取り替え子
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この項目では、ヨーロッパの伝承について説明しています。大江健三郎の小説については「取り替え子 (小説)」をご覧ください。
トロールとさらわれた人間の子。ヨン・バウエル画、1913年

取り替え子 (とりかえこ、英語: changeling)とは、ヨーロッパの伝承で、人間の子どもがひそかに連れ去られたとき、その子のかわりに置き去りにされるフェアリーエルフトロールなどの子のことを指す。時には連れ去られた子どものことも指す。またストック(stock)あるいはフェッチ(fetch「そっくりさん」)と呼ばれる、魔法をかけられた木のかけらが残され、それはたちまち弱って死んでしまうこともあったと言う。このようなことをする動機は、人間の子を召使いにしたい、人間の子を可愛がりたいという望み、また悪意であるとされた[1]
取り替え子の検証

取り替え子は、彼らのしなびた外観、旺盛な食欲、手のつけられないかんしゃく、歩行できないこと、不愉快な性格によって識別された[2]。中世の年代記は、フェアリーについての民俗伝承の断片として知られる最古のものの一つを、この例として記載している[3]

一部の伝承によると、取り替え子は人間の子供より知能がはるかに優れていたことから、見破ることは可能であった。ある時取り替え子であることが見破られると、その子の両親が子供を連れ戻しにやってきた。グリム兄弟の民話の一つでは、我が子が取り替え子にすり替えられたのではと疑った女が、木の実の殻の中でビールを醸し始めた。取り替え子はうなった。『おいらは森の中のオークの木と同じくらいの年だけれど、木の実の殻の中でビールを醸すなんて見たことがない。』そういうと、彼はたちまち消え失せた[1]
取り替え子の目的

一部の人々は、トロールは洗礼前の幼い子供をさらうと信じていた。また、人間の中でも美しい子供と若い女性、特に金髪の持ち主は、フェアリーに好まれるとされた[4]

スコットランドの民俗伝承では、子供は地獄へ十分の一税として献上される妖精の子の身代わりに取り替えられたという[5]。これは、『タム・リン』というバラッドからよく知られている[6]

一部の民俗学者はフェアリーが多神教時代のヨーロッパの住人で、侵略を受けて地下へ隠れたと信じている。それによると、実際に取り替え子を引き起こした人々は、自分たちのひ弱な子供の代わりに、侵略者である人間の健康な子と取り替えたとの事[7]
中世民俗伝承の取り替え子
スカンディナヴィア

スカンディナヴィア民俗伝承によると妖精は鋼を恐れるので、スカンディナヴィア諸国の親たちはしばしば洗礼前の子供の揺りかごの上に一対のハサミやナイフをそっとしのばせていた。もしそのような手だてにもかかわらず子供がさらわれてしまった場合、両親が取り替え子を冷酷に扱うことで子供を取り返すことが出来ると信じられており、そのために、で打ったり熱いオーブンの中に入れたりするような方法が取られた。少なくとも一つの例では、ある女がオーヴンの中で実子を焼死させてしまい裁判沙汰になった[8]ヨン・バウエルによる絵。人間の少女を育てる2匹のトロール

スウェーデンでの取り替え子の物語には[9]、トロールの子供が人間の農場で育ち、人間の子供がトロールの元で育ったというものがある。誰もが人間の母親に、トロールにもう一度子供を取り返させるために、取り替え子に辛く当たるよう忠告した。しかし女は、人間の子としては適応出来ないものの罪のないトロールの子をそのように扱う事を拒み、我が子であるかのように扱った。結局、彼女の夫はこれ以上トロールの子供を養うことはできないと、妻と別れることにした。妻は取り乱したが、たとえトロールであっても無実の子を捨てることなどできなかったため、夫が去ることを許した。夫が遠く離れた森の中を歩いていくと、実の息子と出会い、彼からトロールから解放されたと聞かされた。トロールが人間にひどい扱いをされそうになる度に、彼のトロールの母は人間がトロールを扱うように彼を扱おうとした。しかし彼の母親が最も愛しい夫を犠牲にしたとき、トロールの母親は、彼らの支配力が人間の母親に及ばず、子を解放せざるをえないことを悟ったのである。

別のスウェーデンの妖精話がある[10]。人間のお姫さまが誘拐され、トロールの母親の願いに反してトロールの娘と取り替えられた。取り替え子は新たな両親のもとで育ち、どちらも若く美しい女性になったが、どちらの親も馴染ませるのに大変苦労をした。人間の少女はトロールの王子で未来の花婿を忌み嫌った。またトロールの少女は、自分の生活と退屈な未来の花婿に飽き飽きしていた。偶然の巡り合わせで、少女たちは森へ迷い込み、互いに見知ることなくすれ違って、互いの生活を覆すこととなった。お姫さまが城へやってくると、王妃は一目で娘だとわかり、トロールの少女は自分がそうするように大声で吼えるトロールの女を見つけた。トロールの少女は、トロール女が今まで見たどんな人間よりもおもしろいと思い飛び出し、トロールの母親は実の娘の帰還が真実とわかって喜んだ。少女はどちらも同じ日に結婚式を挙げた。
ウェールズ

ウェールズでは、取り替え子(plentyn newid)は初めは取り替えられた者に似ているが、成長するにつれて病的な顔つきになり、不格好で気難しく、叫んだり噛み付いたりなどして、次第に容姿や振る舞いが醜くなっていくとされた。取り替え子は、同じ年頃の人間の子供よりも決して賢くはなく、むしろ子供っぽい知恵とずるさによって正体を見破られてしまう。

取り替え子の判別をする一般的なやり方として、家族の食事を卵の殻の中で調理するというものがある。子供は『おいらはカシの木の前から木の実を見てきたけど、こんなことをするのをみたことがない。』と叫び、消えてしまい、そこには取り替えられた元の人間の子供がいるだけなのである。もう一つの方法としては、この見分け方を行った後に、子供をシャベルの上に乗せ、火の上にかざして熱いオーブンの中に置いたり、またはジギタリスを煎じた風呂に入れるなどの虐待をする必要がある[11]
アイルランド

アイルランドでは、赤ん坊をうらやましそうに見ると妖精の力が赤ん坊に及び、赤ん坊が危険にさらされるために危ないとされていた[12]。過度に賞賛されたり、うらやまれたりする者は、祝福を受けていても危険だった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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