十二夜
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この項目では、ウィリアム・シェイクスピア戯曲について説明しています。ヨーロッパの民俗行事については「十二夜 (民俗行事)」をご覧ください。
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『十二夜』(じゅうにや、Twelfth Night, or What You Will)は、イギリス劇作家ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇である。副題は「御意のままに」を意味する。1601年から1602年頃に、クリスマスのシーズンの終わりを告げる十二夜で上演するために書かれたと考えられているが、劇中に十二夜の行事に関わるような台詞はない。この芝居は双子の兄妹であるヴァイオラとセバスチャンが船の難破で離ればなれになってしまったことから始まる。妹のヴァイオラは少年に変装するが、自分が仕えているオーシーノ公爵に恋をしてしまう。オーシーノは伯爵家の令嬢であるオリヴィアに恋をしているが、オリヴィアはヴァイオラを男だと思い込んで思いを寄せるようになってしまう。マッテオ・バンデッロの物語にもとづくバーナビー・リッチの短編「アポロニアスとシッラ」の物語を部分的に織り込んでおり、音楽や馬鹿騒ぎに溢れた芝居でもある[1]。記録に残っている最初の上演は1602年2月2日、暦の上でクリスマスの時期の正式な終わりであるキャンドルマスの日のものである。1623年にファースト・フォリオに入るまでは一度も出版されたことがなかった。
登場人物
ヴァイオラ(シザーリオ)
物語の主人公。シザーリオは男装時の名前。
オーシーノ公爵
ヴァイオラの仕える
イリリア公爵。オリヴィアに求婚。
オリヴィア
イリリアの伯爵令嬢。
サー・トービー・ベルチ
オリヴィアの叔父。
サー・アンドルー・エイギュチーク
オリヴィアの求婚者。
マライア
オリヴィアの侍女。
マルヴォーリオ
伯爵家の執事
フェステ
伯爵家の道化
セバスチャン
ヴァイオラの双子の兄。
アントニオ
セバスチャンの友人。
舞台

『十二夜』の舞台であるイリリアは、この芝居のロマンティックな雰囲気に重要な貢献をしている。イリリアはバルカン半島の西側の地域に古代に存在した国名である。アドリア海の東側の海岸が古代イリリアの一部であり、この海岸という設定が芝居にとっては重要である。この海岸は現代の国名で言うと、北はスロベニアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナ、南はモンテネグロアルバニアまでをカバーする地域である。ラグーサ共和国はここに含まれ、おそらくこのあたりが舞台として想定されている[2]。イリリアはシェイクスピアがもっと早い時期に書いた芝居である『ヘンリー六世 第2部』でも海賊が活動している地域として言及されている。登場人物の名前のほとんどはイタリア風であるが、喜劇的な人物にはイングランド風の名前の者もいる。おかしなことに、「イリリアの」貴婦人であるオリヴィアのおじ、サー・トービー・ベルチはイングランド人である。芝居の設定には他にもイングランドらしいところがあり、ヴァイオラは16世紀ロンドンの船頭がよく使っていた "Westward ho!" という表現を使用しており、さらにアントニオがセバスチャンにイリリアで一番いい宿として「エレファント」亭をすすめるが、これはグローブ座の近くにあったパブと同名である[3]
あらすじエドモンド・レイトンが描いたオリヴィア

双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が嵐に遭い、ヴァイオラはイリリアの海岸に打ち上げられる。彼女は消息の分からない兄を死んだと思い、身を守るため兄そっくりに男装してシザーリオと名乗り、イリリアの公爵であるオーシーノに小姓として仕えることにする。

オーシーノは伯爵の娘であるオリヴィアに恋をしていたが、兄の喪に服したいという理由で彼女に断られ続けていた。シザーリオをすっかり気に入ったオーシーノは、オリヴィアに自分の気持ちを伝えるよう命じる。密かにオーシーノに淡い思いを抱いていたヴァイオラはその命令に苦しむが、小姓としてその務めを果たす。オーシーノの想いを拒むオリヴィアだったが、使者としてやって来たシザーリオに心を奪われてしまう。それに気が付いたヴァイオラは、実るはずのない自分へのオリヴィアの想いを、オーシーノへの自分の想いと重ねて悲しむ。

一方、死んだとヴァイオラが思っていた双子の兄セバスチャンは、別の船の船長アントニオに助けられており、彼と共にイリリアにやって来ていた。アントニオはセバスチャンを気に入っていたが、オーシーノと過去に因縁がある関係で、セバスチャンと別れて人目に付かないよう行動していた。

オリヴィアにはオーシーノの他にも求婚者がおり、オリヴィアの叔父トービーの遊び仲間であるアンドルーもその一人だった。愛しいオリヴィアが公爵の小姓に熱を上げていると聞いたアンドルーは、トービーにそそのかされてシザーリオに決闘を申し込む。シザーリオは仕方なくその決闘を受けるが、シザーリオのことをセバスチャンだと思い込んだアントニオが割って入り、決闘を止める。その後、警備員に捕まってしまうアントニオだったが、ヴァイオラは彼が自分のことをセバスチャンと呼ぶのを聞いて、兄が生きていることを知る。

その頃、イリリア見物をしていたセバスチャンは、偶然にオリヴィアと出会う。セバスチャンは見ず知らずの美しい姫に求婚されて夢ではないかと戸惑うも、その申し出を受け入れる。オリヴィアはシザーリオにそれまで頑なに拒まれてきたこともあり、相手の気が変わらぬうちにとすぐに結婚式を挙げる。

その後、オリヴィアと出会ったオーシーノは彼女に求婚するも、いつも通り断られてしまう。さらには彼女が自分の小姓を夫と呼ぶのを聞いて、裏切られたと思ったオーシーノはシザーリオに激怒する。身に覚えのないヴァイオラはそれを否定するが、今度はオリヴィアが裏切られたと叫ぶ。そんな口論の最中にセバスチャンが現れ、一同は驚く。ヴァイオラとセバスチャンは互いに素性を確かめ合い、生き別れになっていた兄妹と知る。ヴァイオラを男と思って求婚したオリヴィアは恥じ入るが、オリヴィアもセバスチャンも互いに悪い気はせず、一方のオーシーノはシザーリオが女だと知り、改めて求婚する。こうして2組のカップルがめでたく誕生する。
材源

この芝居は主にイタリアの作品『リンガンナーティ』(Gl'ingannati、『欺かれた者たち』)をソースとしていると考えられている[4]。この作品はアカデミア・デッリ・イントロナーティ (Accademia degli Intronati) による共作で1531に書かれている。男性主人公オーシーノ (Orsino) の名前はブラチアーノ公爵ヴィルジニオ・オルシーニ (Virginio Orsini) からきているのではないかと推定されており、このイタリアの貴族は1600年から1601年にロンドンを訪問している[5]

もうひとつの種本である『アポロニアスとシッラ』 (Of Apollonius and Silla) はバーナビー・リッチの作品集である Riche his Farewell to Militarie Profession conteining verie pleasaunt discourses fit for a peaceable tyme (1581年)に収録されており、マテオ・バンデッロの物語の翻案である[6]アーサー・ボイド・ホートンによる「サー・アンドルー・エイギュチークを助けにくるサー・トービー・ベルチ」(1854年頃)

タイトルの「十二夜」は、クリスマスの12日後に行われる公現祭の夜の祝宴のことである。もともとはカトリックの祭日であったが、どんちゃん騒ぎの日となっていた。召使いが主人のような服装をし、男女も衣服を取り替えた。この祝祭儀礼とカーニヴァル的な反転は、一年の同じ時期に祝われた古代ローマの祭であるサトゥルナリアにもとづくものではないかと言われており、本作のジェンダーが混乱するプロットの文化的な起源である。エリザベス朝においても十二夜の祝いは馬鹿騒ぎを含むものであり、一時的にエンタテイメント、音楽、ママーズ・プレイなどをとりしきる権威を与えられた無礼講の王(ロード・オブ・ミスルール)が任命された。この芝居は、こうした無礼講が許される伝統的な祝祭の雰囲気を残した作品である[7]。このため、通常の物事のきまり、特にジェンダーロールの逆転が起こっている[8]。ひどいめにあって孤立するマルヴォーリオは、サー・トービー・ベルチが主導する、祝宴を楽しむ祭の共同体に敵対する存在として描かれている[9][10]
テーマ
ジェンダーロールと異性装

ヴァイオラのほかにも、シェイクスピア劇には異性装するヒロインがいる。シェイクスピアの時代の演劇では、若い男性が女役を演じており、そうした役者が一時的に男性らしいふりをする女性キャラクターに扮することで、入り組んだ変装にユーモアの要素が組み込まれるようになっている[11]。ヴァイオラは異性装をすることで、オーシーノとオリヴィアの間の使者を務めたり、オーシーノの秘密を知る親友となったりするなど、通常は男性のものとされる役割を自分のものとすることになる。しかしヴァイオラは、『お気に召すまま』のロザリンドや『ヴェニスの商人』のポーシャに比べると、男装によってプロットに直接介入することが少なく、「時」 (Time) にプロットの解決をゆだねている[12]


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