勾配磁場コイル(こうばいじばこいる、英語: gradient coil)とは、MRIにおいて重要な勾配磁場を生成するためのコイルである。勾配磁場コイルを用いることで、空間的に線形な磁場(静磁場方向)を生成することが可能になり、これによってMRIから得られる信号に位置情報を付加することができる。グラディエントコイルとも呼ばれる。臨床用MRIでは、しばしば傾斜磁場コイルと呼ばれているが、勾配磁場を作り出すコイルは、臨床用MRIが出現する以前から勾配磁場コイルと呼ばれていたので、本来はこの言葉が正しい物理用語である。核磁気共鳴分光法(NMR)においては、DOSYのような分子の拡散係数を利用したスペクトル分離に勾配磁場が用いられる。
MRI撮像中に一定周期で鳴る高い音は主に勾配磁場コイルがローレンツ力によって振動する音である。
目次
1 勾配磁場コイルの種類
2 代表的な勾配磁場コイル
2.1 マックスウェル・コイル・ペア(maxwell coil pair)
2.2 直線電流
2.3 平行四線型コイル
2.4 Golay型コイル
2.5 その他の勾配磁場コイル
3 参考文献
4 関連記事
勾配磁場コイルは用いられる磁石の形状やRFプローブ
勾配磁場コイルの種類
RFコイル及び勾配磁場コイルはMRIの性能に大きく関わるため、現在でも活発に研究されている。
勾配磁場コイルに要求される主な要素は
線形性
電力効率
立ち上がり時間(時定数)
等である[1]。マックスウェル・ペア・コイル(Z方向の代表的な勾配磁場コイル) 代表的なz軸方向コイルであり、逆方向の電流の二つの円形コイルを重ねることによって作られる。 半径とコイル間の距離は理論的に決まっており、 半径を r {\displaystyle r} としたとき、コイル間距離Lは L = 3 r {\displaystyle L={\sqrt {3}}r} と表すことができる。 このマックスウェル・コイル・ペアは線形性と電力効率が極めて良い。 同様に代表的なxy軸方向のコイルである。 同じ方向の電流を軸対称の位置に置くだけであり、原理は極めて単純である。 例として、コイル間ギャップ L {\displaystyle L} のy軸方向勾配磁場コイルの設計を考える。 y=aの位置にある直線電流が作る磁場 B y ( r ) {\displaystyle B_{y}(r)} は B y ( a ) = I μ 0 2 π a {\displaystyle B_{y}(a)={\frac {I\mu _{0}}{2\pi a}}} で表すことができる。(アンペールの法則を用いれば明らかである。) ここで、磁場が軸対称かつ原点で磁場がゼロになるようにすればよいので、 反対側に同様の直線電流を置けばよいだけであることがわかる。 B y ( a ) + B y ( − a ) = I μ 0 2 π a − I μ 0 2 π a = 0 {\displaystyle B_{y}(a)+B_{y}(-a)={\frac {I\mu _{0}}{2\pi a}}-{\frac {I\mu _{0}}{2\pi a}}=0} となり、条件を満たす。 つまり、この場合は同じ方向に流れる直線電流を y = ± L / 2 {\displaystyle y=\pm L/2} の位置に置けばよいことがわかる。 ただし、数式からもわかるように、2本の直線電流では線形な領域が狭いため、通常このタイプのコイルが使われることはない。
代表的な勾配磁場コイル
マックスウェル・コイル・ペア(maxwell coil pair)
直線電流