合板
[Wikipedia|▼Menu]
合板の構造

合板(ごうはん、: plywood プライウッド)は、薄くスライスした単板(ベニヤ)を多層、接着した木質材料である。
概説

英語の「plywood」(プライウッド)の「ply」(プライ)とは、層がいくつも重なった状態、つまり「積層」「多層」のことを指しており、「plywood」で「積層木材」を意味する。

日本では、かつては合板を「ベニヤ板」(ベニヤいた)又は「ベニア板」(ベニアいた)と呼ぶことが多かった。「veneer」(ベニヤ、ベニア)は薄くスライスした単板(突板)のことで、「ベニヤ板」は「ベニヤ」から成る「板」ということになるが、「ベニヤ板」のことを「ベニヤ」を略すこともあり、両者の区別は厳密ではなかった[1]

合板は、材木を薄くスライスしてできたベニヤ(単板)を1枚ずつ繊維方向に直交させながら接着して積層したものである[2]。一般に、反り(そり)を軽減するためにさまざまな工夫がされている(後述)。近年の合板では、最も一般的には、1?3mm程度のベニヤを多数枚、大抵は奇数枚、繊維方向が90°に、つまり直交するように、互い違いに重ねて接着(より詳細に言うと、大抵は 熱圧接着)されて多層構造になっている。稀に繊維方向が45度ずつ異なる層を重ねたものなどもある。
分類、種類
さまざまな分類法がある。国により分類法も異なる。材料となった樹木の種類による分類、材料となった単板の仕上がりの状態による分類、強度や剛性による分類、用途による分類、放出されるホルムアルデヒドの量による分類などがある。→#分類や規格など
歴史
遡れば古代エジプトから合板は用いられてはいた。ただし古代や中世ではたいした量ではなく、大量に製造され消費されるようになったのは近代以降である。1797年にはイギリスの技師によって合板製造装置の特許が申請された。→#歴史
反り軽減と 単板の枚数や層数
材木は湿度や温度の変化や経年変化などによって大きな反り(そり)が発生するようでは、一般に、とても使いづらいものとなる。よって合板の設計や製造では反りを軽減する工夫がされている。

合板を構成している層の数は、大抵は奇数である。(片面だけ装飾用の薄板や化粧紙など貼ったものは除く)

ひとつの単板を一種の「中心」として想定して、その両となりから、対称的に、繊維の向きを直交させつつ配置してゆく、というのが合板設計における大原則である。対称性を確保することで反り(そり)を軽減したり、寸法安定性を確保する。

では、突板を偶数用いて合板を作りたい場合はどうするかと言うと、たとえばJAS認定を取得している市販の構造用合板の中には、単板の枚数が4枚や6枚など偶数になっているものも一般的に市販されているが、この場合、中心の2枚の単板は、繊維の向きを同じ方向にしてあり、合板の厚み方向から見た繊維の向きの分布は、やはり中心対称である。

同方向に繊維が走っている中心部の単板2枚は、力学的には1層とカウントすべきであるから、このような合板は、単板の枚数は偶数でも、層数に着目するとやはり奇数である。なお「接着剤の塗布工程での都合を根拠に、単板の枚数を奇数にすれば単板の両面にいっぺんに接着剤を塗布することで生産工程が簡略化できるから、単板の枚数を奇数にしているのだ」といった主旨の説明がなされることもあるが、これは原因と結果を取り違えた不適切な解説であり、正しくない。合板製造工程における接着剤塗布の方法には複数あり、片面に塗布する工程を採用している工場もある。この場合、上記のような合理化は成り立たないし、現実にも、4枚や6枚、8枚など、偶数枚の単板を用いてつくられたJAS認定の構造用合板(中心の2枚は繊維を同じ向きにした)が、市場で普通に販売されている。

なお、繊維の向きを直交だけでなく45度にした層を加えた「斜行型合板」もその性能の高さは古くから研究されており、量産化を目指しつつ試作したものにおいても、従来の合板よりせん断性能に優れた結果が報告されている[3]。異方性のある木材をよりよく使いこなす上で、このような研究は有望な技術をもたらすと期待されているが、斜め向きの単板を安価に量産することにまだ難しい部分があり、さらなる研究が求められている。
歴史

合板は数千年前から作られており、紀元前3500年前の古代エジプトに、単板を互い違いに重ね合わせた合板から作られた製品が産出されている。元々は良質な木材の不足のために、合板は作られた。品質の劣る木の表面に、薄くスライスした木材を接着剤で貼り付けた。構造的な利点は偶然のものだった。合板を発明したこの方法は、歴史の中で繰り返された。例えば、アイルランドのシェリダンなどの家具メーカーの多くが合板を使用した。

1797年にはen:Samuel Bentham サミュエル・ベンサム(イギリス海軍技術者)が、合板製造のための装置についての特許の申請をした。

1837年頃にはサンクトペテルブルクで機械の製造を手がけていた実業家イマニュエル・ノーベル(アルフレッド・ノーベルの父)によって、針葉樹の丸太からロータリーレース(丸太をかつら剥きする機械)によって得られた単板を使った合板の発明がされた[4]。イマニュエルは発明で財を築いたため、アルフレッドに複数の家庭教師をつけ、化学をさらに学ぶためにパリやアメリカへの留学する資金ともなった。

19世紀中盤に最初のロータリーレース機械がアメリカ合衆国に設置されて以降、合板は安価な建築資材として世界中に広まっていった。

日本では、1907年に浅野吉次郎が独自にロータリーレースの機械を開発[5]。拠点であった中京地方を中心として、合板機械の製造や合板の生産が非常に盛んになった。特に、名古屋堀川沿いには、名古屋港からの木材を加工する大小の合板工場が林立していた。1950年代に尿素系の接着剤が普及するまでは、剥離の発生など粗悪なイメージを払拭することができなかった。
分類や規格など

さまざまな分類法がある。材料となった樹木の種類による分類、材料となった単板の仕上がりの状態による分類、強度や剛性による分類、用途による分類、放出されるホルムアルデヒドの量による分類などである。

なお合板は、一般に水にかなり弱いが、で使用するために特別に耐水性を強めた合板を「Marine Plywood マリン合板」と言う。高価だが船舶の内装のほか、船の種類によっては外装に使われることもある[6]
米国
合板の材料のベニヤ(単板)の加工の質によるグレード

米国では、柔らかい木材の合板(≒建築用合板)の単板に着目して、「A」「B」「C」「D]の4つのグレード(等級)に分類されている。(まれに「C-plugged」という5つ目の等級も追加されることがある[7]。またそれらの等級の上に(広く市販されているわけではない、特注品として)「N」という等級も一応ある。

Nグレードは、「自然な仕上がり」を求めた特注品。心材や辺材も選択できる。特注なので規格などには制約されない。また修復も含みうる。

Aグレードは、滑らかで塗装可能。Aグレードは、(「Neatly made reapair permissible(丁寧な修復は許容範囲)」と規定されており)製造業者の中にはかなりうまく修復しているところもあるが、大抵の業者のものでは(多かれ少なかれ)修復跡やノット(材木の「目」など)を含む[7]

Bグレードは、いくつかの修復が施された固い表面。通常は、丸いパッチや木材でのフィラー(充填)も含む。1インチ以下の硬いノット(目)を含むが、木材の塊がない。小さな分割も多少含む[7]

Cグレードは、1から1/2インチ程度のサイズの硬いノット(目)があり、1インチまでのノットホール()もある。割れ目や変色も多少含む[7]

Dグレードは、1/2インチから最大で2インチほどの大きさのノットホール(穴)がある。多少の分割。(そのかわり)一般に修復は無い[7]

強度や剛性に焦点を合わせた合板の分類

「Classification of Softwood Plywood Rates Species for Strength and Stiffness」と言い、「GROUP 1」から「GROUP 5」までの5つのグループに分類されており、それぞれのグループごとに、含まれる樹木の種類と産地の組み合わせがリスト化されている。

たとえば「GROUP 1」のリストの冒頭は以下のようになっている。

Apitong (アピトン

Beech (ブナ),

American


Birch バーチカバ

Sweet

Yellow


Douglas fir ダグラスファー(ベイマツ)

(...)たとえば「GROUP 1」に含まれるのは、ブナではAmerican Beech(アメリカ・ブナ)のみ、カバノキではSweet BirchとYellow Birchのみ、ということになる。
日本

日本農林規格(JAS)では、「ロータリーレース又はスライサーにより切削した単板3枚以上を主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして、接着したもの」を合板としており、建築物の構造用に用いられる構造用合板コンクリート型枠に用いられるコンクリート型枠用合板(コンクリートパネル、コンパネ)、特に用途を定めない普通合板、構造用合板の表面等に美観を目的とする単板を貼った化粧ばり構造用合板、普通合板の表面等に美観を目的とする単板を貼った天然木化粧合板、普通合板の表面等にプリント、塗装等の加工をした特殊加工化粧合板の6種類を定めている[8]。かつては普通合板について、「難燃処理」や「防炎処理」が定められていたが、2014年の改正で廃止された[9]

上述の通り、「コンパネ」はあくまでコンクリート型枠用合板のみのことであり、全ての合板を「コンパネ」と総称するのは間違いである(カテゴリ錯誤)。ホームセンターなどでも売られている「シナ合板(シナベニヤ)」は、天然木化粧合板のうちでも表面にシナノキを用いたものである。

構造用合板には強度等級があり、住宅等の構造上重要な部分には、必要な強度の構造用合板を用いなければならない。日本農林規格では、合板中の接着剤から放出されるホルムアルデヒドの量についての性能区分もあり、合板750cm2から24時間に放散するホルムアルデヒドの量が平均0.3mg/L以下であるF☆☆☆☆から、5.0mg/LのF☆の4段階の区分がある。現在では大半の製品がF☆☆☆☆を取得しているが、製造にホルムアルデヒドを発生する接着剤を使っていないわけではなく、その遊離を抑制するキャッチャー剤を配合しているだけで、依然として多くの合板でホルムアルデヒドを原料とする接着剤が使われている。
韓国

国立山林科学院告示第2015-8号「木材製品の規格と品質基準」では普通合板、コンクリート型枠用合板、構造用合板、表面加工合板に分けられる[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:38 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef