効用(こうよう、英: utility)とは、経済学の基本的概念であり、各消費者がある財やサービスを消費することによって得ることができる主観的な満足・欲望充足(への貢献)の度合いのこと[1]。所与の選好関係 ≿ i ⊂ S 2 {\displaystyle \succsim _{i}\subset S^{2}} に対して a ≿ i b {\displaystyle a\succsim _{i}b} ならば u ( a ) ≥ u ( b ) {\displaystyle u(a)\geq u(b)} を満たす実数値関数 u : S → R {\displaystyle u:S\rightarrow \mathbb {R} } の値である[2]。
目次
1 労働価値説と効用価値説
2 基数的効用と序数的効用
3 選好関係と効用関数
4 期待効用
5 厚生主義
6 脚注
7 参考文献
労働価値説と効用価値説詳細は「労働価値説」、「限界革命」、および「効用価値説」を参照
古典派経済学およびマルクス経済学は商品の価格が供給側(企業)の労働投入量のみによって決定されるという「労働価値説」(客観価値説)を採用していた。これに対して、限界革命を経て誕生した近代経済学(新古典派経済学)は商品の需要側(家計)の限界効用と供給側(企業)の限界費用の相互関係によって商品の価格が決定されるというアプローチを取った。とりわけカール・メンガーを祖とするオーストリア学派の主張は、「労働価値説」と対比的に「効用価値説」(主観価値説)とも呼ばれる[3][4]。
基数的効用と序数的効用「選好関係」および「尺度水準」も参照
効用を測定する方法としては、基数的効用(Cardinal Utility)と序数的効用(Ordinal Utility)とがある。前者が効用の大きさを実数値として測定可能であるとするのに対して、後者は効用を数値として表すことは出来ないが順序付けは可能であるとする点で異なり、両者の違いは、これは効用の可測性の問題として、効用の概念の発生当初から議論の対象であった。現在では、特定の選好関係を表現する効用関数が無数に存在することが知られており、効用の序数的情報のみが問題とされるようになった[5]。
選好関係と効用関数「選好関係」および「無差別曲線」も参照
現代経済学において効用は、所与の選好関係 ≿ i ⊂ S 2 {\displaystyle \succsim _{i}\subset S^{2}} に対して「 a ≿ i b {\displaystyle a\succsim _{i}b} ならば u ( a ) ≥ u ( b ) {\displaystyle u(a)\geq u(b)} 」を満たす実数値関数 u : S → R {\displaystyle u:S\rightarrow \mathbb {R} } の値とされる[2]。