博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
監督スタンリー・キューブリック
脚本スタンリー・キューブリック
ピーター・ジョージ
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(はかせのいじょうなあいじょうまたはわたしはいかにしてしんぱいするのをやめてすいばくをあいするようになったか、原題: Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)は、1964年のイギリスとアメリカ合衆国の合作による[2]のブラックコメディ映画。
冷戦時代のソビエト連邦とアメリカ合衆国の核戦争を風刺している。ピーター・ジョージの『破滅への二時間(英語版)』(1958年)を原作に、スタンリー・キューブリックが監督を務め、ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、スリム・ピケンズらが出演する。
1998年にはアメリカン・フィルム・インスティチュートが発表したアメリカ映画のベストランキングで26位(2007年版では39位)、2000年には最も面白いアメリカ映画のリストで3位にランクインしている。1989年、アメリカ議会図書館は、「文化的、歴史的、美学的に重要」であるとして、アメリカ国立フィルム登録簿に保存する最初の25作品の一つに選ばれた[3]。
2024年10月 - 12月にイギリス ロンドン ウエスト・エンドのノエル・カワード・シアター(英語版)にて舞台版が上演予定[4][5]。 キューバ危機によって極限状態に達した冷戦の情勢を背景に、偶発的に核戦争が勃発し、人類滅亡に至るさまを描くブラックコメディ。政府や軍の上層部はほぼ全員が俗物ないし異常者として描かれる風刺劇でもある。 キューブリックが監督した最後の白黒作品である。本作品はピーター・ジョージ
概要
本作品は、キューブリックの代表作の一つと位置づけられている。アイロニカルな姿勢は、同時期に撮られた同テーマのシドニー・ルメットの『未知への飛行』のヒロイズムを含んだ感傷性とは一線を画している。『2001年宇宙の旅』(1968年)、『時計じかけのオレンジ』(1971年)とひとまとめにして「SF3部作」と呼ばれることもあるが、この関連づけがキューブリック本人の構想にもとづくことを示す資料は発見されていない。
あらすじ.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}マンドレイク大佐に陰謀論を語るリッパー准将最高作戦会議室のアメリカ政軍首脳
冒頭にアメリカ空軍による「映画はフィクションであり、現実には起こりえない」との趣旨の解説が流れる。
ある日、アメリカ空軍戦略航空軍団第843爆撃隊が所属するバープルソン空軍基地の司令官リッパー准将が精神に異常をきたし、警戒飛行中だった第843爆撃隊のB-52戦略爆撃機34機に対して、本来政府中枢が敵の先制攻撃を受けて混乱した場合に下級指揮官が独自の判断でソ連への報復核攻撃を行うことができる「R作戦」を実行するよう命令すると、基地に戦時体制を発令して立て篭もった。バープルソン空軍基地に派遣されていたイギリス空軍のマンドレイク大佐は偶然にも戦争状態でないことを知り、リッパー准将にB-52を引き返させるよう進言するが拒否される。マンドレイク大佐は自身の権限によってB-52を引き返させようとするが、逆にリッパー准将が閉じこもる執務室に軟禁されてしまい、リッパー准将の話し相手となる。「R作戦」に従いソ連への攻撃に出撃したB-52には、それぞれ第二次世界大戦で使用された全爆弾・砲弾の16倍の破壊力がある核兵器が搭載されていた。
バープルソン空軍基地の状況とB-52出撃を知ったアメリカ政府首脳部(マフリー大統領、タージトソン将軍を始めとする軍高官、大統領科学顧問兼兵器開発局長官のストレンジラヴ博士など)は、ペンタゴンの戦略会議室に集結して対策を協議する。マフリー大統領はあえて駐米ソ連大使のサデスキーを呼ぶことにし、機密漏洩を危惧して反対するタージトソン将軍を押し切ってサデツキー大使を会議室に招く。マフリー大統領はサデスキー大使同席の元、ソ連首相にホットラインで爆撃機の件を告げ、もしアメリカ側がB-52の呼び戻しに失敗した際は、それらを撃墜するよう依頼する。しかし、直後にホットラインを代わったサデツキー大使は、ソ連首相から、核攻撃を受けた場合、数十発のコバルト爆弾を自動で爆発させることで半減期が極めて長い放射性降下物を発生させ、地球上の全生物を絶滅させる「皆殺し装置[6](終末兵器の一種)」を実戦配備したことを告げられる。サデツキー大使から皆殺し装置のことを告げられたマフリー大統領は解体できないのかと聞くが、サデツキー大使はもし解体しようとすれば作動してしまうことを告げる。マフリー大統領になぜそれを作ったのかを聞かれ、「反対もあったが、軍拡競争や宇宙開発競争に比べれば一番安く済む」「アメリカも同種のシステムを作っていると聞いた。こちらも持たなければ困る」と言うサデツキー大使の言葉を聞いたマフリー大統領は、ストレンジラヴ博士に本当に皆殺し装置を作っているかどうかを聞く。ストレンジラヴ博士は自分も皆殺し装置の製作を検討したがこれは戦争回避には役立たないと判断したと言いつつ、皆殺し装置の構造を淡々と解説する。しかし、ストレンジラヴ博士にも解けない疑問があり、そこに至ると博士は興奮して「皆殺し兵器はその存在を公表しなければ意味をなさない。それなのにソ連はなぜ公開しなかったのか!」とサデツキー大使に迫る。サデツキー大使は「近日公表する予定だった。首相は人を驚かすのが趣味だ」と説明した。この協議が続いている間にもリッパー准将麾下のB-52は進撃を続けていた。
「R作戦」を命令された際、B-52の一般通信回路は敵の謀略電波に惑わされないために、規定に従い「CRM114」(以下、CRM装置)と呼ばれる特殊暗号無線装置に接続される。このCRM装置は通信をまったく受け付けず、従って通常の場合爆撃機を引き返させることは不可能であった。CRM装置は例外として3文字の暗号を送信することによって解除できるのだが、その暗号は当のリッパー准将しか知らず、総当たり方式でも暗号は1万7000通りあるため、該当暗号を特定するためには2日半かかってしまう。