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北斗神拳(ほくとしんけん)は、武論尊原作、原哲夫画の漫画『北斗の拳』『蒼天の拳』に登場する架空の拳法。作中では「中国拳法」の一種といわれる。 一子相伝の暗殺拳であり、2000年間他門に敗れたことはないとされ、戦いの中で奥義を見出し、常に進化を続ける点から「地上最強の拳」、「闘神の化身(インドラ・リバース)」と呼ばれている。北斗神拳の真髄は極限の怒りと哀しみであるといわれ、哀しみを背負う者のみが究極奥義を極められる。「北斗宗家の拳」の発展形。 その極意は独特の呼吸法により、潜在能力を100%引き出し、その全エネルギー(闘気)で敵の経絡秘孔を指や拳や足により直接的に、または間接的に遠距離から放ち突くことである。経絡とは実際の東洋医学においては血の流れ、神経の流れとされ、北斗神拳においては秘孔がその要である。経絡秘孔は全身に708あり、柔らかく押せば体内の治癒力を活発化させるが、深く突けば血の流れを異常促進させ細胞を破壊する。つまり、北斗神拳の極意は身体を外部からではなく、むしろ内部から破壊することにある。直接的な破壊、拳の物理的な力を重視する南斗聖拳に対し、気の流れを重視している。ただし、人体の潜在能力(=怪力)を100パーセント引き出し、闘気も駆使する北斗神拳は物理的破壊力も絶大であり、中には北斗剛掌波や岩山両斬波、北斗鋼裂把のように外部からの破壊を前提とした技もある。なお、南斗聖拳も北斗の伝承者争いに敗れた者が南斗へ合流していったため[1]、ある程度の経絡秘孔に関する知識が伝承されており、レイも南斗虎破龍を使った際にケンシロウの秘孔を突いていた。なお、この呼吸法を用いれば長期にわたって食事を取らなくても肉体的な衰えがほとんどない。 北斗神拳では「人体の構造」や「気の流れ」を徹底的に研究しており、使い方を工夫すれば医学的な応用も可能で、トキは核戦争前、自らが伝承者になった場合、「北斗神拳を拳法としてではなく医学として使おうと思う」とケンシロウに語っており、北斗神拳伝承者にはならなかったものの実際に治療活動をしている他、ケンシロウも何度か秘孔を利用しての治療を行っている。 なお、北斗神拳で伝えられる秘孔は必ずしも人体にあるすべての秘孔を網羅したものではなく、ラオウやアミバにより未知の秘孔も研究されている。 北斗神拳の究極の到達点は「愛」であり、北斗琉拳のそれが「悪」であるのと対照的である。なお、北斗神拳伝承者には同じ北斗宗家の血を引く北斗琉拳の一族に対し「愛を説く」ことを初代創始者シュケンより代々伝えられている。 この拳法の成立はおよそ2000年前[注 1]、後漢の時代に遡る。まだ小勢力であった西方の浮屠教徒(仏教徒)たちが、群雄割拠する乱世にあって、その教えを守り生き抜くためにあみだした秘拳であった。創始者は北斗宗家のシュケン。発祥地は洛陽の白馬寺。 白馬寺は北斗宗家の本部であり、中国に最初に仏教の教典がもたらされ、最も早く仏教を伝えた寺院である。北斗宗家は次世代の権力者を守護することで、仏教の庇護を得ようと考え、中国各地の仏教徒たちがこの地に会し、次世代の「天下の英雄」を誰とし、そしていかに護るかを真剣に模索していた。 その「護る」という過程の中で、北斗宗家はあらゆる研究を重ね、一つの暗殺拳を完成させた。これが「北斗宗家の拳」であり、この拳の完成をもって仏教は、時の権力者の庇護の元、中国に流布していった。この拳法は、時代の英雄を護るために進化を重ね、最強かつ無敵であり続けた。しかし皮肉にもその進化は、完璧な受け技までも完成させてしまい、同門同士の間ではもはや無敵ではなくなってしまった。 北斗宗家は新たな最強拳の創始のため、あらゆる手だてを考えたが、解決には一人の男児の誕生を待たねばならなかった。その男児こそシュケンその人で、生まれて間もなく「哀しみ」を背負う宿命を帯びた人物であった(参照:「オウカとシュメの物語」)。こうして人を得た北斗宗家は、ある拳法に目をつける。それは長い歴史の中で常勝し続けてきた「狼の血」を持った拳、「西斗月拳」であった。 「西斗月拳」は月氏の拳法で「点穴の術」を極意とし、戦場で複数の経絡秘孔を突くことで、敵に致命の傷を与えることを肝要としている。シュケンは「西斗月拳」の門弟になることで秘孔の術を学んだが、白馬寺に帰る際、北斗宗家の高僧の命の通り、「西斗月拳」の高弟たちを皆殺しにする、悲劇の宿命を背負わなければならなかった。こうしてシュケンは「北斗宗家の拳」をベースにし、「西斗月拳」の経絡秘孔の技を取り込んで、地上最強の暗殺拳「北斗神拳」を完成させ、「狼の血」も「西斗月拳」から受け継いだ。そして「北斗神拳」は英雄の盾となる拳として歴史の裏舞台に君臨することとなる。 シュケンによって完成された「北斗神拳」は一子相伝の暗殺拳として伝えられることになったが、歴史はほどなく三国時代を迎え、北斗宗家は白馬寺の会合で3人の英雄にそれぞれ「北斗神拳」の伝承者候補を付けることとした。こうして生まれたのが蜀の「劉家(北斗劉家拳)」、魏の「曹家(北斗曹家拳)」、呉の「孫家(北斗孫家拳)」である。この時代「劉家」から伝承者が生まれ、他の二家もサポートに廻り、「劉家」に跡継ぎがでなかった場合は、他の二家から伝承者を出すというシステムが構築された。 こうして天下は巡り、「北斗神拳」は伝承されていったが、ある時代「劉家」の伝承者が、とある日本の英雄とともに日本に渡り[注 2]、「北斗神拳」の正統な嫡流は日本で伝承されることとなった。しかし、中国に残された「劉家」も拳法が伝承されていき「北斗琉拳(北斗劉家拳)」と呼ばれる拳法に発展していく。 日本の「北斗神拳」は「本家」に当たり、中国の「北斗琉拳(北斗劉家拳)」はいわゆる「元祖」に当たる。このような構図は、日本の「本家」に伝承者なき場合は、中国の「元祖」から伝承者を輩出する関係を生む。 『蒼天の拳』では、日本の「北斗神拳」の伝承者と中国の「北斗劉家拳」の伝承者と闘って、その勝者こそが正統な「北斗神拳伝承者」として認められる儀式「天授の儀」が登場する。この「天授の儀」で、歴代の「北斗神拳」の伝承者は常に勝ち続け、逆に「北斗劉家拳」の伝承者は敗北を重ねることになる。 あまりに凄絶なその秘拳は太平の世には「死神の拳法」書籍によっては「究極の暗殺拳」として忌避され、20世紀にはただ伝説として語られるのみであった。 修羅の国に渡ったケンシロウが、ボロを装っていたシャチから「アンタも北斗一派の拳を使う者か」と言われた際に「北斗に派は無い。北斗を冠しているのは北斗神拳のみ」と返答しており、当初は北斗琉拳の存在すら把握していなかったため、ケンシロウには上記の「天授の儀」などの伝承が伝わっていなかった。 北斗神拳はその凄絶な力と創始者の悲話ゆえに一子相伝とされており、伝承者だけが次代に北斗神拳を伝えることができる。また伝承者以外は他流との闘いで奥義を封じねばならず、次代に北斗神拳を伝えてはならない。 伝承者候補になった場合は、奥義を教えられた後に候補者同士で争い「心技体」や人間性に優れたものが伝承者に選ばれる。伝承者の決定は先代伝承者が決定するか、候補者が1人を残して全員辞退することで決定される。なお、伝承者争いに敗れた(辞退した)者は、「自ら拳を封じて隠居する」か、「伝承者によって拳を破壊、もしくは記憶を奪われて拳を封じられる」のが掟である。しかし実際のところは暗黙の内に掟が緩くなっており、伝承者になれなくても北斗神拳の「拳法としての使用」が禁じられるだけであり、トキのように隠居後も北斗神拳の技や知識を医学の一種として活用することまでは禁じられてはいなかった。なお、一子相伝とはいえ、伝承者が他の伝承者候補の拳を封じることはまれであり、リュウケンに伝承者の座を譲り、自ら拳を封じたコウリュウはラオウとの戦いでは独自の北斗神拳を披露した。 このような一面はあるが、伝承者でなければ次代に北斗神拳を伝えてはならないことだけは確実に守られていた[注 3][注 4]。 南斗聖拳との関係では、原作でリュウケンの言い残した「北斗と南斗は表裏一体。争ってはならない」という戒めがある。南斗との戦いを禁じて、それより生じる大きな禍を未然に防ぐ意味合いがあったが、シンは、自己の欲望からこの戒めを無視してケンシロウに挑んだ。ケンシロウもシンとレイとの戦いまでは最初こそ北斗と南斗の争いをためらっていたが、結局は戦っている。物語が進み佳境に入ってくると北斗と南斗の戒めは形骸化し、ラオウ対レイ、ケンシロウ対シュウ、ケンシロウ対サウザーと、北斗VS南斗の構図はもはや当然となり、多くの場合は勝敗もついている(牙一族を欺くため故意に相打ちに見せかけたケンシロウ対レイの場合を除く)。 北斗四兄弟の中で最も伝統と戒律を重んじるトキですら、サウザーの最期を見届けた後「残る(南斗六聖拳最後の)一星とも闘わねばなるまい」と発言し、表裏一体の掟が既に無意味となっていることを認めている[注 5]。さらに『天の覇王 北斗の拳ラオウ外伝』においては、ラオウと、そして対戦した南斗の拳士(ハッカとリロン、ユダ、サウザー、リュウロウ)との間には、最初から「北斗と南斗は表裏一体」の一文は無きに等しく、闘いを繰り広げた。 そのような状況にあっても南斗最後の将たるユリアだけはこの掟を固く守り、北斗との融和を望んでいたことがシュレンの口から語られている。 北斗神拳は一子相伝ということもあり、南斗聖拳のように多数の流派は存在しない。
概要
歴史
ここまでの出典は『公式 北斗の拳VS蒼天の拳 オフィシャルガイドブック』「拳法概論」。
北斗の掟
分派・派生流派
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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