この項目では、1963年の映画について説明しています。
2010年の本作のリメイクについては「十三人の刺客 (2010年の映画)」をご覧ください。
2010年版映画をもとにしたノベライズ作品については「十三人の刺客 (小説)」をご覧ください。
十三人の刺客
監督工藤栄一
脚本池上金男
出演者片岡千恵蔵
里見浩太郎
内田良平
山城新伍
菅貫太郎
嵐寛寿郎
丹波哲郎
月形龍之介
音楽伊福部昭
撮影鈴木重平
『十三人の刺客』(じゅうさんにんのしかく)は、1963年(昭和38年)12月7日に公開された日本の時代劇映画。製作:東映京都撮影所、監督:工藤栄一、主演:片岡千恵蔵。この項目では本作のリメイク作品および、テレビドラマ、戯曲などの他媒体作品についても記述する。
東映京都撮影所による実録タッチの新路線「集団抗争時代劇」として製作された大作。クライマックスの約30分におよぶ13人対53騎の殺陣シーンは、時代劇映画史上最長とされた[注 1]。
封切り時の同時上映作品は『わが恐喝の人生』(監督:佐伯清 主演:梅宮辰夫・千葉真一)[1]。 弘化元年(1844年)、筆頭老中・土井大炊頭(どい おおいのかみ)邸の門前で、明石藩江戸家老の間宮図書が切腹した。間宮の遺体のそばには、将軍徳川家慶の異母弟である明石藩主・松平斉韶[注 2](まつだいら なりつぐ)の暴虐ぶりを訴えた直訴状が残されていた。斉韶は気が向けば女を犯し、刀を振り回して人を殺す異常者であったが、その血筋に加え、家慶は次の年に斉韶を老中に抜擢する意向を示していたことから、幕府としては表立って処罰ができなかった。このため土井は苦慮の末、ひそかに斉韶を排除することを決意し、自身が最も信頼する目付・島田新左衛門に秘密暗殺部隊の結成を命じる。暗殺の決行は幕府が関知しない凶行として処理されることが確実であり、実行部隊になることは襲撃成功の是非を問わず、生還したとしてもただちに刑死することを意味した。 新左衛門は「これが最後のご奉公」と心に期し、斉韶暗殺のため、甥である島田新六郎、徒目付組頭の倉永左平太、島田家食客の平山九十郎、平山の知人の浪人・佐原平蔵など12人を集める。12人は参勤交代の行列を待ち構えて討つ計画を決める。斉韶はその残忍さから参勤交代で明石に帰国する際に尾張国を経由する東海道を通行できないことに決められていたため、信濃国・美濃国を経由する中山道を利用していた。12人はまず江戸郊外の戸田の渡し場で行列を待ち受けるが、明石藩の参勤交代をつかさどる鬼頭半兵衛の計略により、通常より多人数、それも武士ばかりの行列が編成されていたため、身をひそめたまま襲撃を断念する。 12人は美濃国の落合宿を決戦の場所と定め、行列に先回りする。ここは道が狭く、斉韶一行に陣形を組ませずに少数対少数で迎え撃つことが期待できた。地元の郷士・木賀小弥太が協力を申し出て、刺客は13人となる。 一方、斉韶一行は、道中の尾張藩領内・木曽上松宿の入り口で、尾張藩陣屋名で「尾張中納言様御達しにより松平左兵衛督様御通行を禁ず」と書かれた立て札を目のあたりにする。それにも構わず進むと、尾張藩士・牧野靭負(まきの ゆきえ)が立ちふさがる。牧野はかつて斉韶一行に本陣を提供した際、斉韶の気まぐれで息子を斬殺され、その妻も犯された末に自害していたため、恨みを晴らすために新左衛門に協力を申し出ていたのだった。落合宿に罠があるとにらんでいた鬼頭は、そこを避けるためにも伊那谷を経由する脇往還を行くことを進言するが、短気な斉韶はそのまま中山道を進むよう命じる。牧野の行為は刺客側の意向を汲んでのことであったが、彼はのちに責任を一身に負う形で切腹した。 斉韶一行は何度も道を変えた末、落合宿に向かわざるを得なくなる。その間13人は、多勢に無勢の不利をカバーするために、宿場のあらゆる場所にさまざまな仕掛けを設けて要塞化し、街路のところどころをふさいで迷路のようにしていた。11月のある日の早朝、ついに斉韶たちと13人は対峙。壮絶な死闘の末、新左衛門は斉韶を倒し、鬼頭と向かい合う。そこで新左衛門は刀を下げ、鬼頭に斬られるがままにした。新左衛門は「これでよい。わしは殿を斬らねば侍の一分が立たぬ。お主もわしを斬らねば侍の一分が立たぬだろう」とつぶやき、息絶えた。鬼頭も刺客の日置八十吉に倒された。
あらすじ
登場人物
刺客
島田新左衛門 - 目付・直参旗本。妻を早くに亡くしている。
島田新六郎 - 新左衛門の甥。公職につけず、芸者・おえんのヒモとなって暮らしていた。三橋と日置の誘いを一度断るが、新左衛門の「放蕩三昧で生きるより侍として死ぬほうが楽だ」との言葉で翻意する。最後まで生き残る。
倉永左平太 - 徒目付組頭。作戦の立案を担当。最後まで生き残る。
三橋軍次郎 - 小人目付組頭。日置とともに新六郎に協力を仰ぐ。
樋口源内 - 三橋配下の小人目付。
堀井弥八 - 三橋配下の小人目付。
日置八十吉 - 倉永配下の徒目付。三橋とともに新六郎に協力を仰ぐ。鬼頭を倒す。
大竹茂助 - 倉永配下の徒目付。
石塚利平 - 倉永配下。
平山九十郎 - 浪人。新左衛門邸の食客。斉韶討伐後、浅川十太夫に斬殺される。
佐原平蔵 - 浪人。九十郎に誘われ、新左衛門たちに協力を申し出る。
小倉庄次郎 - 九十郎の剣術の弟子。新左衛門たちに協力を申し出る。
木賀小弥太 - 木曽落合宿の郷士。新左衛門たちに協力を申し出る。
明石藩
松平左兵衛督斉韶 - 明石藩主。
鬼頭半兵衛 - 明石藩江戸藩邸詰。斉韶の残忍さに嫌気が差すも、立場上斉韶を守り続ける。
浅川十太夫 - 明石藩江戸藩邸詰。同僚を殺した平山を仇と狙い、倒す。一行の中で唯一生き残る。
丹羽隼人 - 明石藩江戸藩邸詰。参勤交代には同行しない。
小泉頼母 - 明石藩江戸藩邸詰。参勤交代には同行しない。
出口源四郎 - 明石藩江戸藩邸詰。土井大炊頭邸に出入りした人物を調査し、暗殺計画を察知して新左衛門邸へ近づくが、平山に倒される。
仙田角馬 - 明石藩江戸藩邸詰。出口とともに新左衛門邸へ近づくが、平山に倒される。
間宮図書 - 明石藩江戸家老。直訴のため、土井大炊頭の自邸前で切腹。
間宮織部 - 図書の息子。図書の「乱心」の責任を問われ斉韶に斬殺される。
間宮小浪 - 織部の妻。織部とともに斉韶に斬殺される。
幕府
土井大炊頭利位 - 筆頭老中。新左衛門に斉韶暗殺を命じる。
尾張藩
牧野靭負 - 尾張藩領木曽上松陣屋詰。新左衛門たちに協力を申し出る。
牧野妥女 - 靭負の息子。陣屋内で斉韶が千世を手込めにしているところを見とがめ、逆上した斉韶に殺害される。
牧野千世 - 妥女の妻。陣屋を手伝っている際に斉韶に襲われ、それを恥じて自害。
その他
おえん - 柳橋の芸者。新六郎と同居している。
三州屋徳兵衛 - 落合宿総代。いち早く到着した新六郎から計画を聞き、協力を申し出る。
加代 - 徳兵衛の娘。
出演者
島田新左衛門 - 片岡千恵蔵
島田新六郎 - 里見浩太郎
鬼頭半兵衛 - 内田良平
土井大炊頭利位 - 丹波哲郎
芸者おえん - 丘さとみ
牧野千世 - 三島ゆり子
加代 - 藤純子
牧野妥女 - 河原崎長一郎
佐原平蔵 - 水島道太郎
樋口源内 - 加賀邦男
小倉庄次郎 - 沢村精四郎
三橋軍次郎 - 阿部九州男