同型定理
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数学、特に抽象代数学において、同型定理 (どうけいていり、: isomorphism theorems) は準同型部分対象の間の関係を描く3つの定理である。定理のバージョンはベクトル空間加群リー環、そして様々な他の代数的構造に対して存在する。普遍代数学において、同型定理は代数と合同の文脈に一般化することができる。
歴史

同型定理は加群の準同型に対してEmmy Noetherによって雑誌 Mathematische Annalen に 1927 年に掲載された彼女の論文 Abstrakter Aufbau der Idealtheorie in algebraischen Zahl- und Funktionenkorpern においていくらか一般的に定式化された。これらの定理のより一般的でないバージョンは Richard Dedekind の仕事や Noether による前の論文において見つけられる。

3年後、B.L. van der Waerden は彼の大きな影響を及ぼした Algebra、主題への -- アプローチをとった最初の抽象代数学の教科書を出版した。Van der Waerden は群論に関する Noether の講義と代数学に関する Emil Artin の講義を、また Wilhelm Blaschke(英語版), オットー・シュライアー(英語版), そして van der Waerden 自身によって行われたイデアルに関するセミナーを、主なリファレンスとして信用した。準同型定理と呼ばれる3つの同型定理と同型の2つの法則は群に適用されたとき明示的に現れる。

まずの文脈において4つの同型定理を述べる。
定理の付番と命名について

以下に示す4つの定理はしばしば「第一同型定理」「第二同型定理」??と番号を用いた名前で呼ばれるが、文献によってその順番はまちまちである。以下の表に文献ごとの群同型定理の付番の例を示す。なお、これらの定理にはそれぞれ環と加群にも対応する定理が存在することに注意されたい。

群の同型定理の名前の比較分類筆者定理1定理2定理3
「第三」なしJacobson
[1]準同型の基本定理

(Fundamental theorem of homomorphisms)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)第一同型定理

(First isomorphism theorem)
van der Waerden,[2] Durbin[4]準同型の基本定理

(Fundamental theorem of homomorphisms)第一同型定理

(First isomorphism theorem)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)
Knapp[5](対応なし)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)第一同型定理

(First isomorphism theorem)
Grillet[6]準同型定理

(Homomorphism theorem)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)第一同型定理

(First isomorphism theorem)
「第三」あり(Other convention per Grillet)第一同型定理

(First isomorphism theorem)第三同型定理

(Third isomorphism theorem)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)
Rotman[7]第一同型定理

(First isomorphism theorem)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)第三同型定理

(Third isomorphism theorem)
Fraleigh[8](対応なし)第二同型定理

(Second isomorphism theorem)第三同型定理

(Third isomorphism theorem)
Dummit & Foote[9]第一同型定理

(First isomorphism theorem)第二同型定理、もしくは菱形同型定理

(Second or Diamond isomorphism theorem)第三同型定理

(Third isomorphism theorem)
番号なしMilne[10]準同型定理

(Homomorphism theorem)同型定理

(Isomorphism theorem)対応定理

(Correspondence theorem)
Scott[11]準同型定理

(Homomorphism theorem)同型定理

(Isomorphism theorem)一年生定理

(Freshman theorem)

一般的ではないものの、これらに対応定理を4番目の定理として加えることがあり、「第四同型定理」あるいは「束定理」と呼ばれる。
定理のステートメント
定理1

G と H を群とし、φ: G → H を群準同型とする。このとき
φ のは G の正規部分群であり、

φ のは H の部分群であり、

φ の像は商群 G/ker(φ) に同型 である。

とくに、φ が全射であれば、H は G/ker(φ) に同型である。第二同型定理を表した模式図
定理2

G を群とする。S を G の部分群とし、N を G の正規部分群とする。このとき
(英語版) SN は G の部分群であり、

共通部分 S ∩ N は S の正規部分群であり、

商群 (SN)/N と S/(S ∩ N) は同型である。

技術的には、S が N の正規化群の部分群でありさえすれば N のが正規部分群である必要はない。この場合、共通部分 S ∩ N は G の正規部分群とは限らないが、S の正規部分群ではなおある。
定理3

G を群とする。N と K を G の正規部分群で K ⊆ N ⊆ G とする。このとき
商 N/K は商 G/K の正規部分群であり、

商群 (G/K)/(N/K) は G/N に同型である。

定理4詳細は「対応定理」を参照

一部の文献では対応定理を三番目もしくは四番目の同型定理として紹介している。また別の文献ではツァッセンハウスの補題(英語: Zassenhaus lemma)を第四同型定理としている[12]
議論

First isomorphism theorem

定理1は「群の圏が正規エピ–モノ分解可能、すなわち正規エピ射(英語版)のクラスとモノ射のクラスはこの圏の標準分解系(英語版) (factorization system) をなす」という圏論的事実に基づく。


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