双極性障害
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双極性障害
概要
診療科精神医学, 臨床心理学
分類および外部参照情報
ICD-10F31
ICD-9-CM296.80
OMIM125480 309200
DiseasesDB7812
MedlinePlus001528
eMedicinemed/229
Patient UK双極性障害
MeSHD001714
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双極性障害(そうきょくせいしょうがい、: bipolar disorder、ドイツ語: bipolare Storung)は、通常の気分をはさんで躁病(そうびょう)と抑うつの病相(エピソード)を呈する精神障害である[1][2][3][4]ICD-10と以前のDSM-IV1994年)では、うつ病とともに気分障害に分類されている[5]。ICD-10における診断名は双極性感情障害であり[6]、古くは躁うつ病(そううつびょう、躁鬱病)と呼称された。

双極I型障害と、より軽い軽躁病のエピソードを持つ双極II型障害とがある。双極性障害の躁状態、うつ状態はほとんどの場合、回復するが、90%以上再発する。単極性の(躁病のない)うつ病とは異なる経過をたどる。また発病のメカニズムや使われる薬は異なる。

気分安定薬による予防が必要となることが一般的である[7]。双極II型障害に対しては証拠が少なく薬物療法はケースバイケースで判断される[8]。生活習慣の改善が必要となる[7]。障害とは生涯にわたってのつきあいとなる。

世界保健機関: World Health Organization、略称:WHO)は世界で6000万人が罹患していると推定している[3]。好発年齢は25歳で[9]、初回発病は15から19歳からであり12歳以下は稀である[2]。35歳以上でも別の原因が念頭に置かられる[10]一卵性双生児における一致率は50から80%と、二卵性双生児 (5から30%) よりも高いことから、遺伝要因の関与が高いことが指摘されている[11]

適切な薬物療法と心理社会的治療の併用により、回復することができる(治療法については、「双極性障害#治療」を参照)[12]
定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。
症状と診断

双極性障害は、躁病を伴う双極I型障害(: bipolar I disorder)と、軽躁病を伴う双極II型障害(: bipolar II disorder)に区分される[2]。躁病、または混合状態が1回認められれば、双極I型障害と診断される。抑うつと躁病と、これらの症状のない寛解期とをはさみながら循環することが多い。躁病あるいは抑うつから次のエピソードまでの間隔は平均して数年間である。また、躁病と抑うつの症状が混ざって出現する混合状態(混合性エピソード)が生じる場合もある。

一方で、双極II型障害では、抑うつと軽躁病のエピソードのみが認められる。軽躁病は、患者や家族には病気とは認識されにくいため、自覚的には反復性のうつ病であると考えている場合も多い。症例によっては特定の季節に再発を繰り返すこともある。抑うつから急に躁状態になること(躁転)はまれでなく、一晩のうちに躁転することもある。また1年のうちに4回以上の抑うつエピソード、躁病エピソードを繰り返すものを急速交代型(: Rapid Cycler)と呼ぶ。

双極性障害の診断は専門家であってもしばしば困難である。とくに、純粋な単極性うつ病から、双極性障害を原因とした抑うつを鑑別することは困難である。若年発症では、最初のいくつかのエピソードは抑うつである可能性が高い[13]。双極性障害の診断は躁病または軽躁病エピソードを必要とするため、多くの患者は最初の診断および治療ではうつ病とされていた[14]

双極性障害の患者には、なんらかのパーソナリティ障害が伴っているケースが高いことが、統計的に確立している[2]。その中でも、境界性パーソナリティ障害を疾患にもつ患者の双極性障害の確率が高いとされている。双極性障害の研究の第一人者であるハゴップ・アキスカルは、はじめ抑うつ神経症、境界性パーソナリティ障害気分障害に関する研究を行っていたが、双極性障害を限定的に定義する診断基準に疑問を持っていた。「三環系抗うつ薬で躁転を示す気分失調症は双極型とすべきである」「思春期前にも躁・軽躁エピソードが見られる」「双極性障害は社会的適応、対人関係、薬物乱用に影響する」など指摘。多くの症例を双極スペクトラム概念としてとらえる必要性があると説いた。それ以前にもクレペリンが双極性障害の様々な経過類型について記述しており、双極性障害を一元的にとらえていたとされる[15]
躁病エピソード

躁病とは、気分の異常な高揚が続く状態である。躁病の初期には、患者は明るく開放的であることもあるが、症状が悪化するとイライラして怒りっぽくなる場合も多い。自覚的には、エネルギーに満ち快いものである場合が多いが、社会的には、離婚破産など種々のトラブルを引き起こすことが多い。アメリカ精神医学会によるガイドラインDSM-IV-TRによる躁状態の診断基準は、以下の症状がAを含む4つ以上みられる状態が1週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることである[16][17]
気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する。

自尊心の肥大: 自分は何でもできるなどと気が大きくなる。

睡眠欲求の減少: 眠らなくてもいつも元気なまま過ごせる。

多弁: 一日中しゃべりまくったり、手当たり次第に色々な人に電話をかけまくる。

観念奔逸: 次から次へ、アイデア(思考)が浮かんでくる。具体的には、文章の途中で、次々と話が飛ぶことなども含まれる[18]

注意散漫: 気が散って一つのことに集中できず、落ち着きがなくなる。

活動の増加: 仕事などの活動が増加し、よく動く。これは破壊的な逸脱行動にも発展しうる。

快楽的活動に熱中: クレジットカードやお金を使いまくって旅行や買物をする、性的逸脱行動に出る。

抑うつエピソード「抑うつ」も参照

双極性障害の抑うつは単極性のうつ病と症状が似ており、完全に区別はできない。うつ病と異なり、抗うつ薬の処方は躁転させる危険性が高いため、出来るだけ処方を控えるようになっている。特に、三環系抗うつ薬と呼ばれる古いタイプの抗うつ薬では、躁転、急速交代化など、悪化する恐れがある。単極性のうつ病に比べると、難治な傾向があると言える。DSM-IV-TRによるうつ状態の診断基準は、以下の症状が5つ以上みられる状態が2週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることである[16][17]。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、あるいは(2)興味または喜びの喪失である。
抑うつ気分。

興味、喜びの著しい減退。

著しい体重減少、あるいは体重増加、または、食欲の減退または増加。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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