単為生殖
[Wikipedia|▼Menu]

単為生殖(たんいせいしょく、英語:parthenogenesis)とは、一般には有性生殖する生物でが単独で子を作ることを指す。有性生殖の一形態に含まれる[1]

なお、単為生殖によって産まれる子の性が、雌のみならば産雌単為生殖(セイヨウタンポポ、増殖中のアブラムシミジンコなど)、雄のみならば産雄単為生殖(ハチハダニなど)、雄も雌も生産可能ならば、両性単為生殖(休眠卵生産直前のアブラムシミジンコなど)と区別される。また、卵子精子受精することなく、新個体が発生することを単為発生(たんいはっせい)と呼ぶ。
概論

哺乳類では次世代を残すためには精子と卵子が受精することが必要だが、これは哺乳類に限った現象で、鳥類ですらシチメンチョウなどで見られるように受精することなく卵子が孵化することが知られている[2]

哺乳類では単為生殖で繁殖する動物は知られていない。それは、哺乳類の特定の遺伝子にはゲノムインプリンティングという母親由来か父親由来かを示すラベルがあり、どちらの親のものが発現するかが決まっているからである。ゆえに、親がどちらかの性だけだと全く発現しない遺伝子が出てきてしまい、子は生存できない。単為生殖できない哺乳類は、グループとしてみれば実にマイナーな存在である。ただし、マウスなどのいくつかの哺乳類では人為的に単為生殖を誘発する実験に成功している[3]

自然に単為生殖をすることが知られている動物の大半は、ミツバチ、スズメバチ、アリ、アブラムシといった小型の無脊椎動物であり、彼らは有性生殖と単為生殖を切り替えることができる。

脊椎動物でも80種以上で確認されており、その約半数が魚か爬虫類である[3]。また、飼育下のヘビ、コモドオオトカゲ、鳥、サメのメスで単為生殖が確認されている[4]

ヘビ、鳥、サメなど、単為生殖が確認された生物種は近年急増している[5]

単為生殖のメカニズムは、卵子ができる過程で形成され通常であれば消滅するはずの「極体」が、精子のように振る舞い卵子と結合することで起きる[5]

世界最大のヘビであるアミメニシキヘビでも単為生殖が確認されている[5]。また、ヘビにおいては繁殖相手になるオスが周囲に存在する環境であっても単為生殖が起こる事が判明している。単為生殖はオスがいない場合に血筋を絶やさない方法として起こる進化上の珍しい現象と考えられていたが、アメリカの生物学者ウォーレン・ブースの調査ではオスが存在する自然環境下であっても単為生殖で妊娠していたヘビは驚くほど高い確率であった[4]。ヘビで単為生殖が起こる原因は不明で[5]、メスがオスとの交配にあぶれた、細菌やウイルスが誘因になった、あるいはただの生殖上のミスと考える専門家もいる[4]

単為生殖で生まれた動物が普通に生殖できるのかは分かっていない。単為生殖の子どもはどこかに異常があるか、早死してしまう場合が多い[4]

正確に言えば、単為生殖とは、本来は接合によって新しい個体を生ずるはずの生殖細胞が、接合を経ることなく新しい個体を形成することである。たとえば、といわれるものは、精子が入って受精が行われることで発生が始まり、新たな個体へと成長するものである。ところが、卵が受精を経ずに発生を始める例があり、このようなものを「単為生殖」と呼ぶのである。つまり、有性生殖器官を強引に無性生殖的に用いてしまうわけである。なお、この卵の例のように、新個体の形成に発生の過程が入ることから、「単為発生」という言葉も使われる。

卵でなくても、植物では受粉せずに種子が生じる場合(内部的には卵が絡んでいるが)も単為生殖と呼ぶ。他に、雌雄の分化が起こっていない生殖細胞の間に、接合胞子を形成するものの場合にも、単独で接合胞子 (Zygospore) を形成する例があり、その場合には単為生殖と呼べる。そのような接合胞子を偽接合胞子 (Azygospore) という。

単為生殖は偶発的なものもあれば、生活環の一部として恒常的に行われている場合もある。また、人工的に単為生殖を誘発することも行われている。
単為生殖と染色体

単為生殖は、接合なしに新個体が作られるので、雌側(母体)の遺伝子のみを受け継ぐことになる。また、接合を前提とした生殖細胞であれば、当然ながら染色体単相であり、接合によって複相になるはずである。つまり、卵がそのまま発生を行えば、他の個体は複相であるのに、単相の個体が生じることになる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:25 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef