この項目では、「ミュージアム」の本義について説明しています。その他の用法については「ミュージアム」をご覧ください。
大英博物館
(イギリス、ロンドン) 国立人類学博物館
(メキシコ、メキシコシティ)国立故宮博物院
(中華民国/台湾、台北)エジプト考古学博物館
(エジプト、カイロ)エルミタージュ美術館
(ロシア、サンクトペテルブルク)
博物館(はくぶつかん)とは、特定の分野において価値のある対象、すなわち学術資料、美術品等を購入や寄託・寄贈などの手段で収集、保存し、それらについて専属の職員である学芸員(英: Curater・キュレーター)が研究すると同時に、来訪者に展示の形で開示している施設である[1]。自然史、歴史、民族、民俗、美術・芸術、科学・技術、交通(鉄道や自動車、海事、航空)、軍事・平和などのうち、ある分野を中心に収蔵・展示している博物館が多い。絵画や彫刻などを重点を置く施設は美術館を称するなど、博物館以外の名称を冠することも多い。日本語では英語(英: museum、英語発音: [mju??zi??m])からの外来語でミュージアムと呼ぶこともある。
文化財を含む貴重な資料の保存・修理[2]や、研究とその成果を公刊する役割も担う。文化だけでなく、観光資源としても大きな役割を担う[3]。 国際博物館会議(ICOM、イコム)規約で「博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、解釈、展示する、社会のための非営利の常設機関である。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂的であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ専門性をもってコミュニケーションを図り、コミュニティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、省察と知識共有のための様々な経験を提供する。」と定義されている。この定義は2022年8月開催のICOMプラハ大会で採択された。[4] 英語の「ミュージアム」(museum)は、日本語でいう美術館(アート・ミュージアム)も内包する概念である。同様に、日本語で博物館という名称を付さない記念館、資料館、文学館、歴史館
概要
水族館、動物園、植物園といった生きている生物を収集する施設は、植物園の標本館であるハーバリウム施設を除くと博物館とは区別して考えられる傾向にあるが[5]、同一の発想に基づく類似施設である。これらは、日本の博物館法上は「生態園」と呼称されている。 英語の「ミュージアム」(museum)は、古代エジプトのプトレマイオス朝首都アレクサンドリアにあった総合学術機関であるムーセイオンに由来する。ムーセイオンは、ギリシア語で「ムーサ(ミューズ:芸術や学問をつかさどる9人の女神たち)の殿堂」を意味する。ドイツ語やフランス語でも同じ由来の語が使われている。 漢語の「博物館」は、日本語や中国語で「ミュージアム」の訳語として使われており、中国語では「博物院」とも訳される[6]。 「博物」の二字は、古代中国の『春秋左氏伝』にも見える伝統的な語だが、「博物館」の初出は諸説ある[6]。一説には、後述の市川清流ら幕末の日本人による和製漢語とされる[6]。また一説には、それより早い清末の魏源『海国図志
名称
ヨーロッパの博物館・美術館にはバロック期のヴンダーカンマー(驚異の部屋)に発祥するものが多い。ヴンダーカンマーとは、世界中の珍しい事物(異国の工芸品や一角鯨の角、珍しい貝殻、等々)を、種類や分野を問わず一部屋に集めたものである[7]。ルネサンス期からバロック期にかけて王侯や富裕な市民は珍しい事物の収集に熱を入れた。この「珍しい」収集の中には貴重な絵画・彫刻も含まれた。キリスト教の教会以外の場で大規模な美術品の公開展示が行われたのはルネサンス期イタリアのフィレンツェである。メディチ家のコレクションが邸内の回廊(ガレリア)で行われた。祝祭日に王侯がコレクションを閲覧することはその後も各地で行われたが、通年公開されることはなかった。フランスでは王立絵画彫刻アカデミーがルーヴル宮殿の一室「サロン・カレ」で会員の作品の展示を行い(サロン・ド・パリの起源)[8]、ディドロが書いたその批評はフランス内外で広く読まれた。
18世紀まで博物館の閲覧は学者を含む富裕層に限定されてきたが、フランス革命中の1793年に、一般に公開される最初の常設の博物館として国立自然史博物館が首都パリに設置された。
アジアでは、1814年に英国統治下のインドのコルカタ(カルカッタ)で創立されたインド博物館が最も古く[9]、明治維新後の日本でも各種の博物館が開設されるようになった。
1925年、ドイツ(当時はヴァイマル共和政)ミュンヘンにオープンしたドイツ博物館は、これまでの閲覧中心の展示から、体験型展示を全面的に導入し、現代の科学博物館の展示様式のさきがけとなった。一部の博物館、特にイタリアには、コレクションの性質や規模に応じて紹介、事前予約を要するものがある。
アメリカ合衆国では博物館の教育性、公共性が強調され、公開のものが多く、スミソニアン博物館のように定額の入場料を定めないところもある。またポール・アレンのような資産家が収集したコレクションを展示する「私設博物館」を運営することもあり、国立アメリカ・インディアン博物館のように私設から国立となる例もある。
ルーヴル美術館(フランス、パリ)の展示(古代ギリシアの陶器)