動植綵絵
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『動植綵絵』の内「群鶏図」 『動植綵絵』の内「老松白鳳図」 『動植綵絵』の内「南天雄鶏図」 『動植綵絵』の内「群魚図」 『動植綵絵』の内「池辺群虫図」

『動植綵絵』(どうしょく さいえ)は、近世日本画家伊藤若冲の代表作の一つ。江戸時代中期にあたる宝暦7年頃(1757年)から明和3年(1766年)頃にかけての時期に制作された、30幅からなる日本画であり、植物を描いた彩色画。三の丸尚蔵館蔵。
目次

1 概要

2 釈迦三尊像を伴う一堂展観

2.1 京都

2.2 ワシントン

2.3 東京

2.4 パリ


3 作品

3.1 第1期

3.2 第2期

3.3 第3期


4 ギャラリー

5 脚注

6 参考資料

7 関連項目

8 外部リンク

概要

絹本著色(けんぽんちゃくしょく)。鳳凰草花魚介類などが、さまざまな色彩と形態のアラベスクを織り成す、華麗な作品群である。綿密な写生に基づきながら、その画面にはどこか近代のシュルレアリスムにも通じる幻想的な雰囲気が漂う。また、当時の最高品質の画絹や絵具(日本で初めてベロ藍を用いた例である)を惜しみなく使用したため、200年以上たった現在でも保存状態が良く、褪色も少ない[1]。『動植綵絵』は『釈迦三尊図』(絹本着色、三幅対)と共に、両親と弟、そして若冲自身の永代供養を願って相国寺寄進された。『動植綵絵』の名前は、この時若冲自身が書いた寄進状の中で『動植綵絵』と記していることに由来する。若冲は「山川草木悉皆仏性」の思想を、観音経にある「三十三応身」になぞらえて描き出したと考えられる[2]

相国寺では毎年6月17日に厳修される「観音懺法会」の折に、これら33幅を掛けて参拝者に一般公開し、参道は出店が立ち並ぶほど賑わったという。明治22年(1889年)3月『釈迦三尊図』だけは寺に残し、若冲の寄進状と売茶翁の一行書と共に明治天皇に献納された。この時の下賜金1万円のおかげで、相国寺は廃仏毀釈の波で窮乏した時期でも1万8千坪の敷地を維持できた。皇室御物となった『動植綵絵』は、重要な賓客を迎える際の装飾としてその都度使用され、『動植綵絵』の力強い描線と濃彩は明治宮殿の洋風の内装とも好く調和したという[3][4]。また、明治37年(1904年セントルイス万国博覧会では、川島織物が、動植綵絵のうち織物に適した15幅を綴織で再現し、10幅をパネル仕立てにしてはめ込み、天井にも若冲の草花図を元にした染織品をはめた「若冲の間」を出品し、金賞1枚と金牌2個を受賞している[5]

現在は宮内庁が管理しており、2007年に相国寺において120年ぶりに『動植綵絵』全30幅と『釈迦三尊図』が同時公開された[6]2009年には東京国立博物館において東京では93年ぶりに全30幅が同時公開され[7]、さらに若冲生誕300周年を記念して2016年には東京都美術館において東京では初めて『動植綵絵』全30幅と『釈迦三尊図』が同時公開された[8][9]
釈迦三尊像を伴う一堂展観

明治22年(1889年)、「釈迦三尊像」(3幅)は相国寺に残り、「動植綵絵」(全30幅)は上述のように皇室の御物となった。

本来は法要の折に相国寺において堂内を荘厳する(しょうごん、美しく飾る)ためセットとして一堂に掛けられたものだったが、それ以来わかれわかれになっており、現在、「釈迦三尊像」は承天閣美術館、「動植綵絵」は三の丸尚蔵館に所蔵されている。明治22年(1889年)以降、(3+30の)全33幅が一堂に展観されたのは以下の4回だけである。(2018年現在)
京都

2007年5月13日(日)?6月3日(日)(会期中無休) 承天閣美術館

『開基足利義満600年忌記念 若冲展』 120年ぶりに実現した初めての記念すべき一堂展観である。

主催:相国寺、日本経済新聞社

足利義満600年忌を記念して
ワシントン

2012年3月30日(金)?4月29日(日) ワシントン・ナショナル・ギャラリー西館

『伊藤若冲 日本花鳥画展』 海外で初めての一堂展観である。

主催:宮内庁、日本経済新聞社など

日本が3千本の桜をワシントンに寄贈して100周年になったのを記念して
東京

2016年4月22日(金)?5月24日(火) (休室:4月25日、5月9日) 東京都美術館 企画展示室

『生誕300年記念 若冲展』  東京で初めての一堂展観である。

主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、日本経済新聞社、NHK、NKHプロモーション

伊藤若冲生誕300周年記念として
パリ

2018年9月15日(月)?10月14日(日) (月曜休館) パリ市立プティ・パレ美術館1階大フロア(プティ・パレ参照)

『若冲 - <動植綵絵>を中心に』  ワシントンに次ぐ海外展である。

主催:国際交流基金、日本経済新聞社、宮内庁、パリ市立プティ・パレ美術館/パリミュゼ

日仏両政府が連携してパリを中心に開催する日本文化の祭典「ジャポニズム2018」の柱の一つとして日本側が発案した
作品

制作時期の区分は辻惟雄の3期説に基づく。副題は若冲のの師でもある大典顕常の『藤景和画記』に記されたもの。
第1期

宝暦7年(1757年)頃 - 宝暦10年(1760年)頃

01. 芍薬群蝶図 (しゃくやく ぐんちょうず) :副題「艶霞香風」。芍薬の花に達が遊ぶ。

02. 梅花小禽図 (ばいか しょうきんず) :副題「碧波粉英」。宝暦8年(1758年)春。咲き誇るの花に戯れる小鳥達(?)。

03. 雪中鴛鴦図 (せっちゅう えんおうず) :副題「寒渚聚奇」。宝暦9年2月(1759年)。の降り積もる冬の川辺に暮らす鳥達を描く。鴛鴦の番(つがい)に雉鳩、ほか。

04. 秋塘群雀図 (しゅうとう ぐんじゃくず) :副題「野田楽生」。宝暦9年8月(1759年)。の穂が実る秋の野に空に飛び交う無数の達。

05. 向日葵雄鶏図 (ひまわり ゆうけいず) :副題「初陽映発」。宝暦9年8月(1759年)。向日葵に雄鶏。

06. 紫陽花双鶏図 (あじさい そうけいず) :副題「堆雲畳霞」。宝暦9年秋(1759年)。紫陽花に鶏の番。米国カリフォルニア州、エツコ&ジョー・プライス・コレクション (Etsuko and Joe Price Collection) 所蔵の同名作品とは同工異曲[10]

07. 大鶏雌雄図 (たいけい しゆうず) :副題「聯歩祝祝」。宝暦9年(1759年)。堂々たる雄鶏と小さな雌鶏。

08. 梅花皓月図 (ばいか こうげつず) :副題「羅浮寒色」。咲き誇る梅の花と名月。

09. 老松孔雀図 (ろうしょう くじゃくず) :副題「芳時媚景」。松の古木の深い緑に牡丹の花の紅と白、その中で輝くように立つ白い孔雀

10. 芙蓉双鶏図 (ふよう そうけいず) :副題「芳園翔歩」。咲き乱れる芙蓉の花に遊ぶ鶏の番。


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