受容器
[Wikipedia|▼Menu]

感覚ニューロン(かんかくニューロン、: sensory neuron)は、求心性ニューロン(きゅうしんせいニューロン、: afferent neuron)とも呼ばれ、受容体を介して特定の種類の刺激(英語版)を活動電位または段階的電位(英語版)に変換する神経系ニューロン(神経細胞)である[1]

このプロセスは、感覚伝達(英語版)(sensory transduction)と呼ばれる。感覚ニューロンの細胞体は、脊髄背根神経節にある[2]

感覚情報は、感覚神経の求心性神経線維(英語版)を通り、脊髄を経由してへと到達する。それらの刺激は、光や音など体外を感知するような外受容器から来る場合と、血圧体位感覚に反応するような内受容器から来る場合とがある。
種類と機能4種類の感覚ニューロン

感覚ニューロンの種類によって、異なる種類の刺激に反応する異なる感覚受容器(sensory receptors)を持っている。少なくとも、6つの外部感覚受容器と2つの内部感覚受容器が知られている。
外受容器「en:Perception#Types_of_perception」も参照

体外からの刺激に反応する外部受容器を外受容器(exteroreceptors)と呼ぶ[3]。外受容器には、嗅覚受容体(匂い)、味覚受容体(英語版)、光受容器(英語版)(視覚)、有毛細胞(英語版)(音)、温度受容器(英語版)(熱さ寒さ)、そしてさまざまな機械受容器(伸縮、歪み)がある。
嗅覚

嗅覚に関与する感覚ニューロンは、嗅覚受容神経と呼ばれている。これらのニューロンには、嗅覚受容体と呼ばれる受容体があって、空気中の匂い分子によって活性化される。空気中の分子は、肥大した繊毛微絨毛によって検出される[4]。これらの感覚ニューロンは活動電位を発生させる。その軸索は嗅神経を形成し、大脳皮質のニューロン(嗅球)に直接接合する。すなわち、他の感覚系と同じルートを使わず、脳幹や視床を迂回している。嗅球のニューロンは、感覚神経の入力を直接受けて、嗅覚系の他の部分や大脳辺縁系の多くの部分と結合している。
味覚

味蕾にある味覚受容器(英語版)は、嗅覚受容体と同様に、食物中の化学物質と相互作用して活動電位を発生させる。
視覚

光受容細胞(英語版)(視細胞)は、光(電磁放射)を電気信号に変換する光伝達(英語版)(phototransduction)という機能を持っている。この信号は、網膜に存在する別種のニューロンとの相互作用によって精緻化され、制御される。網膜内には5種類の基本的なニューロンがあり、それぞれ光受容細胞、双極細胞(英語版)、神経節細胞、水平細胞(英語版)、アマクリン細胞(英語版)という。網膜の基本的な回路には、光受容細胞(桿体または錐体のいずれか)、双極細胞、神経節細胞という3つのニューロンからなる連鎖が組み込まれている。最初の活動電位は、網膜神経節細胞で発生する。この経路は、視覚情報を脳に伝達する最も直接的な方法である。光受容器には、主に3つの種類がある。錐体に大きく反応する光受容器である。ヒトの場合、3種類の錐体が、短波長(青)、中波長(緑)、長波長(黄/赤)の一次反応に対応する[5]杆体は、光の強弱に非常に敏感な光受容器で、薄暗い場所での視覚を可能にする。杆体と錐体の集中度や比率は、動物が昼行性夜行性かに強く関連している。杆体と錐体の比率は、ヒトの場合で約20:1であるのに対し、モリフクロウのような夜行性動物では1000:1近くになる[5]網膜神経節細胞は、交感神経反応に関与している。網膜に存在する約130万個の神経節細胞のうち、1-2%が感光性を持つと考えられている[6]

視覚に関連する感覚ニューロンの問題や衰えは、次のような障害を引き起こす。

黄斑変性症 - 網膜と脈絡膜との間に細胞の残骸や血管が蓄積し、そこに存在するニューロンの複雑な相互作用が阻害あるいは破壊されることによる中心視野の変性[7]

緑内障 - 網膜神経節細胞の障害で、視力低下から失明を引き起こす[8]

糖尿病性網膜症 - 糖尿病による血糖コントロールの低下により、網膜の細い血管が損傷する[9]

聴覚

聴覚系 (en:英語版) は、空気分子が振動することで発生する圧力波やを、脳が解釈できる信号に変換する役割を担う。

この機械電気変換は、耳の中にある有毛細胞(英語版)を介して行われる。その動きに応じて、有毛細胞は過分極または脱分極を起こすことができる。突出した不動毛(英語版)にその動きが伝わると、Na+カチオンチャネルが開いてNa+が細胞内に流入し、その結果起こる脱分極によりCa++チャネルが開き、その神経伝達物質が求心性聴神経に放出される。有毛細胞には、内有毛細胞と外有毛細胞の2種類がある。内有毛細胞は感覚受容器である[10]

聴覚系に関連する感覚ニューロンの問題は、次のような障害を引き起こす。

聴覚情報処理障害 - 脳内の聴覚情報が異常な状態で処理される。聴覚情報処理障害の患者は、通常、情報を得ることはできるものの、脳がそれを適切に処理できずに聴覚障害につながる[11]

聴覚言語失認症(英語版) - 言葉の理解力は失われるが、聴力、会話、読み書きの能力は維持される。これは、側頭葉後上部[訳語疑問点]の損傷によって引き起こされ、やはり脳が聴覚入力を正しく処理することができなくなる[12]

温覚

温度受容器(英語版)は、温度の変化に反応する感覚受容器である。この受容器が機能する機構は不明であるが、最近の発見により、哺乳類には少なくとも2種類の温度受容器があることが明らかになった[13]球状小体は皮膚受容体(英語版)の一つで冷感感受性の受容体である。もう一つは、温感感受性受容体である。
機械受容器詳細は「機械受容器」および「機械感覚(英語版)」を参照

機械受容器は、圧力歪みなどの機械的な力に反応する感覚受容器である[14]

機械受容器と呼ばれる特殊な感覚受容器細胞は、しばしば求心性線維を被包し、求心性線維をさまざまな種類の体性刺激に適合させるのを助ける。機械受容器はまた、求心性線維の活動電位発生の閾値を下げ、感覚刺激の存在下での発火を促進する[15]

機械受容器の中には、膜が物理的に引き伸ばされたときに活動電位を発生させるものがある。

固有受容器(自己受容器とも)は、機械受容器のもう一つの種類であり、文字通り「自己のための受容器」を意味する。これらの受容器は手足やその他の身体部分に関する空間情報を提供する[16]

侵害受容器(英語版)は、痛みと温度変化を処理する責任を担っている。唐辛子を食べた後に経験する灼熱痛や刺激感(主成分であるカプサイシンによる)、メントールやイシリンなどの化学物質を摂取した後の冷感、そして一般的な痛みの感覚は、すべてこれらのニューロンと受容体の働きによるものである[17]

機械受容器に問題は、次のような障害を引き起こす。

神経因性疼痛(神経障害性疼痛) - 感覚神経の損傷に起因する激しい痛みの状態[17]

痛覚過敏 - 痛みに対する感受性の増加。知覚的なイオンチャネルであるTRPM8(英語版)は、通常23-26度の温度に反応し、メントールやイシリンに関連する冷感を与える[17]

幻肢症候群 -  存在しない手足に痛みや動きを感じる感覚系障害[18]

内受容器

体内の変化に反応する内部受容器を内受容器(interoceptor)と呼ぶ[3]
血液

大動脈小体(英語版)と頚動脈小体には、末梢性化学受容器(英語版)と呼ばれるグロムス細胞(英語版)の集団があり、酸素濃度など血液中の化学的性質の変化を感知する[19]。これらは、多くの異なる刺激に反応するポリモーダル(英語版)な受容器である。
侵害受容器

侵害受容器は、損傷を与える可能性のある刺激に反応し、脊髄と脳へ信号を送る。この過程は侵害受容(英語版)(nociception)と呼ばれ、通常、痛みの感覚を認識させる[20][21]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef