この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方)
出典検索?: "単段式宇宙輸送機"
単段式宇宙輸送機(たんだんしきうちゅうゆそうき、英語: single-stage-to-orbit、SSTOと略す)は、燃料や推進剤のみを消費し、エンジンや燃料タンクなどの機材を切り離さずに衛星軌道に到達できる宇宙機である。単段式宇宙往還機などとも訳す。"SSTO" は字義の上では必ずしも再使用できることを意味しないが、再利用しないものを捨てないメリットは薄いので、通常は単段式の再使用型宇宙往還機となる。
なお、2段の場合は two-stage-to-orbit でTSTO(二段式宇宙輸送機)、3段になる場合は three-stage-to-orbit と呼ばれる。 通常の乗り物は、出発から目的地への到着まで、燃料を消費することを除いては、機体(車体、船体)を大幅に変更したり切り捨てたりすることはない。これに対し2017年現在の宇宙への運搬手段である化学ロケットは全て多段式で、軌道へ到達するのはペイロードのみであり機体の極く一部に限られる。加えて、有人宇宙船や、サンプルリターンで回収するペイロードがあるプロジェクトでは、最終的に地上に戻ってくる部分を除く機体は使い捨てであった。このことはロケットの飛行が複雑で高価なものとなる要因であり、出発から目的地到着、出発地への帰還まで主要部品を切り離さず、点検整備と推進剤充填だけで再度飛行できる機体であれば、航空機のように簡便で経済的な輸送手段になるとの考えが生まれた。 従来の化学ロケットが多段式であるのは、実現可能なロケットエンジンの性能及び燃料搭載量の制限と、ツィオルコフスキーの公式から導き出される結論である。この結論を覆して単段で宇宙に到達するには、従来より軽い、即ち離陸重量に占める推進剤の比率が大きい機体と、従来より高性能なエンジンの組み合わせが必要となる。しかも従来の多段式ロケットは機体を使い捨てにすることで構造を簡素化しているのに対し、機体を出発地に帰還させ再使用するためには大気圏再突入と減速、着陸の機能が必要であり、これらの技術的要求を解決しつつなお従来の使い捨てロケットより軽量な機体に仕上げる必要がある。 また、1機のSSTOの製造費用が、同等の運搬能力を持つ1機の使い捨てロケットよりはるかに高額になることは容易に想像されるところで、SSTOは繰り返しの飛行により減価償却しなければ運行費用は安くならない。このため、SSTOは機体を喪失するような重大事故を起こす可能性が極めて低く、仮に飛行中に故障を生じても安全に帰還できること、簡便で経済的な整備により短期間で次の飛行が可能であること、主要部分の寿命が充分に長く償却までの飛行回数を確保できることが必要である。 SSTOでは、多段式ロケットのような切り離し機構などが不要となり構造を簡素化でき、また1段目の再使用のみを考慮すればよいことから、再使用型宇宙往還機の形状として望ましいと言われている。しかし、ロケットエンジンによる設計ではツィオルコフスキーの公式が示すとおり機体の大幅な軽量化が必要であること、さらにスクラムジェットエンジン等の開発が難航していることなどから、デルタクリッパーやX-33、ロータリー・ロケット#ロトン等の数隻のSSTOが研究・設計されたが、いずれも軌道には到達しておらず、地球上でのSSTOは2011年現在実現していない。地球周回軌道への運搬手段として、いまだ多段式の使い捨て型ロケットが用いられている。 SSTOの実現には、大別して次のような技術が必要である。 ロケットエンジンの性能の重要な2つのパラメータは、比推力と推力重量比である。空気と重力の中を推重比の良いエンジンで一気に加速して軌道高度まで駈け登る能力と、比推力の良いエンジンで水平方向へ加速して軌道速度を得る能力の両方を、ひとつのエンジンでまかなわなければならないところに単段式の難しさがある。一般に、軽い推進剤(たとえば水素)は、比推力では有利だが推重比は不利で、重い推進剤はその逆、というトレードオフがある。 ロケットエンジンの比推力の上限は、推進剤の種類により決定され、最も高性能な推進剤は液体水素と液体酸素の組み合わせである。この場合の理論上の比推力は約460秒であるが、実際にはより低い値となる。その理由はいくつかあるが、SSTOでは特にノズルと大気圧の関係が問題になる。 ロケットエンジンの噴射ガスは、ノズル内で膨張・加速し、出口に向かって圧力が低下する。真空中ではできるだけ膨張・加速するよう長いノズルが望ましいが、大気中では圧力が大気圧を下回ると逆流が起きるため、ノズルを長くできない。このため、離陸時に使用するロケットエンジンはノズルを短くせざるを得ず、大気圏外では高性能を発揮できない。 そこで、ノズルの長さを変更できるエンジンが考えられる。ノズルを分割して先端部分を格納しておき、大気圏外では展開して長くするのである。この方法は、エンジンノズルを小さく格納する目的では実用化されている。 また、ノズルをベル型ではなく円錐状とし、そこに外側から噴射ガスを吹き付けるようにした型式のものをスパイクノズルと呼ぶ。スパイクノズルでは、噴射ガスは円錐状のノズル(スパイク)に沿って流れながら膨張するが、大気圏内では大気により小さく広がり、真空中では大きく広がるため、膨張が自然に最適化される。 スパイクノズルを円錐状ではなく壁状とし、複数のエンジンを連続的に取り付けられるようにしたものをリニアスパイクエンジンと呼ぶ。リニアスパイクエンジンはアメリカで試作されたが、これを使用する予定だった機体 (X-33) の開発が中止されたため実用化に至っていない。 低高度では密度が大きく推重比的に有利なケロシンを燃焼し、高高度では比推力の大きい水素の燃焼に切り替える三液推進系の開発も行われている。 液体水素と液体酸素の組み合わせでは、液体酸素の重量が全体の2/3以上を占めるため、空気中の酸素を利用するエンジンを利用できれば比推力を大幅に向上させたのと同じ効果がある。 そこで、ジェットエンジンを使用する方法が考えられる。一般的なターボジェットエンジンの最大速度はマッハ3程度(秒速1km程度)であり、まったく足りない。そこで超音速に達してからは、衝撃波を利用して空気を圧縮し、燃料を混合して噴射するラムジェットエンジンを使用する。とくに、エンジン内の流速を超音速としたラムジェットエンジンをスクラムジェットエンジンと呼ぶ。これを使用して、大気圏内でできるだけ加速し、大気圏外に出てからはロケットエンジンを使用するのである。このような機体は通常の滑走路から水平に離陸できるため、特に宇宙航空機(スペースプレーン)と呼ばれる。 ただし、現状、ジェットエンジンの推重比はロケットの比ではない。 スペースプレーンは理想的な宇宙往復手段と考えられたため、1980年代以降盛んに研究が行われている。しかし、肝心のスクラムジェットエンジンの開発は難航しており、2007年現在でも実用化の目処は立っていない。また、ジェットエンジン・スクラムジェットエンジン・ロケットエンジンの3種類のエンジンを使い分けるため、整備を複雑にし、重量を増加させる。仮にスクラムジェットエンジンの開発に成功しても、スペースプレーンは大気圏外に出てからロケットエンジンで加速する方が効率的であり、またロケットエンジンは離陸時にも使用可能であるからジェットエンジンは必要なく、結局ただのロケットの方が合理的であるとの意見もある。 もうひとつの方法としては、空気液化サイクルエンジン (Liquefied Air Cycle Engine, LACE) がある。これは、超音速飛行で圧縮された空気を液体水素で冷却して液体空気にし、これを酸化剤としてロケットエンジンに供給するものである。燃料タンクには凍結した水素と液体水素の混合物(スラッシュ水素)を入れておき、空気液化で加熱された水素を戻して融解させ、液体になった水素をエンジンや空気液化装置に供給する。低速時と大気圏外では、ロケットエンジンは液体酸素を使用する。この方法では、エンジン本体はロケットエンジンのみとなり、スクラムジェットエンジンを使用するよりは簡素化される。しかし、空気を瞬時に液化したり、スラッシュ水素で燃料を供給する方法は基礎研究段階であり、実用化の目処は立っていない。
概要
必要な技術
高性能なエンジン
充分に軽量であること
大気圏再突入能力
着陸能力
簡便で経済的な整備により、繰り返し飛行可能であること
故障を早期に検知し、拡大を防止して、残った正常な機能で飛行を継続できること
主要部分の寿命が充分に長く、減価償却により建造費用を回収できること
エンジン性能の向上
ロケットエンジンの改良X-33のリニアスパイクエンジン
空気吸い込みエンジンスペースプレーン X-30(想像図)