医療倫理
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米国医師会(AMA)「医療倫理規定」

医療倫理(いりょうりんり、: medical ethics[1][2])または医療倫理学[1][2]、医学倫理[3]、医の倫理とは[4]医療者が守るべき行動の(体系的な)規範基準[4]。医療倫理は生命倫理学(bioethics)[1]、臨床倫理(clinical ethics)とも呼ばれ得るが[5]、厳密にはそれらと区別される[1]。「医療倫理が関わっているのは、医師および病院患者・他の医療専門家・社会に対して負う義務である」とされている[6]

一種の職業倫理であり学問でもある。起源は古代ギリシア[7][8]、すなわち「医学の父」ヒポクラテス[7]および『ヒポクラテスの誓い』と考えられている[8]
概要

医療倫理は、混乱や矛盾が生じた場合に専門家が参照できる一連の価値観から成り立つ。これらの価値観には、自主尊重原則自己決定権[注釈 1](autonomy)、無加害原則[注釈 2](non-maleficence)、 与益原則[注釈 3](beneficence)、および公平・正義の原則[注釈 4](justice/equality)などが含まれ[9]、この4原則に限って言う場合、一般に「生命医学倫理の4原則」と呼ばれる。これらの信条があってはじめて、医師、ケア提供者、および患者家族が治療計画を作成し、同じ共通の目標に向かって共に取り組むことが可能となるのである[10]。付け加えるべき重要なこととして、これら4つの価値観は、重要性または関連性の順でランク付けされることはなく、すべて等しく医療倫理に包含されている[11]ということである。しかしながら、倫理的衝突により、階層化の必要性が必要となる矛盾(ジレンマ)が生じる可能性があり、その結果、いくつかの道徳的要素はその困難な医学的状況において最良の道徳的判断を適用する上で他のいくつかの原則を覆すものとなる場合もある[12]

これらの倫理行動規範の基となるものは既に複数存在している。ヒポクラテスの誓いは医療専門家のための、ナイチンゲール誓詞は看護師のための、それぞれ基本原則を扱っている[12]。前者の文書は西暦前5世紀にさかのぼる[13]ヘルシンキ宣言(1964年)とニュルンベルク綱領(1947年)は医療倫理に貢献し、広く知られていると定評がある。医療倫理の歴史における他の重要で特記すべきものは、1973年の妊娠中絶にかかる権利を争った「ロー対ウェイド(「Roe v. Wade」)」アメリカ合衆国最高裁判決、ならびに1960年代における血液透析の開発である。さらに近年では、ゲノム編集を利用して疾患を治療、予防および治療することを目的としたゲノム編集のための新しい技術は、医学および治療におけるそれらの応用ならびに将来の世代に対する社会的影響について重要な道徳的問題を提起している[14]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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