古典語
[Wikipedia|▼Menu]

古典言語(こてんげんご)とは、古典文学に用いられた言語である。この場合の「古典」とは、年代として古く、亜流ではなく独自の源を持つ伝統を形成し、質量ともに充実したまとまりを擁するものを意味する (カリフォルニア大学バークレー校言語学者George L. Hartによる)[1]

時代を経るにつれ口語が多様化し古典の文語から変化していった結果として、こうした古典言語は母語話者が存在しないか (w:Language deathを参照) 、高度のダイグロシアを伴うことが多くなっている。
古典学における古典言語

西洋古典学における最狭義、すなわちそれ本来のヨーロッパ中心主義コンテクストにおいては、「古典言語 ("the Classical Languages")」とは、西洋文明の基盤を成すところの古典古代ギリシア語ラテン語の文語である。

一方でエドワード・サピアは ⇒Language (1921) において、全世界的な文化における重要性に鑑み、このリストに中国語アラビア語サンスクリットを加えている。

教育を受けた日本人にとって、内容を伴う文章の作成には漢文由来の要素を用いることがほぼ不可欠である。シャム語(タイ語)・ビルマ語・カンボジア語には明確にサンスクリット、そして何世紀も前に仏教とともに移入されたパーリ語の名残が認められる。そして学校におけるラテン語・ギリシア語教育の是非を議論する際でも、その議論はローマやアテネから伝わった語彙に裏打ちされている。これらの事実は、古代中国文化、仏教、そして古の地中海文明が世界史にいかに重要な意味を有していたかを示唆している。文化の媒体として圧倒的な重要性をもつに至ったのは中国語(漢文)、サンスクリット、アラビア語、ギリシア語、ラテン語のただ五つの言語なのである。これらと比較すると、ヘブライ語やフランス語といった文化的に重要な言語でさえその地位は副次的なものとなる。

この観点では、古典言語は長期にわたり幅広い影響を持つ言語であり、その影響は、もはや単なる原言語の日常語化とは言えないまでに変化したものにも及ぶ。またある言語で案出された新語が別の言語をルーツにしているときは (例えば多くのヨーロッパの言語において telephone のような新語はギリシャ語やラテン語を下敷きにしている) 、この別の言語が古典言語であるという徴候となる。

これに対し、現在も用いられている言語のうちで広範な影響力を持つものは「世界言語 (w:world language) 」と呼ばれている。
一般的用法

以下に列挙する言語は通例「古典」の段階にあると捉えられているものである。このような段階は時間的限界があり、それが回顧的に文学的「黄金時代」と考えられているようになるならば、「古典的である」とみなされる。したがって、古典ギリシア語は紀元前5世紀から4世紀にかけてのアテナイの言語であり、それ自体はギリシア語全体からみたさまざまな変種の、単なるちいさな部分集合に過ぎない。「古典」期は通例、「古代」の後に続く文学の開花の時期と対応する (たとえば古ラテン語の後に続く古典ラテン語原シュメール語の後に続く古シュメール語、ヴェーダ語の後に続くサンスクリット、古代ペルシア語の後に続く中世ペルシア語)。これはある程度用語にかかわる問題であり、たとえば上古中国語古典中国語に先行するものというよりは古典中国語にふくまれるものとして捉えられる。いくつかの事例では、アラビア語タミル語のように「古典」の段階が最古の文語の資料と一致する場合もある[2]
古代オリエント

古シュメール語シュメールの文語約紀元前26世紀 - 紀元前23世紀
中エジプト語古代エジプトの文語約紀元前20世紀 - 4世紀
古バビロニア語アッカドの言語約紀元前20世紀?紀元前16世紀後の文芸作品の模範となった

古典古代

古典ヘブライ語タナハの言語、特に「預言者」約紀元前7世紀 - 紀元前6世紀
古典中国語の文語に基づく約紀元前5世紀
古典ギリシア語アッティカ方言紀元前5世紀
サンスクリットパーニニによって定義された文法約紀元前4世紀 [3]
古カンナダ語アショーカ王朝の言語4世紀.[4]
古典ラテン語文語紀元前1世紀
古典タミル語サンガム文学紀元前1世紀?4世紀w:Tolk?ppiyamによる[5]
古典マンダ語マンダ教におけるアラム語の文語1世紀
シリア語シリア教会におけるアラム語の文語3世紀 - 5世紀
中世ペルシア語サーサーン朝の宮廷言語3世紀?7世紀
古典アルメニア語証明されている最古のアルメニア語5世紀文語としては18世紀まで


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:19 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef