この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
開設者別に見た日本の医療機関(2019年10月)[1]病院一般診療所歯科診療所計
国3225374863
公的医療機関1,2023,5222614,985
社会保険関係団体514507508
医療法人
医療法人(いりょうほうじん、英: medical corporation)とは、病院、医師や歯科医師が常勤する診療所、介護老人保健施設または介護医療院の開設、所有を目的とする法人である。
根拠規定は医療法第6章(旧第4章)であり、その冒頭の39条において社団と財団の2種類が認められている。社団である医療法人を医療法人社団、財団である医療法人を医療法人財団と呼ぶ。医療法人社団・医療法人財団は公益性に関する一定の要件を満たして認定を受けることで社会医療法人となることができる。医療法人の99%以上が医療法人社団である[2]。銀行振込などで使用する略称は「イ」。医療法人社団、医療法人財団、社会医療法人の区別はされていない。
全国の病院施設数の約69%(5687施設:病院分類中1位)、全国の診療所施設数の 約43%(44219施設:診療所分類中1位)、全国の歯科診療所施設数の 約22%(15161施設:歯科診療所分類中2位。最多は「個人」の52103施設:約77%)が医療法人であり、また、病院全病床数の 55.7%(840,312 床)、有床一般診療所全数の 76.8%(66,065 床)を占めており、数的に医療の根幹を支えている。[3](病院#制度も参照)
概説
医療法第三十九条
病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。
第四十条
医療法人でない者は、その名称中に、医療法人という文字を用いてはならない。
第四十条の二
医療法人は、自主的にその運営基盤の強化を図るとともに、その提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図り、その地域における医療の重要な担い手としての役割を積極的に果たすよう努めなければならない。
1950年(昭和25年)8月に、前年に行なわれた医療法改正に伴い、医療法人制度が施行。同年10月1日に兵庫県にて第1号の法人(医療法人藤森医療財団。法人格は残存しているがM&A後なので別[4])が認可[5]。2021年に施行後70年を迎えた法人制度である。
なお、一般財団法人や独立行政法人(JCHOなど)、社会福祉法人など医療法人以外の法人格を持つ医療機関もある。そのため、時々、一部報道[6]で他の法人体が運営する医療機関を「『医療法人』が運営する医療機関」として表記している場合がある。しかし、医療法第40条上でも「医療を行っている法人組織=医療法人」ではなく、その文字・標記を用いてはならない。あくまでも独立行政法人や社会福祉法人などが運営する医療機関はそれぞれの法人体が運営する医療機関であり、混同してはならない。
医療法人制度創設の趣旨は、「私人による病院経営の経済的困難を、医療事業の経営主体に対し、法人格取得の途を拓き、資金集積の方途を容易に講ぜしめること等により、緩和せんとするものであること」[7] とあり、病院等の開設主体に法人格を取得することができるようにすることで経営・運営上の困難を解消することを目的としたものである。
日本全国では約58,000の医療法人があり(2023年3月末)、持分の定めのある社団がそのうち約70%を占め、持分の定めのない社団は約30%存在している。一方で財団医療法人は総数の1%未満である。また、常勤医師を一人又は二人しか持たない「一人医師医療法人」は47,924で、医療法人全体の約80%に達している[8]。
医療法人の設立には主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可が必要とされる(医療法第44条)。都道府県知事は認可判断にあたっては、都道府県医療審議会の意見を聞かなければならない(医療法第45条第2項)。医療法人は都道府県知事の認可後、設立の登記をすることで成立する(医療法第46条第1項)。医療法人の登記は、組合等登記令が適用され、登記所において行われる。
平成26年度末までは、2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人については、広域医療法人(厚生労働大臣所管の医療法人)と呼ばれ、認可権限が厚生労働大臣にあった(旧医療法第68条の2)。認可判断にあたっては社会保障審議会の意見を聞かなければならなかった(旧医療法第68条の2)。また、他県の事業者と合併した場合にも広域医療法人への移行が必要であった。しかし、広域医療法人制度は平成27年4月1日から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号)により廃止されたので、2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人は主たる事務所の都道府県知事が所管している。 医療法人の総数(2023年3月31日現在)[8]財団社団計
種類
総数36256,64358,005
うち、特定医療法人49279328
うち、社会医療法人37315352
法人の一般的種類による分類
医療法人社団2007年4月1日以降の医療法人 社団の類型は以下の通りとなる。
持分の定めのない医療法人
持分の定めのない法人
基金拠出型法人(持分の定めのない社団医療法人がその資金調達手段として基金を選択したもの。)
社会医療法人(都道府県が認定。2008年4月1日より)
特定医療法人(国税庁が認定)
持分の定めのある医療法人
持分の定めのある法人
出資額限度法人(※出資額限度法人は、社員の退社及び残余財産の分配にあたりその出資額を払戻額を限度としたものであって、持分がないわけではない。)
医療法人財団
医療法人財団
社会医療法人(2008年4月1日より)
特定医療法人
法律により認定や承認された法人の分類
社会医療法人
特定医療法人
特別医療法人(平成24年3月末に制度廃止)
行政機関の所管による分類
広域医療法人(厚生労働大臣所管法人)〔平成27年4月1日施行法により廃止。平成27年4月1日以降は、すべて都道府県知事所管法人〕
2つ以上の都道府県において病院等を開設する医療法人。認可権限は厚生労働大臣にある。
都道府県知事所管法人
医療法人の主たる事務所の所在地の都道府県知事に認可権限がある。
実態に着目した法人の通称
一人医師医療法人(※通称であり明確な種類ではない)
医療法人に関係するその他の法人制度
地域医療連携推進法人制度(医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢。これにより、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保する事を目指す制度。ホールディングカンパニー(持株会社)制度のようなもの)
参考:医療法人社(財)団と一般社(財)団法人
「医療法人社(財)団○○会」(医療法人社団・医療法人財団)は、医療法の医療法人定義のなかの「社(財)団」というカテゴリーに該当する。一方、「一般社(財)団法人○○会」は、「公益法人」(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律により設立された「一般 社団・財団法人」、「公益社(財)団法人○○会」は公益法人認定法により公益性の認定を受けた「公益 社団・財団法人」)である。