医業
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医業(いぎょう)とは、業として、医行為医療行為)を行うことをいう。

日本では、医業について医師法第17条に「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定されており、医師(医師免許を持つ者)以外が行なうことを禁止している。これに対して、歯科医師法第17条に「歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない。 」と規定されている歯科医業があるが、医業と歯科医業が重複することもある。(重複している部分は、医師、歯科医師ともに医療行為を行ってもよい。)

ここでいう「医療行為」の意味については、内容が多岐に渡るのみならず医学の進歩に伴い内容が変化するものでもあるため、定義自体に混乱・争いがある。また、医療行為の侵襲性についての解釈にも見解の対立がある。

なお体温測定、血圧測定、パルスオキシメーターによる動脈血酸素飽和度の測定、軽微な切り傷や擦り傷の処置、服薬介助などが医療行為に該当しないことについては、2005年の医政局長通知[1] で提示されている。「医療行為」および「医行為」も参照
定義

厚生省の厚生科学研究報告書(1989年度)は、医師法第17条「医師でなければ医業をなしてはならない」(業務独占)における「医業」について、「医行為を業として行うこと」と説明している[2]。「医行為」は医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為と解され[3]、「業」は反復継続の意志を持って不特定の者または多数の者に行う行為と解される[2]

2012年、厚生労働省のワーキンググループにおいて厚生労働省担当者は「法令上には『医行為』という言葉は出てこないのですが、判例及び通説によって『医師の医学的判断をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為』として一般的に解釈されています。この医行為を反復継続して業として行えるのは医師のみということで、医師の独占業務になっています。参考に、医師法第17条でそれが書かれております」と説明している[4][5]

上述の「医行為」は「狭義の医行為[注 1]」を意味している[6][7]
医行為に含まれない行為

2007年、国立国会図書館調査及び立法考査局の『レファレンス』は、資格法が存在する「あん摩」「マッサージ」「指圧」「はり」「きゅう」「柔道整復」について、「医業類似行為は、その業務独占違反の罰則が他と比較して軽いことから推測されるように人体への危害を及ぼすおそれが相対的に小さく、一般的には医行為には含まれないと理解されている…。…医業類似行為が医行為に含まれないならば、医師が医業類似行為を業として行えることは当然とはいえず、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第1条や柔道整復師法第15条のような明文の規定があって初めて医師がこれを業としてなしうることとなる」と説明している[8]

2008年、東京地方裁判所は、「柔道整復」は医行為に該当するため、これを業として行うことは「医業」に該当する、という原告柔道整復師)の主張を退けた[9]。同裁判所は、資格法が存在する「あん摩」「マッサージ」「指圧」「はり」「きゅう」「柔道整復」について、医行為ではなく、医業類似行為だと説明している[9]

2009年、東京高等裁判所は、「柔道整復」の一部である保険対象施術は医行為に該当するため、これを業として行うことは「医業」に該当する、という控訴人(柔道整復師)の主張を退けた[10]。同裁判所は「柔道整復…の施術は、一般的に医行為と比べて危険度の低い行為であるし、医師ではなく柔道整復師が施術をすることから、その業務の範囲や施術法について制限がある(柔道整復師は外科手術、薬品の投与等ができないし、医師の同意がなければ原則として脱臼又は骨折の患部に施術をすることができない(柔道整復師法16条、17条)。)のであるから、一般的に柔道整復が医行為に当たるということはできない。また、仮に、柔道整復の一部に…医行為に重複するものがあり得るとしても、柔道整復師の資格・技能は、医師の資格・技能とは異なるから、…施術の限られた一部が重複することから、直ちに柔道整復が…医行為と一般的に同質のものであるということはできない。」と説明している[10]
医師の指示下で行う医行為

日本の看護師は、保健師助産師看護師法(保助看法)で定められた「療養上の世話」「診療の補助」を業として行う者である[11][12]。看護師が医師の指示下で行う医行為(医療行為)は「診療の補助」として行われる[4][5][13][14]。看護師の業の範囲を超える医行為(医療行為)は、医師の指示があったとしてもできない[13]

2012年、厚生労働省のワーキンググループにおいて厚生労働省担当者は「看護師以外の医療関係職種が医行為を実施できる根拠は、それぞれの資格法の中で保助看法の規定にかかわらず診療の補助として何々を行うことができるという旨の規定で、その部分が他職種もできるようになっております」と説明している[4][5][15]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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