名物学
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

特産品や茶道具の「名物」とは異なります。

名物学(めいぶつがく)とは、前近代の中国日本東アジア)で発達した学問の一つ。単に名物ともいう。「名前と物の対応関係」を扱う分野[1]訓詁学本草学博物学等と重複する。具体的には、物を同定する営為[2][3]、および「異名同物」「同名異物」を整理する営為。ここでいう「異名同物」は、古名方言名・和名・漢名・洋名などを指す。「同名異物」は、例えば「キリン」と「麒麟[4]、「人参」と「高麗人参[5]「鮭」と「サケ」[6]「蘭」と「ラン」[5]などを指す。
概要「詩経#名物学との関係」も参照

名物学の「名物」という語句の用例は古くからあり、初出は『周礼』にさかのぼる[7]。名物学は伝統的な学問である一方、体系性の薄い漠然とした学問でもあったが、1950年代日本の中国学者青木正児の「名物学序説」(『中華名物考』所収)により体系化された[8]

名物学は、元々は訓詁学(とりわけ『詩経』訓詁学と礼学)の下位分野として生まれた。すなわち、『詩経』や『礼記』に出てくる動植物や器物を同定する分野として生まれた。のちにそこから半ば独立して、本草学[9]園芸学農学地誌学妖怪研究[9]古物蒐集[10]図譜[11]譜録類書などと重なる総合科学として発達した(青木の説明では「格古」「本草」「種樹」「物産」「類書」[12][7])。そのほか、青木が戦前に読んでいた中川忠英清俗紀聞』や柳亭種彦『還魂紙料』のような風俗研究・考証随筆[13]や、戦後の青木自身による食文化研究[13][14]も、名物学の要素をもつ。

名物学の背景思想として、『論語』子路篇の「正名」(名を正す)や、陽貨篇の「多識」(『詩経』を学ぶ意義の一つは動植物について博学多識になること)といった孔子の教えがあった。また、朱子学の「格物」と紐付けられることもある[15]
歴史

名物学の書物の筆頭として、前漢頃の『爾雅』、および後漢末の『釈名』がある[7]。また、詩経名物学の筆頭として、三国呉陸?毛詩草木鳥獣虫魚疏』(通称『陸疏』)がある。また、明末李時珍本草綱目』は、その凡例で「本書は『爾雅』や『陸疏』を補完する書物でもある」と述べているように[16][17]、本草学だけでなく名物学の大著でもあった。清朝考証学の時代には、程瑤田が特に名物学を扱った[7]。考証学者たちは、名物学のなかでも特に礼学の名物学を扱った[7]

日本では、江戸時代に特に盛んになった[18]。その背景として、隣接分野の儒学・本草学・万葉[19]等の流行、上記の『陸疏』『本草綱目』等の受容、平安時代の『本草和名』『和名類聚抄』等以来の和名比定の伝統、などがあった。江戸時代の主な書物として、林羅山『多識編』[9]伊藤東涯『名物六帖』、貝原益軒『日本釈名』、新井白石東雅』、稲生若水庶物類纂』、新井白石が稲生若水に書かせた『詩経小識』や狩野春湖に描かせた『詩経図』[20][18]岡元鳳『毛詩品物図攷』、春登上人『万葉集名物考』[19]曽占春『国史草木昆虫攷』[18]源伴存(畔田翠山)『古名録』[18]狩谷?斎『箋注和名類聚抄』、山岡浚明『類聚名物考』、三浦蘭阪『名物?古小識』、寺島良安和漢三才図会[21]中井履軒『左九羅帖』『画?』[1]などがある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:26 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef