即時取得
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、民法上の動産の即時取得(民法192条)について説明しています。

有価証券の善意取得については「善意取得」をご覧ください。

英米法上のBFP(不動産を含む)については「善意有償取得者」をご覧ください。

.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

即時取得(そくじしゅとく)とは、動産占有している無権利者を真の権利者と過失なく誤信して取引をした者に、その動産について完全な所有権または質権を取得させる制度。善意取得(ぜんいしゅとく)ともいい[1]原始取得の一種である。

日本においては民法第192条に規定がある。なお、民法第192条とは別に、債権の独立財産化に伴って民法第468条1項の異議を留めない承諾が善意取得の意味を持つ規定と理解されるに至っている[2]債権譲渡を参照)。

以下では民法第192条に規定される動産の即時取得を扱う。

民法について以下では、条数のみ記載する。

概説
条文

第192条

取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
制度趣旨

本来であれば、無権利者から権利取得を目的とした取引を行ったとしても、権利を取得することができないのが原則である。しかし、動産の場合、通常は取引をする相手方は権利者であり、取引相手が権利者であることを確認できなければ、権利を取得できないというリスクを負わなければならないとすると、取引を行いにくいし、本当の権利者へ返還をしなければならないなどの取引の混乱が起き、法的安定性が害されてしまう。そこで、動産の占有に公信力を与えて、動産の取引に入った者を保護し、取引の安全を図ろうとするのが、即時制度の趣旨である。
即時取得の要件

即時取得を主張するためには、その動産の占有を売買などの取引行為によって平穏かつ公然に取得していなければならない。また、その動産を所持していた者が権利者であると信じていた状態(善意)で、かつ信じていたことについて不注意が無い(無過失)ことも要求される。善意について、民法の一般的用法と異なることに注意(後述)。

即時取得の要件をまとめると以下のようになる。
対象が動産であること

前主が無権利者であること

取引行為により占有を承継したこと

占有を開始したこと

占有開始の際、平穏かつ公然の占有で、前主が無権利であることについて取得者が善意・無過失であること

対象が動産であること

即時取得の対象は動産である。不動産には不動産登記制度があり、権利者が公示されているためである。

登記・登録制度のある動産通説・判例は不動産登記と同様の公的な登録がされている動産(登記・登録制度のある自動車船舶航空機建設機械など)については即時取得できないと解している[3]。ただし、これらの場合も未登録・未登記・登録を抹消されたものは即時取得の対象となる(最判昭和45年12月4日民集24巻13号1987頁、最判平成14・10・29民集56巻1964頁)[3]。農業動産信用法上の農業用動産については取引によっては即時取得の対象となりうる[3]

金銭金銭は動産であるが通常は物としての個性を有しないことから即時取得の対象とならないとするのが通説・判例(最判昭和29・11・5刑集8巻1675頁、最判昭和39・1・24判時365号26頁参照)の立場である[4]不当利得の問題として処理する)。

証券化された債権無記名債権(債権者が特定されていない、証券化された債権)は、86条3項によって動産と同じ扱いを受けるので即時取得の対象となる[3]。ただし、商法上の有価証券小切手法21条等に定められる善意取得制度による[3]

前主が無権利者(無権限者)であること

条文上は明記されていないが、前述の制度趣旨より、無権利者(無権限者)からの取得しか即時取得では保護されない[5]

前主(直接の取引相手)が制限行為能力者である場合、無権代理人である場合、錯誤がある場合などは、即時取得を認めると、制限行為能力者・無権代理の本人・錯誤等の意思表示した者を一定の場合に保護する規定が存在する意味を失うため、即時取得の対象ではない。ただし、制限行為能力者や無権代理人が前主(直接の取引相手)ではなく、これらの者からの譲受人(転得者)が前主である場合には、前主自体は無権利者であるため、動産を譲り受けた転得者は即時取得の適用を受けることになる。

この要件は、講学上の要件ではあるものの、無権利者からの取得以外の場合には適用がないという意味での消極的な要件である点に注意を要する。そのため、民事訴訟の要件事実論における、法律効果を主張する者が主張・立証しなければならない要件事実にはあたらない[6]
取引行為により、占有を承継したこと

従来は、取引行為によることは明文にはなかったが、通説・判例では制度趣旨より当然の要件と解されていた(大判大正4年5月20日民録21巻730頁)。2004年の民法改正において、従来からの通説を条文に取り込み、「取引行為によって」という文言が条文に加えられた。

取引行為には、判例で売買贈与弁済代物弁済が含まれる。したがって、相続などでは即時取得できない。ただし、贈与などの無償行為がここでいう取引行為に含まれるかは、若干の争いがある[7]
占有を開始したこと

この占有開始には、現実の引渡し簡易の引渡しが含まれることは争いはないが、指図による占有移転占有改定が含まれるかについては争いがある。判例は、指図による占有移転は肯定し(最判昭和57・9・7民集36巻1527頁)、占有改定は否定している(最判昭和32年12月27日民集11巻14号2485頁ほか)[4]。もっとも、指図による占有移転について、否定した判例もある(大判昭和8年2月13日新聞3520号11頁、大判昭和9年11年20頁民集13巻2302頁)[8]

なお、動産譲渡登記上の譲渡人からの買主等にも即時取得が成立する場合がある[9]
平穏・公然・善意・無過失

平穏・公然の対義は、強暴・隠避。平穏・公然と善意については、186条推定されるので立証の必要はない。また、無過失についても、188条で前主である占有者は適法に権利を行使するものと推定される(法律上の推定)ことから、取得者は無過失を推定されるため、立証の必要はない (最判昭和41年6月9日)。

なお、192条の「善意」は、民法の一般的用法とは異なり、前主の占有を信じていたことをいう。したがって、前主の無権利を知っていた場合のほか、前主の権利を疑っていた場合も、悪意となり、即時取得は成立しない[10]
即時取得の効果

即時取得の効果は動産上の所有権・質権の原始取得である(192条)[4]。所有権取得の場合には譲受人が所有権を取得するとともに前主のもとで動産に付着していた権利は消滅し、質権設定の場合にはその所有権上に質権の負担が生じるに至る[4]。なお、盗品遺失物の即時取得については特則がある(後述)。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:22 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef