労災保険
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

労働者災害補償保険(ろうどうしゃさいがいほしょうほけん)とは、労働者災害補償保険法に基づき、業務災害及び通勤災害に遭った労働者(後述の特別加入者を含む)又はその遺族に給付を行う、日本の公的保険制度である。略称は労災保険と呼ばれる。

労働者災害補償保険法については、以下では条数のみ記す。

目的

労働者災害補償保険(略称、労災保険)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする(第1条)。

労災保険は、この目的を達成するため、制度上、労働者災害補償保険の主要事業として行われる、業務災害・通勤災害における保険給付と、独立行政法人労働者健康安全機構(旧・労働福祉事業団→労働者健康福祉機構)等が行う社会復帰促進等事業(旧・労働福祉事業))に基づく各種事業の二本立てとなっている(第2条の2)。

労働災害の定義および要件については、労働災害を参照。

管掌

「労災保険は、政府が、これを管掌する。」と法定されていて(第2条)、厚生労働大臣がその責任者となる。制度全体の管理運営は厚生労働省労働基準局が行い、地方においては適用、保険料の徴収、費用徴収、二次健康診断等給付の事務を都道府県労働局が行い、保険給付(二次健康診断等給付を除く)、特別支給金、労災就学等援護費、休業補償特別援護金の事務は労働基準監督署が行う。

また、厚生労働大臣は、労災保険の施行に関し、関係行政機関又は公私の団体に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができ(都道府県労働局長に委任可。ただし大臣自らその権限を行使することを妨げない)、協力を求められた関係行政機関又は公私の団体はできるだけその求めに応じなければならない(第49条の3)。

労災保険の運営の費用は、事業主が納付する保険料によって賄われる。また、国庫は予算の範囲内において、労災保険事業に要する費用の一部を補助することができる(第32条)。社会復帰促進等事業及び労災保険事業の事務執行に要する費用に充てるべき金額は、保険料収入及び積立金から生ずる収入等の120分の20を超えないものとする(規則第43条)。
適用事業

労災保険は事業所単位で適用される。原則として労働者労働基準法第9条でいう「労働者」[1])を一人でも使用する事業は強制適用事業とされる(第3条1項)。届出の有無は問わない[2]。なお、船員保険の被保険者については船員保険法の適用となっていたが、2010年平成22年)1月1日に失業部門(雇用保険相当)と共に船員保険法から分離され、労災保険法及び雇用保険法にそれぞれ統合されたため、本法の適用事業(「船舶所有者の事業」に分類)である[3]

共同企業体(ジョイントベンチャー)によって行われる建設事業において、その全構成員が各々資金、人員、機械等を拠出して、共同計算により工事を施工する共同施工方式がとられている場合、保険関係は、共同企業体が行う事業の全体を一の事業とし、その代表者を事業主として成立する(昭和41年2月15日基災発8号)。

派遣労働者については、派遣元事業主の事業が適用事業とされる(昭和61年6月30日基発383号)。

出向労働者(在籍型出向)に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行なった契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働の実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して、決定すること。その場合において、出向労働者が、出向先事業の組織に組み入れられ、出向先事業場の他の労働者と同様の立場(ただし、身分関係及び賃金関係を除く。)で、出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事している場合には、たとえ、当該出向労働者が、出向元事業主と出向先事業主とが行なった契約等により、出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合であっても、出向先事業主が、当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として、賃金総額に含め、保険料を納付する旨を申し出た場合には当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし、当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うこと(昭和35年11月2日基発第932号)。つまり、出向元・出向先双方の事業が労働契約関係の存在する限度で適用事業となる。

国の直営事業(現行法下では該当する事業はない)・官公署の事業(国家公務員災害補償法地方公務員災害補償法の適用となる。但し労働基準法別表第一に掲げる事業を除く)、行政執行法人の職員(国家公務員扱い)については、適用除外とされ、労災保険が適用されない(第3条2項)。ただし、地方公共団体の現業部門の非常勤職員、一般の独立行政法人の職員には労災保険の適用がある。

在日公館に関しても外交関係に関するウィーン条約による外交特権の対象とはならず、労災保険が適用される[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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