半落ち
著者横山秀夫
発行元講談社
ジャンル小説
国 日本
言語日本語
ページ数360
コードISBN 4062751941
ISBN 978-4062751940(文庫本)
ウィキポータル 文学
『半落ち』(はんおち)は、横山秀夫の小説。またそれを原作とするテレビ・映画作品である。
「半落ち」の原義は警察用語で、「一部自供した」という意味である。 小説は2003年第128回直木賞の最終選考過程まで残るものの落選した。選考後、一部選考委員から「致命的欠点が存在」と指摘され、議論を巻き起こした(詳細については横山秀夫の項を参照)。作品は辛辣な批評を受けたものの、読者の好意的な評価を得てベストセラーになるとともに、2003年週刊文春ミステリーベスト10第1位に選ばれている。 小説を原作とした映画は、2005年第28回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、主演の寺尾聰は最優秀主演男優賞を獲得するに至っている。音楽担当の寺嶋民哉も優秀音楽賞を受賞。 また、テレビドラマ版は2007年12月8日に『土曜ワイド劇場』30周年・放送1500回記念特別企画としてテレビ朝日系列で放送された(BS朝日でも2008年1月20日に放送された)。 「私、梶聡一郎は、3日前、妻の啓子を、自宅で首を絞めて、殺しました」 県警捜査一課強行犯係指導官、志木和正警視は、連続少女暴行事件の捜査に当たっていた。犯人確保の電話を待つが、かかってきた電話の内容は、上司からの「現職警察官による、妻の殺人の取り調べを担当せよ」という依頼だった。自首してきた犯人、元警察官の梶聡一郎は、アルツハイマー病に侵された妻の啓子を殺害した動機、経緯についてすべて正直に話し、事件は「完落ち」で終わるかに見えた。 だが、事件が発生してから出頭するまでの「空白の二日間」について、梶は一切の供述を拒否する。その後、家宅捜索と新聞社によって、「空白の二日間」に梶は歌舞伎町へ行ったらしい事がわかった。また、梶の自宅には「人間五十年」という奇妙な書が残されていた。「空白の二日間」の供述をじっくりと取ればよい、と考えていた志木だが、「歌舞伎町」の悪いイメージが独り歩きすることを恐れた上層部は、保身のため、梶に虚偽の供述をさせるよう志木に強制する。 事件は検察にまわされ、志木と面識のある地方検察庁三席検事、佐瀬銛男は、供述が捏造であることを見抜き、警察内部の調査を進めようとする。志木に捜査を託された佐瀬は、県警に無断で検察による梶の家宅捜索を行うが、肝心な物証はすでに県警に持ち去られた後だった。いよいよ警察本部の調査に乗り出そうとしたとき、横領の疑いで以前から内偵を受けていた検察内部の人間が、置き引きにより県警に逮捕される。上位捜査機関である検察の人間が、下位組織の警察に逮捕されるなどということは、検察にとってあってはならない恥辱である。県警は検察に「逮捕は検察内部の調査により行われた」こととする代わりに、梶の事件について、供述の捏造を黙認するよう取引を持ちかけた。検察は取引に応じ、県警の不正を暴こうとした佐瀬の努力は闇に葬られる。 偶然にも、佐瀬の口論を聞いてしまった東洋新聞支局記者 中尾洋平は、独自に調査を開始し、梶聡一郎の「空白の二日間」と「供述の捏造」を説明するための情報を集め始める。駆け引きの末、ついに一大スクープを得たが、警察、検察の隠蔽にあい、立ち消えとなってしまう。 佐瀬と同期生の居候弁護士 植村学は、被害者の姉(=梶の義姉)である島村康子に、梶の弁護を引き受けたいと持ちかける。その裏には『人権派で名を上げたい』という考えがあった。梶の私選弁護人となった植村は、島村から梶は歌舞伎町に行ったことをつかむが、梶からは証言を得ることができなかった。この不完全な証言では不利になると考えた植村は、島村の証言を公表しなかった。 時間がたち、事件も忘れ去られたころ、裁判官の藤林圭吾は、この事件の担当になる。警察発表に疑念を持ちつつ、初公判に臨むが、警察、検事、弁護士までが、「空白の二日間」について口をつぐんでいた。現実に藤林は驚愕するが、高名な裁判官だった父もアルツハイマー病に侵されており、梶の妻のように「自分がまともなうちに殺してくれ」と、妻に頼んでいたことを知る。裁判で、佐瀬は梶を厳しく糾弾しながらも、懲役4年という短い求刑をする。藤林は真相の解明を諦め、その求刑を受諾することにした。 定年間近の刑務官 古賀誠司は、新しく迎えたおかしな受刑者、梶聡一郎の処遇に困っていた。そこに志木という男からたびたび電話が入るようになる。そして遂に志木は、「人間五十年」の謎の解明に成功する。 半落ち 新聞記者の中尾洋平が、「中尾洋子」として女性記者に変更されている。 2005年3月23日にTBS系の「水曜プレミア」でテレビで初めて放送された。2007年12月27日にテレビで再放送されて、視聴率は11.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
受賞歴等
ストーリー
映画
監督佐々部清
脚本田部俊行
佐々部清
原作横山秀夫
出演者寺尾聰
原田美枝子
吉岡秀隆
鶴田真由
伊原剛志
高島礼子
樹木希林
西田敏行
柴田恭兵
音楽寺嶋民哉
主題歌森山直太朗『声』
撮影長沼六男
配給東映
公開 2004年1月10日
上映時間121分
製作国 日本
言語日本語
興行収入19億円[1]
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出演者
梶聡一郎(元・県警警務部教養課次席・警部) - 寺尾聰
志木和正(県警捜査第一課強行犯係指導官・警視) - 柴田恭兵
佐瀬銛男(地検検事) - 伊原剛志
梶啓子(聡一郎の妻) - 原田美枝子
島村康子(啓子の姉) - 樹木希林
中尾洋子(新聞記者) - 鶴田真由
藤林圭吾(裁判官特例判事補) - 吉岡秀隆
藤林澄子(藤林の妻) - 奥貫薫
藤林圭一(元裁判官で藤林の父) - 井川比佐志
辻内(裁判長) - 本田博太郎
片桐時彦(洋子の上司) - 田辺誠一
植村学(弁護士) - 國村隼
植村亜紀子(学の妻) - 高島礼子
高木ひさ江(啓子の主治医) - 奈良岡朋子
笹岡(県警警務部長) - 斉藤洋介
鈴木孝夫(地検検察事務官) - 田山涼成
岩村肇(県警刑事部長) - 石橋蓮司
加賀美康博(県警本部長) - 嶋田久作
古賀誠司(刑務官) - 笹野高史
小国鼎(地検検事正) - 西田敏行[2]
その他
高野しず子 - 岩本多代
伊予数男 - 中村育二
池上一志 - 高橋一生
梶俊哉(梶夫妻の息子) - 石田法嗣
嶋尾康史、豊原功補、寺杣昌紀、加藤満、小川敏明、永倉大輔、並樹史朗、永井杏、久保田智子 ほか
スタッフ
監督 - 佐々部清
脚本 - 田部俊行、佐々部清
音楽 - 寺嶋民哉
撮影 - 長沼六男
美術 - 山崎秀満
照明 - 吉角荘介
録音 - 高野泰雄
編集 - 大畑英亮
助監督 - 高橋浩
製作担当 - 林周治
スクリプター - 江口由紀子
音響効果 - 佐々木英世(東洋音響)
現像 - 東映ラボ・テック
ロケ協力 - 高崎市、高崎フィルム・コミッション、富岡市、水上町 ほか
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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