可微分多様体
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「滑らかな曲線」はこの項目へ転送されています。代数幾何学における同値な概念については「代数多様体の特異点」をご覧ください。
地球の座標近傍の微分可能でないアトラス。アトラスが微分可能でないとき微積分の結果は座標近傍間で両立可能とは限らない。北回帰線は真ん中の座標近傍では滑らかな曲線であるが、一方左の座標近傍では鋭い角を持つ。可微分多様体の概念は座標近傍の間の変換をする関数が微分可能であることを要求することによって多様体の概念を洗練する。

数学において、可微分多様体(かびぶんたようたい、: differentiable manifold)、あるいは微分可能多様体(びぶんかのうたようたい)は、局所的に十分線型空間に似ており微積分ができるような多様体である。任意の多様体は、チャート(座標近傍、局所座標)の集まり、アトラス(座標近傍系、局所座標系)、によって記述することができる。各座標近傍は微積分の通常のルールが適用する線型空間の中にあるから、各々のチャートの中で考えるときには微積分学のアイデアを適用できる。チャートが適切に両立可能であれば(すなわち1つのチャートから別のチャートへの変換が微分可能であれば)、1つのチャートでなされた計算は任意の他の微分可能なチャートにおいても有効である。

フォーマルに言えば、可微分多様体は大域的に定義された可微分構造(英語版)を持つ位相多様体である。任意の位相多様体にはアトラスの同相写像と線型空間上の標準的な微分構造を用いて局所的に微分構造を与えることができる。同相写像によって誘導された局所座標系上の大域的な微分構造を誘導するためには、アトラスのチャートの共通部分上での合成が対応する線型空間上の微分可能な関数でなければならない。言い換えると、チャートの定義域が重なっているところでは、各チャートによって定義された座標はアトラスのすべてのチャートによって定義された座標に関して微分可能であることが要求される。様々なチャートによって定義された座標を互いに結びつける写像を変換関数 (transition map/遷移写像/座標変換) と呼ぶ。

微分可能性は文脈によって連続微分可能、k 回微分可能、滑らか正則といった異なる意味を持つ。さらに、抽象的な空間にそのような可微分構造を誘導できることによって微分可能性の定義を大域的な座標系なしの空間に拡張することができる。微分構造によって大域的に微分可能な接空間、微分可能な関数、微分可能なテンソル場ベクトル場を定義することができる。可微分多様体は物理においても非常に重要である。特別な種類の可微分多様体は古典力学一般相対論ヤン・ミルズ理論といった物理理論の基礎をなす。可微分多様体に対して微積分を展開することが可能である。これによってexterior calculus(外微分法/外微分学)のような数学的機構が導かれる。可微分多様体上の微積分の研究は微分幾何学と呼ばれる。
歴史詳細は「位相多様体と代数多様体の歴史(英語版)」を参照

はっきりした分野としての微分幾何学の出現は一般にカール・フリードリヒ・ガウスベルンハルト・リーマンによるものとされている。リーマンはゲッティンゲン大学の有名な教授就任講演[1] で初めて多様体を記述した。彼は多様体のアイデアを与えられた対象を新しい方向に変える直観的な過程によって動機付け、続くフォーマルな発展において座標系とチャートの役割を先見の明を持って記述した:Having constructed the notion of a manifoldness of n dimensions, and found that its true character consists in the property that the determination of position in it may be reduced to n determinations of magnitude, ...? B. Riemann

ジェームズ・クラーク・マクスウェル[2] のような物理学者と数学者グレゴリオ・リッチ=クルバストロ (Gregorio Ricci-Curbastro) とトゥーリオ・レヴィ=チヴィタ (Tullio Levi-Civita)[3] の仕事はテンソル解析の発展と内在的な幾何学的性質を座標変換で不変な性質と同一視する共変性(en:general covariance)の概念に導いた。これらのアイデアはアインシュタイン一般相対性理論とその根本にある等価原理に重要な応用を見つけた。2次元多様体の現代的な定義はヘルマン・ワイル (Hermann Weyl) によってリーマン面に関する 1913 年の本において与えられた[4]アトラスのことばによる多様体の広く受け入れられている一般的な定義はハスラー・ホイットニーによる[5]
定義

位相多様体とは、チャートと呼ばれる同相写像の集まりアトラス によって線型空間に局所的に同相な第二可算ハウスドルフ空間である。1 つのチャートの、別のチャートの逆写像との合成は、変換関数と呼ばれる関数であり、線型空間の開部分集合から線型空間の別の開部分集合の上への同相写像を定義する。これによって「空間の断片を貼り合わせて多様体を作る」という概念が定義される――作られた多様体はまたどのように貼り合わせられたかのデータも持っている。しかしながら、異なるアトラス(貼り合わせ)から「同じ」多様体が作られるかもしれない。多様体は好みのアトラスで来ない。そして、したがって、位相多様体はアトラスの同値類とともに上のような空間と定義される。アトラスの同値性は以下で定義する。

変換関数にどれだけの微分可能性を要求するかに従って可微分多様体の異なるタイプがある。以下はいくつかの一般的な例である。

可微分多様体 (differentiable manifold) とは、変換関数がすべて微分可能なアトラスの同値類を伴った位相多様体である。より広いことばでは、Ck 級多様体 (Ck-manifold) は変換関数がすべて k 回連続微分可能なアトラスを持つ位相多様体である。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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