危険物
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危険物搭載車を禁じるトンネルバスなどの旅客車両用のコーションプレート

危険物(きけんぶつ、英語: Dangerous goods)とは、対象に危険を及ぼす可能性を秘めた本質を持つ物である。文脈により危険を及ぼす対象及び危険を及ぼす主体の物の範囲が異なる。

対象としては、人間動物植物環境生態)、物体物質・物品)、財産等が該当する場合がある。一方主体の物としては、物質(化学物質など)や物品(品物製品・成形物・機器・器具)といったものが該当する場合がある。

また、文脈により危険物とされる範囲が異なる。
定義の一覧
日本での対象

言葉としての「危険物」の概念は幅広いが、日本法では「危険物」はいろいろな法令で定められている。例えば、消防法毒物及び劇物取締法高圧ガス保安法労働安全衛生法火薬類取締法、危険物船舶運送及び貯蔵規則[1]・船舶による危険物の運送基準等を定める告示・航空法施行規則[2]の「法第八十六条第一項 の国土交通省令で定める物件」とは法令上そうは呼んでいないが「危険物」のことである。この法令に基づいて[3]航空機による爆発物等の輸送基準を定める告示・航空機による放射性物質等の輸送基準を定める告示建築基準法施行令、旅客自動車運送事業運輸規則[4]によっても、それぞれ危険物の定義がなされ、規制されている。

世界的には、国連危険物輸送勧告に基づく分類、あるいは、それを基にした化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)で危険物が定義されていることが、他言語のウィキペディアを読むとよくわかる。ただし、日本でも航空輸送、海上輸送[5]では、この国連危険物輸送勧告を踏襲しており、この国連危険物輸送勧告をベースにして構築されたGHSについては、日本でもそのまま導入されているので、労働現場や製品ラベル・安全データシートでは、この分類をよく見かけるようになっている。
消防法

消防法でいう「危険物」とは、「別表第一の品名欄に掲げる物品で同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」と定義されており、貯蔵や道路輸送中の火災爆発や漏洩事故における危険な状況を想定している。この場合、保健衛生上の見地から人体などの健康に有害という意味での危険性はまた別で、こちらは毒物及び劇物取締法などが別途定められている。
国連危険物輸送勧告

航空輸送や海上輸送の場合は国際連合による国連危険物輸送勧告に基づいた「危険物」の概念が日本でも「危険物船舶運送及び貯蔵規則」及び「航空機による爆発物等の輸送基準を定める告示」並びに「航空機による放射性物質等の輸送基準を定める告示」において適用されている。

国連危険物輸送勧告はほぼすべての輸送形式(道路輸送・海上輸送・航空輸送など)における輸送中の危険な状況が想定されている。国連危険物輸送勧告を根本とする日本法規には船舶による危険物の運送基準等を定める告示や航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示などがある。

将来的には、法令規則等における危険物の分類は貯蔵・輸送を含むあらゆる取扱状況を想定したGHSと呼ばれる国際的に協調(ハーモナイズ)された体系を基礎としたものに移行していくと考えられている。
国連危険物輸送勧告に定める危険物UN Class.1詳細は「国際連合危険物輸送勧告」を参照

危険物輸送に関する国連勧告別冊「試験方法及び判定基準」(Recommendations on the Transport ofDangerous Goods, Manual of Tests and Criteria)に記載された分類基準に基づき荷送人が、輸送品の分類の実施するものとされている。分類は以下の9分類(class)に分かれ、さらに等級や容器等級・国連番号に細分される。

荷送人は分類の結果に応じて規則に従い、梱包と表示を行って輸送者に申告しなければならない。輸送者は荷送人が申告した分類に対応して定められた輸送上の規則にしたがって輸送を実施する。

輸送者は開梱して荷送人の申告・表示の正しさを確認することはしない(してはならない)ので、荷送人の分類に係わる安全上の責任は重大である。
分類の一覧国連危険物輸送規則に基づく各種絵表示が見られる事例

危険物船舶運送および貯蔵規則の二章で定義されている危険物は次の9つである。下記の<>内は対応する国連危険物輸送勧告書(第17版)の英語とその直訳である。

分類1 火薬類 <Explosives 爆発物>

分類2 高圧ガス <Gases ガス>

分類3 引火性液体類 <Flammable liquids 引火性液体> 

分類4 可燃性物質類 <Flammable solids; substance liable to spontaneous combustion; substances which, on contact with water, emit flammable gases 引火性固体; 自然発火しやすい物質; 水と接触したときに引火性ガスを発生する物質>

分類5 酸化性物質類 <Oxidizing substances and organic peroxides 酸化性物質及び有機過酸化物>

分類6 毒物類 <Toxic and infectious substances 毒性感染性物質>  

分類7 放射性物質等 <Radioactive material 放射性物質>

分類8 腐食性物質 <Corrosive substance 腐食性物質>

分類9 有害性物質 < Miscellaneous dangerous substances and articles, including environmental hazardous substances その他の危険な物質及び物品、これには、環境有害物質が含まれる>

クラス1・爆発物これを規定する日本の法令の一つである「危険物船舶運送及び貯蔵規則」では「火薬類」としている。

等級1.1 大量爆発(mass explosion)の
危険性(hazard)がある物質及び物品(article)。

大量爆発とはほぼ瞬間的にほとんどすべての貨物に影響が及ぶ爆発と定義される。


等級1.2 大量爆発の危険性がないが、飛散の危険性がある物質及び物品。

等級1.3 大量爆発の危険性がないが、火災の危険性があり、かつ、弱い爆風の危険性若しくは弱い飛散の危険性又はその両方の危険性のある物質及び物品。

等級1.4 重大な危険性がない物質及び物品。点火又は起爆が起きた場合にその影響が容器内に限られ、かつ、大きな破片が飛散しないものを含む。

等級1.5 大量爆発の危険性はあるが、非常に鈍感な物質。

等級1.6 大量爆発の危険性がなく、かつ、極めて鈍感な物品。

海上輸送に係る危険物
国際規則

海上輸送に係る危険物輸送は国際的には日本も加盟する国際海事機関(IMO)(国連に属する専門機関)によって規定および管理の原則の策定が行われている。このIMOで、国際海上危険物規則(International Maritime Dangerous Goods Code、IMDGコード[6])、国際バルクケミカルコード(IBCコード)、核燃料物質等専用運搬船の基準(INFコード)等、国際的な安全基準を定めている[7]。IMDGコードは国連危険物輸送勧告を基にして定められている。

IMDGコードは、2004年1月1日以前は、SOLAS条約勧告であったため部分的に国内規則に取り入れることが可能であったが、SOLAS条約の改定によって、2004年1月1日からは、同条約締約国は改正されたIMDGコードの規定全てを国内規則に採り入れ、実施することが強制されることになった[8]
日本規則

日本ではこれら国際基準に基づき容器の強度、表示、積載方法、船舶の構造、設備等の技術基準を船舶安全法に基づく危険物船舶運送及び貯蔵規則(危規則)等で定めている[7]。日本の所管官庁は国土交通省の海事局[9]である。

船舶による危険物の運送基準等を定める告示(危告示)に危険物のリスト[10]があり、これはIMDGコードの危険物リストに基づいている。

IMDGコードの改正においては施行と強制化に1年の移行措置があるが、国内法では施行と同時に強制化され移行措置が設けられていない。通常、危告示は施行日となる奇数年の1月1日に先立って12月25日から28日あたりに公布されることが多い。
航空輸送に係る危険物空港で見られる危険物持ち込み禁止ポスター[11]

危険物とは、国連がその輸送危険物勧告の定めている9つの危険性分類のうちの、1つ以上の基準に合致するものである。荷送り人は危険物を正確に識別、分類、包装等級への割り当てが求められる[12]。輸送危険物勧告の分類基準は、試験方法及び分類マニュアル(Manual of Tests and Criteria)に記載されている。これは、元、危険物輸送に関する国連勧告別冊「試験方法及び判定基準」(Recommendations on the Transport of Dangerous Goods, Manual of Tests and Criteria)と呼ばれていたものが、GHSにも対応させたものである。[13]
国際規則

航空輸送に係る危険物輸送は国際的には日本も加盟する国際民間航空機関(ICAO)(国連に属する専門機関)が定める国際民間航空条約(Convention on International Civil Aviation)のANNEX18「危険物の航空安全輸送」により定められている。このANNEX18を補足するために「危険物の航空安全輸送に係る技術指針(Technical Instructions for the Safe Transport of Dangerous Goods by Air:ICAO TI)」が、より詳細な内容を定めている。ICAO TIは国連危険物輸送勧告を基にして定められている。
業界団体規則

国際航空運送協会(IATA)は、国際規則の遵守を推進する目的で、国際規則 TIをさらに詳細にした 航空危険物規則書(Dangerous Goods Regurations:DGR)を業界団体の規則として定めている。運用上の利便性を考慮して国際規則を明確化し、場合によっては追加的な制限を加える場合もある。

国際規格は国連危険物輸送勧告にあわせて2年毎の改正だが、DGRは1年毎の改正である。
日本規則

日本では国際規則であるANNEX18に基づき航空法 第86条および航空法施行規則 第194条により危険物の航空輸送が規制される。具体的な基準等は「航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」「航空機による放射性物質等の輸送基準を定める告示 」により定めている。日本の所管官庁は国土交通省の航空局である。

船舶による危険物の運送基準等を定める告示(危告示)に危険物のリストがあり、これはIMDGコードの危険物リストに基づいている。
貨物と手荷物

航空輸送では危険物を貨物としての輸送する場合、乗客・乗員が手荷物として持ち込む場合、それぞれに基準がある。

一般的に航空輸送といえば貨物として輸送することを意味する。
道路輸送に係る危険物
欧州周辺の規則

複数の国が道路で接続された欧州周辺では危険物国際道路輸送協定(Agreement concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Road:ADR)を協定加盟国の規則として定め、道路輸送の円滑化を図っている。元々は欧州の規則としてスタートしたが周辺国も加盟し範囲が拡大したことから名称から European が削除された。

ADRは国連危険物輸送勧告を基にして国際連合欧州経済委員会(UNECE)により定められている。
日本規則

日本では、危険物の運搬は消防法 第16条により規制されており、所管官庁は総務省消防庁である。

一方、旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)第14条、第52条に基づいて、バス、タクシー等人を運送する事業における危険物の輸送制限が実施されている。所管官庁は国土交通省である。
各国の規則

それぞれの国が自国の規則を定めている。多くの国では、国連危険物輸送勧告を基にしている。
鉄道輸送に係る危険物
日本規則

まず手回り品の携行について。

鉄道運輸規程(昭和17年鉄道省令第3号)において、旅客が「火薬類其ノ他ノ危険品」を手荷物として託送することを禁じ(第37条)、「火薬類其ノ他ノ危険品」を他の品名で貨物として託送した際の措置(割増運賃請求及び損害賠償請求)について定めている(第59条)。

ここでは、「危険品」と呼んでいるが、日常では「危険物」と呼んでいることも少なくない[14][15]

実際の詳細な運用規則については各鉄道会社の旅客営業規則によっている。JR東日本の例では第307条 手回り品及び持込禁制品 で定めている[16]東海道新幹線火災事件の再発防止のため、大幅に制限が厳しくなった。

つぎに貨物列車による輸送について。

日本貨物鉄道(JR貨物)では、の平成19年10月に『貨物運送約款』を改訂し、危険物(危険品)の分類を国連危険物輸送勧告に準じたものにした。また、危険物を輸送する際の荷主、利用運送事業者、JR日本貨物間の責任を明確化した[17]。その貨物運送約款第4章危険品輸送の特則では、国連危険物輸送勧告を大元とする国連番号と容器等級を貨物運送状記事欄への記載を求めている[18]。JR貨物は、また、危険物(危険品)の貨物取扱について『危険品託送方法のご案内(コンテナ貨物)』なる冊子を発行している[19]。分類は国連危険物輸送勧告に準じているが、容器・表示などの基準については消防法を適用している品目もあり詳細は輸送を委託するフォワーダーを通じて個別に確認が必要である。
GHSによる危険物詳細は「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」を参照

国際連合の危険物輸送勧告とそれに基づく各モード(航空、海上、陸上、鉄道)の規則はすべて輸送安全に限定されたものである。これを貯蔵や使用まで拡大したものがGHSであるといってよい。

GHS01 爆発物

GHS02 可燃性

GHS03 支燃性・酸化性物質

GHS04 該当なし

GHS05 腐食性物質

GHS06 急性毒性(高毒性)

GHS07 急性毒性(低毒性)

GHS08 経口・吸飲による有害性

GHS09 水生環境有害性

日本の消防法に定める危険物.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}


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