厚生年金会館(こうせいねんきんかいかん)は、かつて厚生年金保険加入者の福祉増進を目的として社会保険庁[1]が設置していた厚生年金福祉施設の一つ。厚生年金保険法第79条に基づき、厚生年金保険料を財源として設置され、社会保険庁に関連する財団法人である厚生年金事業振興団が運営していた。「ウェルシティ」の愛称があった。 会議室、宴会場、結婚式場、レストランなどを併設した複合型宿泊施設となっており、シティホテルと同等の設備を備える。いくつかの施設では多目的ホール(大ホール)を併設しており、各種コンサート・ライブ・演劇などの会場として広く知られた。 経営状況は、厚生年金事業振興団により伺うことができる。上記ホームページには2006年(平成18年)度の簡略な損益計算書が掲載されている(ただし、勘定科目が民間基準と異なっている)。それによると、全厚生年金会館で1億円を大幅に超過する欠損を計上している。なお、財務内容把握の基礎となる貸借対照表は公開されていない。 2005年度(平成17年度)以前の財務内容を把握することも容易ではないが、2004年2月24日付朝日新聞の報道によると、社会保険庁が固定資産税や減価償却費を仮定して計上する[2]など民間基準に準拠した試算を行ったところ、大阪・九州・東京の3施設では2002年度の時点で2億円を超える赤字決算となり、21施設のすべてで合計25億円を超える赤字を計上するとされた。このため、赤字補填に実質的に税金が投入されているとの批判が高まったこともあって、施設保有権が厚生労働省(社会保険庁)から独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に施設保有権が委譲され、最終的に2010年(平成22年)3月末までに全施設が閉鎖された。閉鎖された施設は民間への売却が行われ、運営母体が変わってそのまま運営されている施設や、建物を解体して別の施設となっているものもある。 施設の廃止や売却後に施設が閉鎖される事については、多目的ホールを併設している会館を中心に利用者からの懸念が強く寄せられており、各地で施設の存続を願う運動があった。特に北海道では、会館でコンサートを行うアーティストが存続運動に多く加わっていた[3]。 すべて2010年3月までに閉館した。 大ホール(多目的ホール)を併設していたのは以下の通り。東京・愛知以外はホール機能が存置された。
概要
施設一覧
北海道厚生年金会館(ウェルシティ札幌・北海道札幌市中央区北1条西12丁目) - 札幌市が取得し、「さっぽろ芸術文化の館」として運営(2018年閉館)。
東京厚生年金会館(ウェルシティ東京・東京都新宿区新宿5丁目) - 本館はヨドバシカメラ、別館は伸和技研が取得し、解体後、ヨドバシカメラネット配送センター・第二本社ビルに改築。
石川厚生年金会館(ウェルシティ金沢・石川県金沢市石引4丁目) - 2009年8月31日に閉館、ホール部分は北陸電力が取得し、「北陸電力会館 本多の森ホール」として運営。ホテル・結婚式場部分は石川県が取得し「石川県本多の森庁舎」となった。なお「北陸電力会館 本多の森ホール」は2023年7月1日に「本多の森北電ホール」となった。
愛知厚生年金会館(ウェルシティなごや・愛知県名古屋市千種区池下町) - 積水ハウス・長谷工コーポレーションが取得、2008年10月31日で閉館。解体後、超高層マンション「グランドメゾン池下ザ・タワー」に改築。
大阪厚生年金会館(ウェルシティ大阪・大阪府大阪市西区新町1丁目) - オリックス不動産が取得、ホール部分は2012年4月に「オリックス劇場」として再オープン。
広島厚生年金会館(ウェルシティ広島・広島県広島市中区加古町) - 広島市が取得し、「広島文化学園HBGホール」として運営。
九州厚生年金会館(ウェルシティ小倉・福岡県北九州市小倉北区大手町) - 北九州市が取得、民間運営の複合施設「アルモニーサンク→THE STEEL HOUSE(北九州ソレイユホール)」として運営。