原子力安全委員会
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原子力安全委員会(げんしりょくあんぜんいいんかい、: Nuclear Safety Commission、NSC)とは、かつて存在した日本の行政機関の一つで内閣府審議会等の一つ。2012年(平成24年)9月19日に廃止され、原子力規制委員会へ移行した[1]
概要2005年2月9日、アメリカ合衆国原子力規制委員会監察総監室との情報交換のため同委員会本部を訪問した内閣府原子力安全委員会の代表団

1978年に原子力の安全確保の充実強化を図るため、原子力基本法の一部を改正し、原子力委員会から分離、発足。国家行政組織法上の第8条審議会と同等の機能を有していた(ただし、国家行政組織法第1条の規定に基づき、内閣府は国家行政組織法の適用から除外されているため、中央省庁再編以降は内閣府設置法第37条に審議会等としての根拠を有する)。

原子力安全委員会の職務は原子力の研究、開発および利用に関する事項のうち、安全の確保に関する事項について企画し、審議し、および決定することであった。

具体的な役割については下記の通り。

以下の事項について企画し、審議し、及び決定する。

原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること

核燃料物質及び原子炉に関する規制のうち、安全の確保のための規制に関すること

原子力利用に伴う障害防止の基本に関すること

放射性降下物による障害の防止に関する対策の基本に関すること

第一号から第三号までに掲げるもののほか、原子力利用に関する重要事項のうち、安全の確保のための規制に係るものに関すること。


「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」について経済産業大臣に意見を述べること

核燃料物質の関連事業を行おうとする者の指定や許可について担当大臣に意見を述べること

原子力緊急事態宣言の解除について内閣総理大臣に意見を述べること

原子力緊急事態宣言の技術的事項について原子力災害対策本部長に助言すること

原子力防災管理者通報義務や原子力緊急事態宣言の政令の制定や改廃について主務大臣に意見を述べること

定期報告を受け、災害防止のために必要な措置を講ずるために担当大臣に意見を述べること

定期報告に関して原子力事業者等の調査をすること

しかし、業者を直接規制することはできない。

従来、日本の原子力安全について業者に対して直接安全規制するのは規制行政庁(経済産業省原子力安全・保安院文部科学省等)であり、規制行政庁から独立した本委員会がさらにそれをチェックする多層的体制となっていた。専門的・中立的な立場から、原子炉設置許可申請等に係る2次審査(ダブルチェック)、規制調査その他の手段により、規制行政庁を監視、監査していた[2]

委員は常勤の特別職国家公務員であり、年収は約1650万円(月給93万6000円とボーナス)であった[3]
体制の変遷

1974年9月1日に発生した原子力船「むつ」放射線漏れを機に1978年に設置され、1999年9月30日のJCOウラン加工工場における臨界事故を機に機能・体制が抜本的に強化された。その後、中央省庁再編に伴い、最終的な体制となった。
設立時 - 東海村JCO臨界事故まで1978年10月、総理府の原子力委員会から分離する形で原子力安全委員会を設置。設立当初からの主要業務は、原子炉設置許可等に係る安全審査(規制行政庁の審査結果の2次審査)およびそのための安全審査指針類(発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針など)の策定。科学技術庁原子力安全局原子力安全調査室が事務を担当した。

東海村JCO臨界事故を契機とした体制・機能の抜本的強化等1999年9月30日のJCOウラン加工工場における臨界事故は、当時日本で最悪の原子力事故であり、これを機に原子力の安全確保策は抜本的に強化された。この一環として、原子力安全委員会の機能も大きく強化された。主な強化点は以下のとおり。

規制行政庁への監視・監査機能の強化(設置許可以降の後続規制段階においても、規制調査を通じた監視・監査を行う)

原子力災害対策特別措置法の制定を受けた災害対策の強化等(緊急時対応体制の整備、緊急被曝医療体制の整備、事故・故障原因分析の強化等)

新たな政策課題への対応(安全規制におけるリスク情報の活用の検討、安全審査指針類への最新の知見の反映、安全文化の醸成等)
これらの新たな機能を加えて強化された委員会を独立した立場から補佐するため、2000年4月に規制行政庁である科学技術庁で行っていた事務を内閣総理大臣官房原子力安全室に移管するとともに、職員数を20名程度から50名程度に増員し、同時に高い技術的知見を有する非常勤の専門家(技術参与)を40名程度採用した。

中央省庁再編後2001年1月の省庁再編を機に、原子力安全委員会は総理府から内閣府に移管され、また、法律に基づく事務局が設置された。その後、2002年の東電問題(東京電力(株)によるデータ改竄等の不正の問題)を受けた原子炉等規制法の改正(2003年4月施行)等により、原子力安全委員会の監視・監査機能はさらに強化され、事務局の体制も強化された。

福島第一原発事故との関係

原子力安全委員会 1990年(平成2年)8月30日決定、2001年(平成13年)3月29日一部改訂の「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」では、「指針24. 残留熱を除去する系統」の第2項「残留熱を除去する系統は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を適切に備え、かつ、試験可能性を備えた設計であること。」とあり、「指針25. 非常用炉心冷却系」の第2項「非常用炉心冷却系は、その系統を構成する機器の単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できるように、多重性又は多様性及び独立性を備えた設計であること。」とあり、「指針48. 電気系統」の第3項「非常用所内電源系は、多重性又は多様性及び独立性を有し(以下略)」と定められており、そ用語定義で「独立性」とは、二つ以上の系統又は機器が設計上考慮する環境条件及び運転状態において、共通要因又は従属要因によって、同時にその機能が阻害されないことをいう。」と定義している。

しかし、福島第1原発のみならず被災原発全体で、「津波という共通要因」「その従属要因たる直流電源喪失(非常電池水没)」「その従属要因たる格納容器ベント困難」で複数の非常用所内電源系、残留熱除去系、緊急炉心冷却系が機能喪失に至った。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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