北磁極(ほくじきょく、英: North Magnetic Pole)とは、天体の北半球の地表面で、磁力線の方向が鉛直になっている地点である。磁北極(じほっきょく)ともいう。以下、特に断らない限り、地球の北磁極について述べる。 2001年に行われたカナダ地質調査部
概要
歴史オラウス・マグヌス(Olaus Magnus)によるカルタ・マリナ(1539年)の一部。現在のムルマンスク沖に「Insula Magnetu[m]」(ラテン語で「磁石の島」の意味)と信じられてきた磁極の位置が描かれている。ルーン文字の書かれた準尺を手にする男は、スカンディナヴィア人の英雄スタールカーズ。
昔のヨーロッパの船乗りは、コンパスの針はどこか北の遥か彼方にあるmagnetic mountain(磁力の山)またはmagnetic island(磁力の島)を指すと信じていた[1][2]。イギリスのウィリアム・ギルバートは、1600年に出した著書で、地球は巨大な磁石であるという考えを世界で初めて示した。また、彼は北磁極を「磁力線の方向が鉛直になっている地点」と定義した最初の人物である。この定義は、地球の磁場の性質が正しく理解されるよりも数百年前のものだが、現在使われている定義である[1]。
1831年6月1日、北磁極を目指す最初の探検はジェイムズ・クラーク・ロス率いる探検隊によるもので、彼らは、ブーシア半島 のアデレード岬を北磁極とした。1903年、ロアール・アムンセンは少し違うところを北磁極とした。その後は、カナダ地質調査部が2001年までに6回北磁極の位置を測量している[3]。
2007年5月2日[4]、BBCのテレビ番組「Top Gear」の特番「Top Gear Polar Special」(北極スペシャル。7月25日放送)の企画で、番組の司会者であるジェレミー・クラークソンとジェームズ・メイが史上初めて市販車(トヨタ・ハイラックス改造車)による北磁極への到達に成功した。
北磁極の移動桃色の丸は1831年から2001年までの北磁極の実際の移動。青色の丸は1600年から2000年までの移動を模している。
カナダ地質調査部によると、北磁極は継続的に北西へ動いている。1996年の調査で、磁気計とセオドライトを用いて測定された位置は北緯78度35.7分 西経104度11.9分 / 北緯78.5950度 西経104.1983度 / 78.5950; -104.1983 (Magnetic North Pole 1996)[5]。2005年時点、北磁極はカナダのエルズミーア島の西方、北緯82度42分 西経114度24分 / 北緯82.7度 西経114.4度 / 82.7; -114.4 (Magnetic North Pole 2005 est)にあると予想されている[6]。北磁極は20世紀中に 1100 km移動した。その動きは加速しており、1970年には年間 9 kmだったのに対し、2001年から2003年までの平均速度は年間 41 kmであった(en:Polar driftも参照)。