北斎漫画
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、葛飾北斎の画集について説明しています。

矢代静一の戯曲については「北齋漫畫 (戯曲)」をご覧ください。

新藤兼人監督による戯曲の映画化作品については「北斎漫画 (映画)」をご覧ください。

『北斎漫画』(ほくさいまんが)は、葛飾北斎による絵手本である。全十五編。半紙本[注釈 1]。第十二編のみ墨摺だが、それ以外は墨と薄い朱が用いられる。英語圏では「ホクサイ・スケッチ」と呼ばれる[1]
概要

初編の序文によると、1812年(文化9年)秋頃、名古屋在住の門人牧墨僊宅に逗留し、300点余りの下絵を描いた[注釈 2]。1814年(文化11年)に、名古屋の版元永楽屋東四郎から初編が刊行された[3][4]。各地の門人や私淑する者の指南書で絵手本、職人の発想源として企画し、版行されたと考えられている[3]。だが、庶民から武士まで広い層に好評で、江戸時代のベストセラーとなった[5]

当初、一巻完結の予定だったが、好評だったため、版元を変更しながら版行が続き、1878年(明治11年)、第十五編で完結した[注釈 3]

「漫画」とは、初編序にて「事物をとりとめもなく気の向くまま漫(そぞ)ろに描いた画」と北斎自身が述べている[3]

本書の企画は、師である勝川春章の友人であった鍬形寫ヨの『諸職画鑑(しょしょくえかがみ)』(1794年・寛政6年)『略画式』(1795-99年・寛政7-11年)等から着想を得たと言われている[7][8]。『武江年表・寛政年間記事』には、「北斎はとかく人の真似をなす、何でも己が始めたることなしといへり、是れは略画式を寫ヨが著して後、北斎漫画をかき」[9]と記されている。また、林守篤『画筌(がせん)』(1721年・享保6年)や、清朝の画譜『芥子園画伝(かいしえんがでん)』(17世紀)からの影響も指摘されている[7]

一枚摺の浮世絵は安いものと巷間言われるが、半紙本は決して安いものではなかった。北斎研究家の永田生慈が、版元であった名古屋の永楽屋東四郎に値段を尋ねたところ、「当時(幕末から明治初期)の出版物は猛烈に高くて、普通の人が簡単に本を買いましょうという値段ではなかった。」と証言している[10]

シーボルトが1832年にオランダで発刊した『Japonica』に『漫画』が紹介されており、それ以前からオランダには、北斎による、日本人男女の一生を描いた巻子が伝わっている[11]

1856年にブラックモンが、日本からの輸入陶磁器の緩衝材に『漫画』を発見したという「逸話」は、現在では疑問視されている[12][3]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 縦七寸五分、横五寸二分(約22.5×15.5センチメートル)。“古書クラシコ書店 和本の書型”. 2020年3月20日閲覧。
^ 「今秋翁たまたま西遊して我府下に留り月光亭墨杣と一見相得て驩(かん:喜び)はなはたし頃亭中に於て品物三百餘図をうつす(略)文化壬申陽月(陰暦十月) 尾府下」[2]
^ 日本人最初の北斎研究家と言える飯島虚心は、北斎没後に編集・版行された『漫画』十四・十五編は、正規なものと認めていない[6]

出典^ “Transmitting the Spirit, Revealing the Form of Things: Hokusai Sketchbooks, volume 3 (Denshin kaishu: Hokusai manga, sanpen)”. 2020年2月29日閲覧。
^ 永田 2009, pp. 7?8.
^ a b c d 津田 2008, p. 445.
^ 内藤 2017, p. 20.
^ 広島県立美術館「浦上コレクション、北斎漫画-驚異の眼・驚異の筆-」2020.12.10-2021.01.312020年12月10日閲覧
^ 鈴木 1999, pp. 128-129、246-247.
^ a b 内藤 2017, p. 25.
^ 練馬区立石神井公園ふるさと文化館 2020.
^ 朝倉 1912, p. 173.
^ 永田 1990, p. 146.
^ 永田 1990, p. 150.
^ 永田 1990, p. 152.

参考文献
一次史料

斎藤, 月岑『武江年表正編』青藜閣・河内屋喜兵衛ほか書林、1849年 - 1850年。全8冊。 

朝倉, 無聲補『増訂武江年表』國書刊行會、1912年。 


飯島, 虚心『葛飾北齏傳』蓬樞閣、1893年9月。上下巻。 

鈴木, 重三校注『葛飾北斎伝』岩波書店〈岩波文庫〉、1999年8月。 


二次資料

永田, 生慈監修『北斎美術館4 名所絵』集英社、1990年。 

根本進; 永田生慈対談 (1990). 近代漫画のルーツは北斎. pp. 141-148 

永田, 生慈『西欧に影響を与えた北斎作品』1990年、149-154頁。 


津田, 卓子「北斎漫画」『浮世絵大辞典』東京堂出版、2008年、445頁。 

永田, 生慈「北斎旅行考」『研究紀要』第2号、財団法人北斎館 北斎研究所、2009年、4-14頁。 

高杉, 志緒 著「北斎の浮世絵指南・絵手本」、浅野秀剛監修 編『北斎決定版』平凡社別冊太陽174〉、2010年、164-176頁。 

浦上, 満『北斎漫画入門』文藝春秋文春文庫1145〉、2017年10月。 

内藤, 正人「北斎漫画AtoZ」『芸術新潮-特集:画狂モンスター北斎 漫画と肉筆画』68(11)、新潮社、2017年、16-47頁。 

馬渕, 明子監修国立西洋美術館ほか編『北斎とジャポニスム: Hokusaiが西洋に与えた衝撃』読売新聞東京本社、2017年。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:20 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef