と例外規定
フランス

フランスでは刑法典ではなく1881年7月29日出版自由法29条以下において、個人や団体の名誉を毀損または侮辱した場合の処罰が定められている[9]。フランスでも出版自由法が制定されるまで名誉に対する罪は刑法典に定められ、1810年刑法典の367条では「公的な場所あるいは集会において、または公的な証書において、または掲示、販売、公表された印刷物、印刷されていない文書において、もし存在すれば重罪、軽罪の訴追を受け、あるいは市民の軽蔑や憎悪を招くような事実について個人を攻撃することは中傷の軽罪にあたる」と定められていた[9]

1819年5月17日出版法13条前段は「人または団体の名誉または名声を傷つける全ての主張または非難は名誉毀損である」とし、事実の真偽に関わらず処罰する仕組みが採用された[9]

1819年出版法は1881年7月29日フランス出版自由法により改正され、1881年7月29日フランス出版自由法29条前段は「ある事実が、人あるいは団体に帰せられ、その人あるいは団体の名誉あるいは名声を侵害する場合には、その事実を提示し、あるいはその事実を非難することは、すべて名誉毀損である。」とし処罰対象としている[9]。フランスでの名誉毀損罪の構成要素は、事実の提示あるいは事実に対する非難であること、名誉や名声の侵害にあたること、特定の被害者に対する者であること、公表性があることであり、他に判例によって悪意も要件とされている[9]。なお、名誉毀損罪の免責要件として、1819年出版法では公務員と公共団体に関する事実の場合の真実性の抗弁が定められていたが、1881年出版自由法では真実性の抗弁について事実証明の範囲が拡大されている[9]
ドイツ

ドイツでは刑法185条以下において、名誉毀損の罪が定められている[9]
日本「名誉毀損罪」を参照

日本では刑法230条以下に定められている。

刑法上、名誉毀損罪と侮辱罪の関係が問題となり、名誉毀損罪は外部的名誉を保護し侮辱罪は主観的名誉を保護しているとする二元説などもあるが、ともに外部的名誉を保護するとみる外部的名誉説が通説である[6]。通説は具体的事実の摘示によって区分し、具体的事実を摘示した場合には名誉毀損罪の成否が問題となり、そうでない場合には侮辱罪の成否が問題となるとする。

例外規定

情報が事実であること、情報を発信することで公益があること、その情報が公共的に明らかにされるべきものであること、この3条件を満たした場合は、本人が誹謗中傷だと感じても名誉毀損には問えない。また、発生から3年経つと時効であり、誹謗中傷者を知ってから半年以内に刑事告訴しなければ、起訴出来なくなる[10]
民事名誉毀損
序説

大陸法系の国々において、名誉毀損は、不法行為を構成するとされている。またコモンロー法体系において、名誉毀損は、不法行為とされている。アメリカ合衆国連邦裁判所によれば、他人の評判について虚偽の名声を公表することにより、その評価を低下させる行為が、名誉毀損であるとされる[11]

不法行為としての名誉毀損は、人が、品性、徳行、名声、信用その他の人格的価値について社会から受ける客観的評価(社会的評価)を低下させる行為をいう[12]

日本の刑事名誉毀損と民事名誉毀損の比較刑事名誉毀損民事名誉毀損
事実の摘示事実の摘示によって社会的評価を低下させた場合にのみ名誉毀損罪が成立(判例・通説)[13][14]事実を摘示した場合だけでなく意見ないし論評であっても社会的評価が低下すれば名誉毀損による不法行為が成立[13][14]
意見ないし論評事実の摘示以外の方法によって社会的評価を低下させた場合には侮辱罪が成立(判例・通説)[13][15]
名誉感情の侵害社会的評価の低下がなければ名誉毀損罪も侮辱罪も不成立[15](判例・通説では名誉毀損罪も侮辱罪も外部的名誉が保護法益[13])民事上名誉毀損として保護される「名誉」は外部的名誉である[8]。したがって名誉毀損とはならない。ただし名誉感情の侵害として不法行為が成立する場合がある[15]
故意・過失故意の場合のみ名誉毀損罪(または侮辱罪)が成立(故意犯)[15]過失による名誉毀損でも不法行為が成立[14]
公然性明文で公然性が構成要件となっている[14]公然性は要件となっていないが名誉毀損は社会的評価を低下させる行為であり当該言論がある程度他人に伝播する態様のものであることが必要で刑事と民事で決定的な違いを生じるものではない[16][17]。多くの裁判例や実務は公然性必要説に立っているとされる[18]

名誉毀損の客体
法人

法人も社会的存在として一定の評価を受ける存在であるから法人に対しても名誉毀損は成立しうる[19][12]


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