卍
訳題Quicksand
作者谷崎潤一郎
国 日本
言語日本語
ジャンル長編小説
発表形態雑誌連載
初出情報
初出『改造』1928年3月号-1929年4月号、6月号-10月号、12月号、1930年1月号、4月号
刊本情報
出版元改造社
出版年月日1931年4月
装幀中川修造
『卍』(まんじ)は、谷崎潤一郎の長編小説。両性愛の女性と関係を結ぶ男女の愛欲の物語。2組の男女の関係が交錯する「卍」模様の倒錯的な愛が大阪弁によって描かれている[1]。
雑誌『改造』の1928年(昭和3年)3月号から翌1929年(昭和4年)4月号、6月号から10月号、12月号、1930年(昭和5年)1月号と4月号に断続的に連載された[1]。単行本は1931年(昭和6年)4月に改造社より刊行された[2]。 園子による「先生」への告白録という形式で話が進む。日本画の趣味を持つ園子は、夫・孝太郎にすすめられて女子技芸学校に通う。そこで、他教室の徳光光子にひそかな好意を寄せるようになる。園子は無意識のうちで楊柳観音の絵を徳光光子に似せ、それがきっかけで彼女と面識を持つ。そうして楊柳観音の絵を皮切りに、学校では「2人が同性愛の関係にあるのではないか」という噂が広まった。 当初は根も葉も無い噂に過ぎなかったが、会うたびに2人の親密度は増していき同性愛関係を結び、遂に園子の夫に知られて夫婦喧嘩に至る。そうした中、光子の妊娠が判明する。光子と婚約していた綿貫栄次郎が園子の前に現れ、光子との関係を強化するために誓約書を作る。かくして、その誓約書が新聞社に知られてしまい、園子と光子との関係は白日の下に晒されてしまうのだった。
あらすじ
登場人物
柿内園子
夫がいながら徳光光子と交際している。
柿内孝太郎
園子の夫。事務所を借り、弁護士開業。妻が光子と交際していることを苦々しく思っていたが、光子と関係を持つようになる。
徳光光子
園子と性的な関係を持っていながら、男性とも戯れる女性。
綿貫栄次郎
光子と婚約していたが、彼女の同性愛の噂によって断念した。性的不能者。
映画化
『卍』(1964年・大映)
監督:増村保造。脚本:新藤兼人。出演:若尾文子、岸田今日子、川津祐介、船越英二ほか
『卍』(1983年・東映)
監督:横山博人。脚本:馬場当。出演:樋口可南子、高瀬春奈、小山明子、原田芳雄ほか
『卍/ベルリン・アフェア』(1985年・イタリア、ドイツ)
監督:リリアーナ・カヴァーニ。出演:グドルン・ランドグレーベ
『卍』(1998年・ギャガ・コミュニケーションズ)
監督:服部光則。出演:坂上香織、真弓倫子ほか
『卍』(2006年・アートポート)
監督・脚本:井口昇。出演:不二子、秋桜子、荒川良々、野村宏伸ほか
『卍』(2023年・レジェンド・ピクチャーズ)
監督:井土紀州。脚本:小谷香織。出演:新藤まなみ、小原徳子、大西信満、黒住尚生ほか