午前と午後
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12時間制の針式のアナログ時計では、よく121?11で表される。

午前(ごぜん)と午後(ごご)は、正子(真夜中)と正午(真)を境界にした時刻の区分である。時刻を12時間制で表現する場合は「午前」または「午後」を付加する。
概要

12時間制は1日時刻真夜中の正子と真正午を基準にして2等分し、正子から正午までを「午前」、正午から正子までを「午後」[注釈 1]とする。正子の「子」は十二時辰の1番目に当たる子の刻(ねのこく)で、午前と午後および正午の「午」は十二時辰の7番目に当たる午の刻(うまのこく)のうちで午の正刻である。十二時辰で「午の刻」は24時間制の11時から13時までの2時間を指す。

午前と午後は単に1日の前半と後半を示すだけでなく、12時間制で0時から12時までの時刻と組み合せて時刻を表す。「○○中」は始点と終点の間を示すことから、午前は太陽の正中により終点が明確で午前中(ごぜんちゅう)とも称するが、午後はその終点が不明確なため、「午後中」とは言わない[1][2][3]
西欧語での表現

英語では午前を「ante meridian」 、午後を「post meridian」といい(ラテン語の原形はそれぞれ ante meridiem / post meridiem であり、meridiem は昼の真中を意味するので、昼の中央の前、または後という意味になる。即ち日本語の「正午」の前か後かで区分される)[4]、a.m. / p.m.と略す。A.M. / P.M.、am / pm、AM / PM、.mw-parser-output span.smallcaps{font-variant:small-caps}.mw-parser-output span.smallcaps-smaller{font-size:85%}am / pm などとも書く。英語の語法では、これらは「1:00 p.m.」や「1 p.m.」のように数字の後に付けるのが正しく、「p.m. 1:00」、「p.m. 1」などは誤りである。日本語における用法でみられる、時刻と組み合わせずに単に「a.m.」/「p.m.」として午前/午後を指す表現方法は英語にはなく、午前中は「in the morning」、午後は「(in the) afternoon. 」で表される。数字との間はスペースを空けることも空けないこともある。

日本では「PM1時」というのはもちろん、その標準の短縮表記となる「午後 1:00」や「午後 1:00:00」といった書き方もあまり日常的には使われず、この場合、短縮しなければ「午後1時」と書かれたりする一方、コロンを用いてできるだけ短縮して表す場合は、日本語を敢えて使わず英語表記で「PM 1:00」や「PM 1:00:00」と書かれることが普通である。

また、特に日の出ごろから12時までを午前(午前中)、12時から日没ごろまでを午後ということもある。英語ではこの意味での午後を、(after noon ではなく1語で)afternoon と呼んで区別する。

ante meridiem / post meridiemというラテン語とそれに基づくヨーロッパ語それ自体に問題があると言う指摘がある[5]。正午の後、何時間という意味で、午後1時半というのはいいとしても、午前10時半は、正午の前1時間半だから理論的に午前1時半と言うべきであると言う[4]。もっとも、早乙女はこれを推奨しているのではなく、午前・午後はこのような非論理性があるから、それを止めて24時間制を採るべきだと論じているのである。この指摘はヨーロッパの多くの言語に当てはまるが、ポーランドの「時に関する法律」(1922)では、「正子後」という意味でpo po?nocyという言葉を用いているため、この問題がない。
午前・午後の法令上の根拠

日本において、正午を過ぎてからの時間帯を「午後」と称する用例は8世紀からみられるが[6]、定時法[注釈 2]の下における午前・午後の概念の採用を明示した法令としては、「明治5年11月9日太政官布告第337号(改暦ノ布告)」[7][8][注釈 3]がある。これが定時法の初導入だったとは限らないが[注釈 4]、「午前」「午後」という語を明示している。この太政官布告は現在も法令として有効である[9][注釈 5]

この告示の箇条書きは5箇条からなるが、その第3条は次のようになっている。


時刻ノ儀是迄晝夜長短ニ隨ヒ十二時ニ相分チ候處今後改テ時辰儀時刻晝夜平分二十四時ニ定メ子刻ヨリ午刻迄ヲ十二時ニ分チ午前幾時ト稱シ午刻ヨリ子刻迄ヲ十二時ニ分チ午後幾時ト稱候事

口語訳: 「時刻はこれまで昼夜長短に従ってそれぞれを12等分してきたが、今後はこれを改めて、時計の時刻を昼夜24等分し、子の刻から午の刻までを12時に分けて午前幾時と称し、午の刻から子の刻までを12時に分けて午後幾時と称する」[9]

この詔書には次のような「時刻表」が付されている[注釈 6][11][12]

午前

零時即午後
十二字子刻_
一0時子半刻二0時丑刻_三0時丑半刻
四0時寅刻_五0時寅半刻六0時卯刻_七0時卯半刻
八0時辰刻_九0時辰半刻十0時巳刻_十一時巳半刻
十二時午刻_ 
午後一0時午半刻二0時未刻_三0時未半刻四0時申刻_
五0時申半刻六0時酉刻_七0時酉半刻八0時戌刻_
九0時戌半刻十0時亥刻_十一時亥半刻十二時子刻_

子刻(正子)については、午前の欄の最初に「(午前)零時即午後十二字[注釈 7](子刻)」、つまり「午前0時=午後12時」と明記されている。そして、午後の欄の最後にも「午後12時」とあり、午前・午後の両方の欄に「子刻」が示されている。つまり正子(真夜中)については、日本における現行法令の上で「午前0時」、「午後12時」という2つの言い方が認められている。

しかし、午刻(正午)については、午前の欄にのみ「午前12時」とのみ記載されており、午後の欄には午刻を表す時刻の記載がない。つまり「午後0時」という言い方は、日本における現行法令に基づく限り、「定義上は存在しない」ということになる[13]

しかし、現行法規では、「午前十二時」の表現を用いる立法例は確認されておらず、逆に本来は定義されていない「午後零時」の表現を用いる法令は存在している[14]
時刻表現「正子の17分後」の時刻を示す時計。表示は「12:17 AM」(PMなら左上のランプが点る)だが、日本式の表現では「午前0時17分」である。24時間制アナログ時計。(午前)9時53分を示す。一般的なアナログ時計と異なり1日を午前と午後に分けず、短針(時針)は1日で一周する。

正子(24時間制の0時00分、真夜中)と正午(24時間制の12時00分、真昼)は、午前と午後の境界をなしているため、その付近の12時間制での時刻表現については様々な混乱がある。特に、正午すなわち昼の12時または0時を表現する「午前12時」「午後12時」「午後0時」等の表現が混在し、また、正午からの1時間をどのように表現するか、表現方法や指し示す時刻の混乱が想定される。 午前・午後を使わず24時間制にすれば、これらの混乱は完全に解決する。

例えば、正子の2時間後が午前2時、正午の2時間後が午後2時であることから、正子と正午も同様に、正子の12時間後である正午は午前12時、正午の12時間後である正子は午後12時であると考えると連続性がある。このような考え方を便宜上「日本式」とする。「日本式」では「午後12時=午前0時」であり「午前12時≠午前0時」「午後12時≠午後0時」である。

太政官布告第337号の表(前述)はこの方式をとっており、国立天文台の広報普及室[11][15]や後述の情報通信研究機構(NICT)の周波数標準課[16][17]も同様のアナウンスをしている。
12時過ぎの時刻表現

しかし、「日本式」の考えを正子または正午の1時間以内の時刻に推し進めると、問題が起こる。例えば、「午前12時20分」という表現を正午の20分後の意味で用いると、正午を過ぎても午前を用いていることになり、原義に照らすと明らかに誤りである。国立天文台広報普及室は「このような場合は午後0時20分と言うほうがいい」としており、情報通信研究機構周波数標準課も「午前・午後とも12時00分00秒に終わる」としている。しかし現実の言語慣習としては、「午前12時20分」又は「12時20分」という言い方は頻繁に使われている。アナログ時計の盤面には(0の文字ではなく)「12」の文字があるので、時計を見ながら「12時20分」というのが自然だからである。

このような問題が起きるのは、午前・午後と12時間制の時刻を一体として考えるからでもある。両者を分離して考えればわかりやすい。12時間制はアナログ時計にあるように12時間で時刻が循環し、したがって12時=0時である。一方、午前/午後は正午の前/後であるから、両者を組み合わせれば正午と正子以外は時刻表現が一義的に確定する。

事実、英米では前記のような解釈をし、昼の真中を意味する「meridiem」の頭文字「m」を用いて、正午の前(正子の後)なら必ず「a.m.」、正午の後(正子の前)なら必ず「p.m.」と表現するので「日本式」のような問題はない(「a」は「ante」、「p」は「post」の略、「#西欧語での表現」参照)。つまり、12:20 a.m.は「正午よりも前」であるから正子の20分後、12:20 p.m.は「正午よりも後」であるから正午の20分後である。
正子と正午の時刻表現


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