区域麻酔
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麻酔 > 区域麻酔神経ブロック用の穿刺針(下、保護シース内)。神経刺激装置に接続され、神経の位置を確認できる。

区域麻酔(くいきますい、: regional anesthesia)とは、意識に影響を与えることなく、身体の特定の部位の痛みを取り除く(局所の疼痛緩和)ことを目的とした一連の麻酔法の総称である。広義の局所麻酔を意味する麻酔科学の専門用語である。これらの麻酔法は、麻酔薬(主に局所麻酔薬)を標的へ投与することで、神経の機能を一時的かつ可逆的に抑制し、それによって無感覚になり、患者は痛みから解放される。このような 「部分麻酔」は、1回の注射、あるいは痛み止めのカテーテルを留置することによって行われ、手術後も効果的な痛み止め治療を継続することができる。区域麻酔と全身麻酔の組み合わせは、併用麻酔(英: Combination anesthesia)(ドイツ語版)と呼ばれる[1][2]
分類麻酔法の分類

区域麻酔は以下の3種に大別される。
組織そのものに注射するもの

患部四肢の静脈に注射するもの

患部の感覚を脳に伝達する神経幹の周りに注射するもの

1は浸潤麻酔ないしは表面麻酔であり、狭義の局所麻酔に分類される。2は静脈内区域麻酔であり、これは局所麻酔薬を腕(または脚)の駆血後の静脈に注射し、そこから神経線維や神経終末に拡散させることで、当該四肢の麻酔を可能にするものである[3]。3は広義の神経ブロック(: nerve block)と呼ばれ、さらに末梢神経ブロック(peripheral nerve block、狭義の神経ブロック)と脊髄幹ブロック(neuraxial block、脊髄くも膜下麻酔硬膜外麻酔などの脊髄に近い局所麻酔)に分けられる[4]局所麻酔: local anesthesia)は広義には区域麻酔と同義であり、狭義には浸潤麻酔表面麻酔を意味するが、厳密に区別して記載されていないことも多い。
浸潤麻酔「局所麻酔」および「表面麻酔」も参照

浸潤麻酔(又は局所浸潤麻酔)では、局所麻酔薬を麻酔対象部位の組織に浸潤させる。毒性を軽減し(吸収を遅らせる)、作用時間を延長するために、局所麻酔薬に血管収縮剤(アドレナリンノルアドレナリン)を少量添加したものを使用することもある。浸潤麻酔は、歯科(ドイツ語版)では、伝達麻酔の適応ではないすべての処置に頻繁に行われる。静脈内区域麻酔。上腕をターニケットで駆血してから局所麻酔薬静脈内注射している。
静脈内区域麻酔詳細は「静脈内区域麻酔」を参照

静脈内局所麻酔(又はBierブロック)では、局所麻酔薬は神経近辺ではなく、あらかじめ駆血した四肢(通常は腕)の静脈に注入する。そこから活性物質が敏感な神経終末や神経に拡散する。
神経ブロック陰茎背神経ブロック詳細は「神経ブロック」および「腕神経叢ブロック」を参照

神経ブロック(又は末梢神経ブロック)とは、身体の特定の部位を支配している個々の神経または神経叢(ドイツ語版)を標的として遮断する方法である。これらの部位は、解剖学的ランドマーク(英語版)、神経刺激装置、または超音波ガイド下[5]で位置決めされ、専用の注射針を通して局所麻酔薬を注入することで麻酔される。近年、標準となっている超音波ガイド下手技は、ブロックの失敗率を減らし、作用時間を延長し、血管を傷つけるリスクを減らすことができる[6]。腕(上肢)に対する一般的な手技は、腕神経叢ブロック[7](鎖骨上ブロック(ドイツ語版)(クーレンカンプ法)[8][9]、斜角筋間ブロック(ドイツ語版)、鎖骨下ブロック(ドイツ語版)、腋窩ブロック)、および腕や指の個々の神経のブロック(指神経ブロック(Oberstブロック)(ドイツ語版))である。下肢では、個々の神経のブロックに加えて、腰神経叢のブロック(大腰筋筋溝ブロック、大腿神経ブロック(ドイツ語版)、閉鎖神経ブロック(ドイツ語版))および仙骨神経叢のブロック(坐骨神経ブロック)が行われる。眼科では、球周囲麻酔や球後麻酔(英語版)が一般的で、特に眼内の処置(ドイツ語版)に用いられることが多く[10]眼輪筋の一時的麻痺のためにいわゆる顔面神経ブロックと併用されることもある[11]。神経ブロックは歯科でも頻繁に行われ、主に下顎神経を遮断するが、その他の末梢神経も遮断する。超音波ガイド下大腿神経ブロック

神経や神経束に効果的に麻酔をかけるには、麻酔薬が神経の周囲に行き渡るように、針の先端をできるだけ神経に近づけて注射する必要がある。命にかかわる中毒(局所麻酔薬中毒)や気胸などの合併症を避けるため、針の先端が血管に入ってはならないし、などの臓器を傷つけてもならない。一方、神経への注射とそれによる神経損傷を避けるため、針は神経に近づけすぎてもならない。ドイツ麻酔科学・集中治療医学会(Deutschen Gesellschaft fur Anasthesie und Intensivmedizin: DGAI)(ドイツ語版)のガイドラインによれば、超音波または神経刺激、あるいはその両方を同時に用いて神経の位置を特定することができる。


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