労務管理
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人事労務管理(じんじろうむかんり、: human resources management, personnel labor management, etc)は、経営管理の領域の一つで、組織(主に企業)が従業員に対して行う管理活動。

「人事管理」、「労務管理」、「人的資源管理」などの類義語があり、論者や文脈により、それぞれ語の指す意味合いが異なる場合もある[注 1]。また、米国の従来のpersonal managementに「労務管理」、human resource management(HRM)に「人材マネジメント」の訳をあてることがある[1]
人事労務管理の体系
人事管理と労務管理

人事労務管理は、労働力の効率的な使用のための「人事管理(personnel management)」と労働者と経営者の利害対立の調整のための「労使関係管理(industrial relations)」の2つに大別される[2]

本項では黒田・関口他『現代の人事労務管理』による区分例[3] を紹介する。これらの管理機能は個別的に働いているわけではなく、それぞれ相互補完的に働いていることに留意されたい。

人事管理

雇用管理
採用、配置、職務分析、人事考課など。良質な労働力の確保や適材適所の配置を目指す。

作業管理
時間研究・動作研究、職務再設計など。

時間管理
労働時間制度(変形労働時間制など)や休業休暇のシステムの構築など。

賃金管理
職能給、出来高給、年俸制、退職金、各種手当など、賃金制度に関する管理。

安全・衛生管理
労働災害ヒューマンエラーによる事故、従業員のモチベーション低下を防止することを目的として、職場の労働環境の改善や、従業員の健康管理を図る。日本においては、労働安全衛生法にて、事業者に衛生管理の実施を義務付けている。

教育訓練
研修、OJT、ジョブ・ローテーション、資格取得勧奨等の自己啓発推進など。労働力の質を向上させる。

労使関係管理

労働組合対策
団体交渉労働協約など。労使協調体制を目指す。

従業員対策
福利厚生、苦情処理制度など。従業員個々人の不満を取り除く。

戦前の日本においてはホワイトカラーを対象とする「人事管理」とブルーカラーを対象とする「労務管理」は別個に扱われていた。戦後はこのような区別がなくなり、論者によって様々な意味で使用されるようになったが、両者を合わせて「人事労務管理」と呼ぶのが一般的になっている[4]
人材マネジメント

人材マネジメントは米国発祥のHuman resource management(HRM)の日本語訳である[1]。米国では1950年代後半から1960年代にかけて従来の労務管理(personal management)にかわって人材マネジメント(Human resource management)への転換が生じ、人を代替可能なコストではなく投資すべき資源と考えられるようになったといわれている[1]

人事測定研究所編『トータル人事システムハンドブック(HRR)』では、人材マネジメントは人事評価、報酬、等級、リソースフロー、人材開発、組織開発の6つの要素で構成されるとしている[5]
米国における人事管理

米国では1900年代から従来の経験則的なその場しのぎの経営ではなく、ノルマの設定などによる作業の標準化管理を行う科学的管理法が導入された[6]。しかし、1920年代から1930年代にかけてホーソン実験によって客観的な職場環境以上に職場での人間関係や目標意識が労働者の作業能率に影響するという仮説が導き出された[7]。そこでソフトバージョンやハードバージョンの人材マネジメントが重視されるようになった[7]
ソフトバージョン

1940年代後半から社員のモチベーションやコミットメントの向上を通じて成果を最大化するネオヒューマンリレーションズの流れが起き、人材マネジメントのソフトバージョンの側面が形成された[7]
ハードバージョン

1970年代からの企業戦略論などの登場により、戦略的に人的資源を活用する視点が必要と考えられるようになり、人材マネジメントのハードバージョンの側面が形成された[7]
日本における人事管理

日本においては、人事労務管理が諸外国と比べて特異な発達を遂げたと考えられてきた。例えばジェイムズ・アベグレンが著書『日本の経営』(1958年)で示した「日本的経営の三種の神器」である終身雇用年功序列企業別労働組合は全て人事労務管理政策のカテゴリーにあることからもわかる。アベグレンが同書を発表した当時は、日本の異質な経営文化に基づくものだとの見解が多かったが、1970年代末から、高生産性をみせる日本企業の特徴として世界に広まった[8]。また、日本では学校において実践的な職業教育を行う例がほとんど無いため、入社後の企業内での教育・訓練等、OJTによる知識・経験の蓄積が重要視され、企業の責任においてなされるべきだと考える企業が多い。[9] 企業内教育が重要視されてきたことも特徴といえるだろう。
戦後の日本における人事管理の変遷

高度経済成長期前後までは単純年功序列が主流であった。だが、日本的経営がもてはやされたころには、経済発展に伴って単純な年功序列は姿を消し、個々の従業員の職務遂行能力で処遇する能力主義と呼ばれる管理手法が取られていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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