取消し
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この項目では、法律用語について記述しています。「取消し」の語義については、ウィクショナリーの「とりけし」の項目をご覧ください。

取消し(とりけし)とは、ある行為についてそのなされた過程に問題があることを理由としてそれを遡及的に無効とする旨の意思表示。取消しをすることができる権利を取消権、取消権を有する者を取消権者と呼ぶ。ある法律行為を法律で規定された者(取消権者)の意思表示によって、行為の当時にさかのぼってなかったことにするものであり、取消権は形成権である。
概説
無効との関係

取消しと無効を比較すると、無効な法律行為は法律行為の外形はあるものの、そこから法律的な効果が生じないものをいう[1]。取り消しうる法律行為は法律的な効果は有効だが、取消権をもつ者が取消しの意思表示をすると法律行為の時に遡って無効となる[1]

ローマ法では無効は裁判で宣言すれば足りると考えられていた[2]。そのためローマ法やフランス法には取消しの概念が生じず、誰からでも主張できる絶対的無効と相手方や第三者からは主張できない相対的無効が存在した[2]。一方、ドイツでは形成権の概念が発見され、絶対的無効は無効、相対的無効は取消しに整理された[2]。日本では明治時代の立法過誤により錯誤を無効と規定したため無効と取消しを区別する立法でありながら相対的無効も存在する状態になっていたが、2017年の民法改正(2020年4月施行予定)で錯誤が取消しに改正されたことで解消された(ただし意思無能力無効については論点が残されている)[2]

特定の法律行為を無効にするか取り消すことができるとするかは立法政策の問題である[3]。通常、無効ではなく取り消すことができる場合とされるのは、特定の人を保護するための規定に違反した行為で、その者の意思に従って効力を決すればよい場合である[3]

一個の法律行為が無効の要件も取消しの要件も満たすときは、原則としてどちらを主張することもできる[3]
撤回との区別

取消しの場合はその意思表示があると法律行為の時に遡って無効となる[1]。これに対して効力消滅の効果が行為の時にさかのぼらない場合を「撤回」と呼ぶ。日本の民法では条文上は「取消」と記述されているにもかかわらず、「撤回」と解釈される場合があったが、その点を明確にするため2004年(平成16年)の民法現代語化の際に一定の条文につき「取消」の文言が「撤回」に改められた(民法第521条等)。
日本法における取消し.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。


民法についてこの節では、条数のみ記載する。

取消しの意義

取消しの対象となるのは民法で取り消すことができるものと定められた法律行為に限られ、事実行為(放任行為)や、不法行為は取り消すことができない。民法の規定には法律行為の取消しについて定めたものも多いが、それぞれの取消し制度が意図する保護の対象によって取り消すことのできる行為の範囲や取消権者の範囲などの要件が異なる。

民法120条以下に定められる「取消し」は制限行為能力者瑕疵ある意思表示をした者の取引の安全を保護するための制度である[4]。「取り消すことのできる行為(取消しうべき行為ともいう)」は、取消権行使までは有効であるが、取消権が行使されると、行為時に遡って無効と同様に扱われる。取り消すことのできる行為の相手方は、いつ取り消されるか分からない非常に不安定な状態に置かれるため、民法は、このような状態を脱する手段として、同意、追認、法定追認、短期消滅時効等の規定を用意し、相手方の保護を図っている。

先述のように民法120条以下の適用を受ける取消しは、二つの種類に分けられる。
制限行為能力者のした法律行為の取消し

瑕疵ある意思表示の取消し

両者は、「取消権者」と「相手方保護」及び「取消しの効果」に違いがある。制限行為能力者のした意思表示の取消しは、瑕疵ある意思表示の取消しより更に保護を厚くしたものといえる。

制限行為能力者の場合は事理弁識能力が低いほど取消しの対象となる行為は広範であるが、ノーマライゼーションの観点から日常行為については単独で可能としたため、取消し不可となっている。また、瑕疵ある意思表示に関しては、帰責性の低い強迫による意思表示の取消しの方が、詐欺による意思表示の取消しよりも取り消すことができる範囲が広範である。

以下では民法120条以下の適用を受ける一般的取消しを中心に解説する。
取消しの態様
一般的取消しと特殊的取消し

民法には120条以下の規定のほかに契約法や親族相続法の分野で以下に掲げるような取消しの制度も設けられており、前者を一般的取消しと呼ぶのに対し、後者は特殊的取消しという[5]。制度趣旨が異なるので120条?126条の適用はなく各条の定めるところによる(養子縁組の取消しにつき大連判大12・7・7民集2巻438頁)。
詐害行為取消権(424条)

書面によらない贈与の取消し(550条)

婚姻の取消し(743条)

夫婦間契約の取消し(754条)

縁組の取消し(803条)

絶対的取消しと相対的取消し

取消しの遡及的無効を第三者に対抗しうる場合を絶対的取消し、制限される場合を相対的取消しという[6]
裁判外の取消しと裁判上の取消し

裁判外の意思表示により効果を生じる場合を裁判外の取消し、裁判所への訴えの提起という形式をとる取消しを裁判上の取消しという[6]
法律行為の取消しと審判・宣告の取り消し

民法には法律行為の取消しのほか、審判・宣告の取消しの制度もある[6]
後見開始の審判の取消し(10条)

保佐開始の審判の取消し(14条)

補助開始の審判の取消し(18条)

失踪宣告の取消し(32条)

取消権者

前述のとおり、取消しは制限行為能力者や瑕疵ある意思表示をした者を保護するための制度であるから、基本的に、表意者以外の者が取消しを主張することは制度趣旨にそぐわないといえる。そこで、民法は「取消権者」という概念を定め、「取消し」を主張できる者を次のとおりに制限している。

取消権者項目制限行為能力者の意思表示の場合瑕疵ある意思表示の場合
1.本人 制限行為能力者本人(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)瑕疵ある意思表示をした者(
錯誤詐欺強迫を受けて意思表示をした者)本人
2.代理人制限行為能力者の法定代理人・任意代理人・826条の特別代理人瑕疵ある意思表示をした者の法定代理人・任意代理人・826条の特別代理人
3.承継人制限行為能力者の包括承継人・特定承継人瑕疵ある意思表示をした者の包括承継人・特定承継人
4.同意権者保佐人や家裁による同意権付与の審判を受けた補助人×


制限行為能力者本人

制限行為能力者の取消しにおいては制限行為能力者本人も取消権者とされており(120条1項)、制限行為能力者本人が単独で取り消す場合にも取消しは完全に効力を生じるのであって、取り消すことのできる取消しとなるわけではない[4]

2017年の民法改正で「他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。」というカッコ書が追加された。


同意権者

制限行為能力者の取消しの場合は同意権者も取消権者となる。同意権者とは、保佐人家庭裁判所による同意権付与の審判を受けた補助人など、制限行為能力者の保護監督者の中でも当然に代理権を有しない者のことを指す。


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