同人誌
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白樺』創刊号の表紙ウィキぺたんを描いたコミック同人誌

同人誌(どうじんし)または同人雑誌(どうにんざっし、どうじんざっし)は、同人(同好の士)が資金を出して、自ら執筆・編集・発行を行う雑誌のこと[1][2]。似た言葉にファンマガジンから成るファンジン(fanzine)がある[3]
概要「同人」も参照

日本においては、1873年(明治6年)にアメリカから帰国した森有礼が翌年に創刊した『明六雑誌』が同人雑誌の先駆けとされる[4]。「文芸雑誌」も参照

文芸同人誌としては、1885年明治18年)に尾崎紅葉山田美妙石橋思案巖谷小波川上眉山廣津柳浪硯友社同人が発行した機関誌『我楽多文庫』が最初とされ、その後、『奇蹟』『新思潮』などの同人誌が刊行されてゆき、中でも志賀直哉が参加した『白樺』は戦前の同人誌の中でも最長、最大の力を発揮したとされる。また、戦後に本多秋五らが創刊した『近代文学』は、日本近代文学史上最大の同人誌であった[5]

漫画の同人誌も現れたが、1960年代までは安価に印刷する手段がなかったため、原稿を綴じて回覧する「肉筆回覧誌」が主流で、青焼きコピーの同人誌も多く見られた。1968年昭和43年)頃からオフセット印刷が普及し始め、1972年(昭和47年)に開催された「日本漫画大会」ではオフセットのコミック同人誌が多かったという[6]

また、1975年(昭和50年)にコミケが始まった当初は、コミック同人誌も創作マンガとファンクラブ会誌が中心であったが、1977年(昭和52年)の『宇宙戦艦ヤマト』、1979年(昭和54年)の『機動戦士ガンダム』がブームになると、アニメ二次創作同人誌が急速に多くなっていった[6]

現在、同人誌の頒布の場としては同人誌即売会が存在し、その中でも「コミックマーケット(通称・コミケ)」は、年間100万人以上が来場する日本最大規模のものとなっている。コミケの他にも多くの同人誌即売会は存在し、2015年(平成27年)には大小合わせて1000回以上が催された[7]。他の主な同人誌即売会としては、COMITIA文学フリマなどがある(同人誌即売会を参照)。

また、近年ではメロンブックスとらのあなといった、同人誌の委託販売を行う書店や、BOOTHなどの自主製作作品を販売するプラットフォームも存在するため、即売会の場を通さずに頒布及び入手を行うことも可能となっている[7]
マンガ系同人誌を取り巻く問題
同人誌と表現規制を取り巻く問題

コミックを中心とする同人誌での性描写に対し、青少年の健全な育成を主張する立場から表現規制を求める声は強く、深刻な問題となっている。

その一例として、「児童の保護」を目的として「東京都青少年の健全な育成に関する条例の改正案」で規定されている「非実在青少年」と、各道府県の「青少年保護育成条例」、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(通称児童ポルノ禁止法)の改正案」で導入を進めている「準児童ポルノに対する規制」を根拠に、同人誌を含むコミックの性表現を規制しようとする運動があり、可決されるだけでも規制の論拠として足りるものとなる。

さらに、前述の改正案が可決されて性表現の規制が厳しくなれば、今度は「コミックの規制に乗じ、暴力・犯罪などの表現も合わせて規制」しようとする動きもある[8]

特に2000年代の情勢を考慮して、2006年(平成18年)以降のコミックマーケットでは修正関連も含めて規則を強化している。また、2007年(平成19年)8月23日に起きたわいせつ図画頒布(刑法175条)容疑での同人作家の逮捕や、同年10月下旬に起きた同人誌即売会に対しての会場(東京都立産業貿易センター)の貸し出し拒否の波及などを受け、印刷業組合や各同人誌即売会の主催者などはガイドラインを制定したり、規則に沿った修正を確実にするよう同人作家へ促している。こうした刑法175条に基づく性器描写の修正については、不合理な規制であるから廃止すべきといった批判もあり[9]参議院議員山田太郎が刑法175条の見直しを政策課題として掲げている[10]

なお、日本(世界)最大の同人誌即売会であるコミックマーケットに固有の安全性や地域住民の理解・会場確保に関する問題についてはコミックマーケットの項を参照されたい。
二次創作同人誌と著作権問題
同人誌市場と著作権

現行の日本著作権法では、フランス知的保有権法典第122条の5第4項のいわゆる“パロディ条項”のようなパロディを正面から認める法理が存在せず[11]、原作の著作権者の許諾を得ることなく二次創作同人誌を不特定多数への販売することは、原則として著作権侵害となる。

現状としてはファン活動の一環といった扱いを受けた、版権を持つ企業などからの黙認というグレーゾーンで、二次創作同人誌の頒布は成り立っている[12]。一方で過去には「ときめきメモリアル」(コナミ)のように黙認と思われていたものの、実際には法的手段の行使に至ったケース(ときめきメモリアル・アダルトアニメ映画化事件)もある。

1999年(平成11年)にはポケモンのパロディ同人誌を発行した作者が著作権の侵害により逮捕されるポケモン同人誌事件が起こった[13]

2006年(平成18年)にはドラえもんの最終話を称する同人誌を販売していた男性が著作権侵害として警告されるドラえもん最終話同人誌問題が起こった[14]

なお、企業、同人作家問わず、パロディなどとは異なり、著作権法で容認されている批評などのための引用についても、著作権者の許可が必要という認識は強い。しかし、漫画の引用については小林よしのり上杉聰らの間で争われた「『脱ゴー宣』裁判」で絵の引用が争点となったが、2002年(平成14年)4月26日に「絵の引用は合法」とする最高裁判決が出ている(ただし、「レイアウトの改変は違法」とされた。詳細は脱ゴーマニズム宣言事件を参照)。この判決は、コミックマーケットがシンポジウムで取り上げるなど、同人誌にもある程度の影響を及ぼした。

また、2014年(平成26年)にはブロッコリーが無許可で同人グッズを製作・販売しているサークルに警告を出したり[15]ニトロプラスが二次創作についてのガイドラインを改定し頒布個数や売り上げに制限を盛り込んだ(後日見直され同人誌は範疇から外されている)ことで論議を呼んだ[16]。このような行動が起きた背景として、同人グッズを作っているサークルの中には、ファン活動の域を超えた営利目的のものが増えているという認識であり、一定の線引きが必要と言う意図がある[17]。こうした同人の範疇を超えたグッズの製作・頒布については、著作権者からは公式商品と混同される海賊版であると見なすことができるため、同人誌即売会主催者側からも注意喚起が出されており、特にコミックマーケットでは同年末の87のコミケットアピールにおいて、共同代表からの挨拶で注意がなされ、著作権に関する注意の記述についてもより明確に記載されている[18]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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