南部料理(なんぶりょうり、cuisine of the Southern United States) は、アメリカ合衆国南部、メリーランド州からペンシルベニア州とデラウェア州を隔てるメイソン=ディクソン線より南、オハイオ川沿い、ミズーリ州とオクラホマ州とテキサス州の西から南へ広がる地域の伝統的郷土料理。 主にアフリカ系のソウルフード、イングランド料理、スコットランド料理、アイルランド料理、ドイツ料理、フランス料理、ネイティヴ・アメリカ料理の影響を受けている。バージニア州南東部およびノースカロライナ州北西部のタイドウォーター料理、アパラチア料理、ケイジャン料理、クレオール料理、ローカントリー料理、フロリダ州のフロリビアン料理などが南部料理の一例である。近年、南部料理は北部に広がってきており、アメリカ料理の他の分野の発展に影響している。 スクアッシュ、トマト、グリッツを含むトウモロコシなど多くの素材および地下で行なうピット・バーベキューはカド、チョクトー、セミノールなど南東部に住んでいたネイティヴ・アメリカン料理の流れを汲んでいる。また砂糖、小麦粉、牛乳、卵を使用するパンやチーズなど多くのメニューがヨーロッパから来ている。黒目豆、オクラ、米、ナス、ゴマ、モロコシ属、メロン、およびスパイスはアフリカを起源としている。 南部の朝食はイギリスのフル・ブレックファストからきている。ケイジャン料理やクレオール料理の多くはフランス、西アフリカ、カリブ地方、スペインからやや影響を受けている。フロリビアンはよりスペイン系で明白にカリブ地方の影響を受けており、テクス・メクス料理はメキシコやネイティヴ・アメリカンの影響を受けている。 伝統的南部料理はフライドチキン、パープル・フル・ピーなどのフィールド・ピー、コラード・グリーンやカラシナやカブの葉やポーク・サラダなどの葉野菜、マッシュド・ポテト、コーンブレッドまたはコーン・ポーン、スウィート・ティなどである。またデザートは主にスウィート・ポテト・パイ、チェス・パイ、シューフリー・パイ、ピカン・パイ、ピーチ・パイなどのパイの他、ピーチやブラックベリーなどのコブラーなどである。 これ以外にもグリッツ、カントリーハム、ハッシュパピー、サカタシュ、ミント・ジュレップ、チキン・フライド・ステーキ、バターやジャムやハチミツやグレイヴィやモロコシ蜜をつけて食べるバターミルク・ビスケット、甘い唐辛子とチーズから作るピメントチーズ、茹でた、または焼いたサツマイモ、主にリブのピット・バーベキュー、フライド・キャットフィッシュ、フライド・グリーン・トマト、ブレッドプディング、加熱調理した、または漬けたオクラ、バター・ビーン、インゲンマメ、黒目豆などがある。 フライド・チキンは海外で食べられる南部料理で最もよく知られている。イギリスではチキンを焼いたり茹でたりするが、スコットランド人および近年のスコットランドからの南部への移民はディープ・フライするのが伝統であった[3][4]。またバージニア・ハムに代表されるポークも重要であり、メリーランド州南部にはスタッフド・ハムがある[5]。ホリデイの集まりで食される伝統的豚肉バーベキューはヴァージニア州やサウスおよびノースカロライナ州ではピッグ・ピッキンと呼ばれている。サヤインゲンはベーコンや塩漬け豚肉と調理され、朝食においてビスケットはハムと共に出されることが多い。レッド・アイ・グレイヴィやグレイビーソースと共に出されるハムはディナーの定番メニューである。 肉なしで野菜のみの食事は南部の伝統的食事ではなく、料理の課程で肉または肉製品を使用することがある。白豆または茶豆と葉物を混ぜたビーンズ・アンド・グリーンズは南部で最も人気のあるメニューである。カブの葉にさいのめ切りにしたカブと豚の背油を混ぜる。ビーンズ・アンド・コーンブレッドはインゲンマメとハムまたはベーコンを煮込み、コーンブレッドを添え、付け合わせにコラードやカブの葉が添えられることもある。 南部料理を提供するチェーン店は全米に広がっているが、その一部は南部のみで営業している。ピット・バーベキューは南部のどこでも人気であり、僻地でさえも地元運営のバーベキュー場があることが多い(米国の他の地域では珍しい)。また南部では家族経営のレストランが多く存在している。南部料理のレストランには庶民的なイメージがあるが、中には高級志向のレストランもある。 南部料理を提供する主なレストランはクラッカー・バレル、ケンタッキー・フライド・チキン、ワッフル・ハウス、ボジャングルズ・フェイマス・チキン・アンド・ビスケット、チキン・エクスプレス、チャーチズ・チキン、ミセス・ウィナーズ、ソニーズ、チューダーズ・ビスケット・ワールド、ポパイズ・ルイジアナ・キッチンなどがある。 地域によって様々な南部料理がある: オクラホマ州にはコーンブレッド・アンド・ビーンズや朝食メニューのビスケット・アンド・グレイヴィなどグレインや豆をベースにしたメニューが多い。ミシシッピ州には養殖ナマズが盛んで、州内には老舗の漁場が多い。アーカンソー州は全米最大の米生産地であり、またナマズやポーク・バーベキューも有名である。テネシー州はカントリーハムで有名で、メンフィスには多数の著名なバーベキュー・レストランがあり、5月にはバーベキュー・コンテストも開催される。メリーランド州は青いソフトシェルクラブおよびスミス・アイランド・ケーキで有名である。
概要
伝統的南部料理「アメリカ合衆国の南部料理一覧」も参照ビスケットとハチミツ
南部料理のレストラン「南部料理」といえばこのフロリダ・パンハンドルのレストランの看板を思い出すアメリカ人も多いフライド・チキン
地域による南部料理
ルイジアナ州南部にはケイジャン料理とクレオール料理がある。ルイジアナ州は唐辛子入りホット・ソースおよびザリガニの全米最大の生産地である[6]。
米はサウスカロライナ州の海岸部で昔から重要な作物であり、米と黒目豆と塩漬け豚肉を混ぜたホッピン・ジョンやチャールストン・レッド・ライスが主な郷土料理である。
南部では地域によってバーベキューの様々なバリエーションがあり、様々なバーベキュー・ソースがある。
アーカンソー州ではライスランド・ライスおよびスウィート・コーンを生産しており、どちらもアーカンソー南東部の料理である。
ヴァージニア州ではスミスフィールド・ハムを生産している[7]。