南極隕石
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裸氷の上の南極隕石ANSMETでの探索の様子

南極隕石(なんきょくいんせき)とは、南極で採集された隕石のこと。
概要

かつては南極で隕石はごく僅かしか見つかっていなかったが、1969年日本南極地域観測隊が大量に発見したことを切っ掛けに他の国も採集を始めた。南極隕石は2010年の時点で4万8000個あり、2010年の時点で見つかっている全ての隕石のおよそ77%を占めている。

南極隕石に対し、南極以外の場所で発見された隕石を非南極隕石という[1]。非南極隕石と比べて、南極隕石の特長としては以下の3つの事柄が挙げられる。
数が多いこと

雪氷上にあるため発見しやすいこと

風化や汚染がほとんど進んでいないこと

これら3つの特長は、隕石研究の分野に発展をもたらした[2]。南極隕石は主に山脈の麓の裸氷帯で見つかる。これは南極に落ちた隕石が氷河氷床によって特定の場所に集積されるためである、と考えられている。
歴史

南極隕石発見数[3]年日米その他
19121(豪)
19612(ソ) 
19622
19641
19699
197312
1974663
1975308
197611(日米共同)
1977249(日米共同)
1978228(日米共同)6(NZ
19793,69782
198013103
1981133373
1982211113
198342369
198459274230(独)
1985369
1986817528
1987352690
19881,59790098(欧共同探査)
1989
1990481,100264(欧共同探査)
1991613
19923255
199385354(欧共同探査)
199416610
199523848(欧共同探査)
1996390
19971,10066(欧共同探査)
19984,180192
1999945
20003,554
合計16,20110,588869
2000年までの南極隕石の総数 27,658
2010年までの南極隕石の総数約48,000[4]

1911年ロバート・スコット南極点を目指す途中で隕石を発見したと記録に残している。だが現物は残っていない[5]。南極横断山脈のベアドモア氷河の源頭にある裸氷帯で見かけた、という記述があるのみである。スコット隊が持ち帰ったのは隕石ではなく、生物が生息していた証拠となる石炭や植物の化石などであった[6]

同じシーズンの1912年南磁極付近で活動していたオーストラリアのモーソン隊が1キログラムの隕石を採集した。発見場所に因んでアデリーランド隕石と命名されたこの隕石が、南極隕石第一号である[7][8]

1957年7月1日から1958年12月31日まで続いた国際地球観測年を皮切りに、世界の各国が南極観測を開始した。しかし各国の基地は沿岸部やその近くに建設されることが多かった。フィールド調査が内陸部まで、つまり隕石の集積地である裸氷帯まで及ぶには時間を要したのである[9]

各国の基地の中でも日本の昭和基地やまと山脈の近くに位置している。このことが後述する南極隕石の大量発見をもたらした[10]。やまと山脈付近では南極隕石のおよそ半分が見つかっており、南極隕石の最大の産地と表現されることすらある広い裸氷帯がある[11]

1966年の時点で日本が所有している隕石の総数は20数個[12]、カタログに登録されている隕石の総数はおよそ2000個、そのうち南極隕石の総数は4個[13]1969年まででも南極隕石は4箇所から合計6個みつかっただけだった[14][15]。これらの南極隕石は全て隕石を探して見つけたものではなく、別の調査や旅行の途上で発見されたものである。1969年に日本の南極地域観測隊の10次隊が南極隕石を9個発見したことも含めて、すべて偶然の産物であるとみなされていた[15][16]
日本隊の大量発見

1969年12月、10次隊がやまと山脈付近の裸氷帯で氷床の流れを調査をしていた所、思いがけず隕石を9個発見した[5][17]。14次隊は10次隊が調査したのと同じ裸氷帯で8個、別の裸氷帯で4個、合計12個の南極隕石を発見した[18][19]。この事実は日本国内よりもむしろ日本の海外で関心を引き起こしていた[16]。近づいて確かめてみると、皆「隕石」であった。

ここに来るまで隕石も何個か拾えるのではないかと期待する気持ちもあった。

ところが、裸氷のルート上を走っただけで10数個の隕石を発見してしまった。裸氷上の“黒い物”の全部が隕石、これはただ事ではない。 ? 矢内桂三(15次隊について書いている)[20]

そして翌年(1974-1975年)には15次隊がそのシーズンだけで663個発見し[21][22]、次のの16次隊から隕石採集が日本の南極観測隊の正式なプロジェクトとなった[21][22]。16次隊は307個の南極隕石を採集した[5]。そして1981年、日本の国立極地研究所に隕石資料部門が専任スタッフ1名とともに発足した[23]。1998年を以って、同部門は南極隕石研究センターへと発展的改組された[23]

その後の日本隊の隕石採集は、隕石採集中に雪上車クレバスの中へ転落し、重傷者2名を出す事故を29次隊の時1989年1月に起こしたため[24]、以後10年間は南極隕石探査プロジェクトが中断していた[25]。隕石採集が再開されたのは1997年の39次隊の時のことである。19年ぶりとなるこの時もやまと山脈で隕石採集をして、4180個の隕石を採集した[26][27][28]。以後も隕石収集を継続して、2000年には1万6200個の隕石を保有するに至った[23]2009年の第51次隊は635個の南極隕石を採集した[29][19]
世界の観測隊による採集

日本隊の大量発見に倣ってアメリカ隊、ドイツ隊、ニュージーランド隊、イタリア隊、間をおいて中国隊、韓国隊も隕石収集を始めた[30][31]。特に1998年から隕石収集を始めた中国中山基地近くのグローブ山(グローブ山脈)で、2010年の時点で1万個以上の、2011年の時点で1万2000個弱の南極隕石を採集している[32][33]

2010年の時点では、南極隕石は約4万8000個あり[4]、日本はそのうち1万6836個を保有している[19]。2010年の時点で南極隕石を最も多く保有しているのはアメリカであり、日本の保有数を上回る約1万8300個の南極隕石を保有している[34]
特長
数が多い

非南極隕石と比べて南極隕石は非常に数が多い。

非南極隕石の総数は、2006年の時点で約7000個[15]、2010年の時点では約1万4000個ある[34]。これに対し、南極隕石は2002年の時点で3万3693個[35]、2010年の時点で約4万8000個ある[4]


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